キャロルのちょっと怖い昔話 と おっさんがたてたフラグ
この章では、旅の途中で立ち寄った宿での“風呂上がりのひととき”が描かれます。
キャロル家のあたたかい空気と、おっさんの心の声が入り混じる、
いつもの生活の続きのような時間。
そして最後には、キャロルが語る“ちょっと怖い昔話”が、
次の旅の目的地へとつながっていきます。
「ふぅ〜、いいお湯だったわぁ〜。
やっぱり広いお風呂はいいわねぇ〜。
何より、泳いでも誰も何も言わないし」
「もぉ〜、ころねはぁ〜はしゃぎすぎよぉ〜。
泳ぐっていっても犬かきじゃないのぉ〜。
確かに立派な犬かきだったけど(笑)
それよりキャロルちゃん見習いなさいよ。
ずっと最後までおとなしく、いい子にして入ってたじゃないの」
「ほぉ〜、キャロルがおとなしくねぇ〜。
明日あたり大雨でも降るんじゃないかいっ(笑)」
「もう、おかぁさんっ。
わたしだって、もうちゃんとおとなしく入れるんですっ。
いつまでもお風呂のたびにはしゃいだりしないもんっ」
「ほぉほぉ、そうなのかい。
じゃ〜、先週お風呂場ではしゃぎまわってる女の子見かけたんだが、
あの子は私の見まちがいだったようだねぇ〜(笑)」
「いっやぁ〜、やっぱ広い風呂はいいなぁ〜。
何より、身体中のこわばりがいっきに消えるようで楽だな」
「そうだろ、そうだろ。
うちの風呂はなぁ〜、どんな疲れを持って帰ってくるかわかんないからなっ。
そういう疲れを少しでも次の日に残して欲しくなくてな。
それで、あの広い風呂を無理して作ったんだよ」
「そうだったんですねぇ〜。
お湯もやわらかいし、それに熱すぎずちょうどいいお湯でした。
周りは年をとるたびに“熱いお湯がやっぱいい〜”とか言ってますけど、
自分はまだその境地にたどり着けてなくて(笑)」
「あんた、姿見ないと思ってたらどこ行ってたんだい。
まさかとは思うけど、お客さんと一緒に風呂に入ったりしてないわよねぇ〜?」
「そんな訳ないだろぉ〜。
たまたま厨房の方も終わったし、手もあいて脱衣所の片付けに行っただけだよ」
「そうかい、そうかい。うたがって悪かったねぇ〜。
なら風呂上がりに火照った身体には、キンキンに冷えた酒がいいだろうから、
それ飲んで続きの食事の準備しておくれっ」
「かぁ〜、やっぱ話しのわかる女房持つとしあわせだねぇ〜(笑)」
「わため、ころね。静かにここから撤退するぞ。
いったん部屋に戻って身体落ち着かせて、ここに集合だ」
(あぁ〜あ……おやっさん半殺しだな…… いや、半殺しですまないか……
何よりご愁傷さまです…… もし 骨が残ってたら拾わせていただきます……)
「えぇ〜なんで〜ジプシ〜。ここでもいいじゃないのぉ〜。
どこだって大人しくしてれば、お風呂上がりの火照りはとれるでしょぉ〜?」
「そう思うだろぉ〜。でもなぁ〜、このおっさんにだまされたと思って、
部屋の窓ぜんかいにして風を浴びたら気持ちいいぞぉ〜。
今日は天気もいいし、風もてきどに吹いてるし、部屋の方が気持ちいぞぉ〜」
(おやっさん……すいません……力のおよばない自分を許してください……健闘を祈ります……)
「わぁ〜、ジプシ〜のいう通りねぇ〜。
やっぱ2階だからなのかなぁ〜?
風が吹いてて、1階でずっといるより、いったん部屋に戻ってきて正解だったわねぇ〜」
「そうだろっそうだろっ。
実はな──女風呂にもあっただろ、露天風呂。
あそこで、あたり前だけど外だからな、風の向きとか見てたんだよっ。
そしたら今日の風は、部屋に戻って風浴びたほうが気持ちいいだろうと思ってな。
それで“部屋のほうがいいんじゃないか”と思って、戻らないかっていってみたんだよ」
(いつまで修羅場続くんだろうなぁ〜……
ここの宿っていうより、異世界が初めてだし……読めねぇなぁ〜……
先輩・後輩の夫婦の修羅場なら何回も経験してるから時間読めるけど……
さすがにここではなぁ〜……
“友達夫婦の修羅場は時間読めないのか”って……言わせんなよ……
友達いないんだよっ……(´;ω;`)ブワッ)
「う〜ん、ジプシ〜おじちゃん。
どうしたの?何をむずかしい顔してるの?何か困った事あった?」
「あぁ〜、困ったことじゃないんだけどね……って、
なんでキャロルちゃんまでここにいるのっ?えっ、どうしたの?」
「ジプシ〜さん、ちょっとちょっと」
「んっ? どうした?わため、なんかあったか?」
「ころねは多分気づいてないと思うんですけど……
今って下にキャロルちゃんおいてきたらまずいかなと思ったんで、いっしょに連れてきたんですよ」
「そういう事かぁ〜。うん、よくやった、わため。
そうだなっ……ちょっとおさまるまでは、様子見しながら待つしかないな」
「ん〜? 何がおさまるのぉ〜?
お父さんとおかぁさんなら、夕ご飯の頃には終わってるよぉ〜。
いつも、おかぁさんが勝って終わるんだけどねぇ〜」
「へぇ〜、そうなんだねぇ〜……って、キャロルちゃん。どこから聞いてたのかなぁ〜?」
「えぇ〜っとねぇ〜……“ころねは……”ってところ位からかなぁ〜」
「はぁ〜、そうだったんだねぇ〜。結局、全部聞かれてたのかぁ〜(笑)」
「なら、今のキャロルちゃんの話だと、まだまだかかりそうなんだね?
そしたらまた明日から旅に出るんだけど……
次にどこに行ったらいいか、どこかいい場所知らないかい?」
「いい場所かどうかわからないけど……みんながよくいく場所が近くにあるよ。
名前なんて言ったかなぁ〜……」
「たしかねぇ〜?シュラ・メル石塔っていったかなぁ〜?ごめんなさい、よくおぼえていないの」
「ちなみに、そこはどんな場所なのか教えてもらえる?」
「今はね、うちみたいな宿屋だったり、あとはおうちにお風呂あって、いつでも入れるんだけど──
むかしはみんなで“お湯のわいてる場所”に集まってたんだって。
それでね、みんながお風呂入ってるうちに、みんなの服を持ってっちゃう悪い人がいたんだって」
「うっわぁ〜……それはキツそうだなぁ〜。
服がないってことは、誰か知り合いに頼んで新しい服を持ってきてもらうか……
恥ずかしいけど、そのまま帰るしかないってことだよねぇ〜?」
「それでね、そういう“服を持ってかれた人”が、女神様に犯人を捕まえてくださいってお願いした板が
いっぱい見つかった場所が近くにあって……そこに行ってみるといいかもねぇ〜」
「ありがとぉ〜。なら明日はそこによってから、また次にどこに行くか考えてみるよ」
「ただ、行くなら気をつけてね」
「えっ?何で? ただの“昔の女神様にお願いした場所”でしょ?何かあるの?」
「何がってわけじゃないんだけど……やっぱりさっきジプシ〜おじちゃんも言ったじゃない。
服がないと帰りきついって」
「うん、そりゃ服なかったら恥ずかしくてどうしようもないでしょ」
「でねっ──服を持ってかれた人が、持ってった人に
呪いがかかるようにお願いしたこともあったんだって。
その呪いがまだ残ってるんじゃないかっていう噂もあるのよ。だから気をつけてねって言ったの」
「もぉ〜、キャロルちゃんやだなぁ〜。それじゃおじさんが何かやらかすみたいじゃないかぁ〜(笑)
だいじょぶだよ。そこはみんなも行くとこなんでしょ?」
「そうだけどねぇ〜……」
「キャロル、ここにいたのかいっ。夕飯の準備するから手伝っておくれ。
みんなも悪いけど、あとちょっと待ってておくれっ。でき次第、また呼びに来るからね」
───立秋/幾望/先負/一白水星/酉の刻/晴光───
次回 街の空、旅立ちの朝、そしてキャロルの夢 へ続く
今日もおっさんの心の声は絶好調でした。
修羅場の時間読み、異世界の読めなさ、友達いない自虐──
どれも“生活の愚痴”なのに、どこか笑えてしまう。
次は石塔で何が起きるのか、おっさんの心の声が楽しみです。
ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。
どんな誘いになるのか、次の Causerie (物語)をお待ちいただければ幸いです。




