風呂にもたどり着けず、妄想も邪魔されたおっさん ─宿の夕餉とお楽しみの罰ゲーム─
今回は、街で買ったおみやげをキャロルの家族へ届けるところから始まります。
キャロルの素直なよろこび、ころねの鋭いツッコミ、わための天然、そして妄想を邪魔され続けるおっさん。
宿の夕餉の温度、家族の空気、旅の疲れをほどく広いお風呂──
そのすべてが、今日の一話をゆるくあたたかく彩ります。
そして今回のおっさんは、妄想を封じられたまま風呂にもたどり着けず、
生活の呼吸に巻き込まれていくことになります。
語り部は、あなたをそっと物語の入口へ。
どうぞ肩の力を抜いて、今日の Causerie(物語) をお楽しみください。
「いやぁ〜、満足満足。ひっさびさに美味しいものいっぱい食べれたなぁ〜。ありがとうね、
ジプシ〜。( ̄ー ̄)ニヤリ」
「ころねったら……宿へのおみやげや、これから持っていく物を買いに来たのに、
なんで自分がお腹いっぱいになってるのよぉ〜。多分、戻ったらすぐ夕飯の時間だと思うのに」
「だいじょぶだいじょぶ。ちゃんと夕ご飯の入る場所はあけてあるから、問題ないわよ(笑)」
「えっ、ころねさん? もしかしてまだお腹に入るんですか? わためと自分なんて、
見てるだけでお腹いっぱいになったのに……」
「というか、そんなとこでグズグズしてたら夕ご飯逃げちゃうわよっ。さっさと宿に帰りましょう。
ご飯もだけど──何よりキャロルちゃんにおみやげ渡すんでしょ〜? はやくっ、はやくっ」
「きゃっろるちゃ〜ん たっだいまぁ〜。今日もお手伝いえらいねぇ〜。
そんな頑張り屋さんには──はいっ、おみやげぇ〜。
お父さんとお母さんの分もあるよぉ〜。みんなで仲良く食べてね」
「うっわ〜、こんなにぃ〜!
あぁ〜これ、あそこの屋台のやつだぁ〜。
それにこっちは、あそこの屋台のだぁ〜。
ほんと……すっごいしあわせぇ〜」
「そんなによろこんでくれるなら、いっぱい買ってきたかいがあったよ」
「うんっ。だってね──
ここのお店はまずソースが美味しいの。
でねっ、こっちのお店はソースじゃなくて“塩で食べてください”っていうお店なんだけど、
それもさっぱりして美味しいんだぁ〜。
それにこっちのお店は、たっぷりの柑橘の……」
「なんかすいませんねぇ〜、うちの子に。
キャロル、まずはお礼だろ。
いつも言ってるじゃないか──何かしてもらったら“お礼いうんだよ”って」
「はぁ〜い……ごめんなさぁ〜い」
「いやいや、お礼なんていいんですよ。
明日からまた旅に出るのに、どこのお店の味がいいかわかんないんで……
なら、一通り買っちゃえぇ〜って(笑)
少なくて申し訳ないんですけど、おすそわけと思っていただけたら」
「にしてもだよぉ〜、ほんと悪いねぇ〜。
実はね、うちの旦那もわたしも大好きなんだけどね。
家で商売してるだろ?
そうすると中々食べに行かれなくてねぇ〜。
若い時は旦那と二人っきりで、いろいろ食べに行ったもんだよ(笑)」
「いっやぁ〜……いまのお話しだけでお腹いっぱいになりそうですねぇ〜(笑)
今日の夕飯はあんまりお腹に入らないかも(笑)」
「何いってんだいっ。
こんなにおみやげもらっちまって……
全部食べるまでにいたんじゃうから、うちのに言って腕によりかけさせるからね。
夕ご飯は楽しみにしてなっ。気づいたら“足りない”って言わせてやるさ」
「えっ、お父さんも作ってくれるの?
お父さんの作るねぇ〜ソースとか付け合せも、ものすご〜く美味しいから期待しててねぇ〜。
それでねぇ〜キャロルのおすすめの食べ方はぁ〜──
パンもフライにも、両方にた〜っぷりソースを付けて食べるんだぁ〜。
そうするとねぇ〜、気づいたらパンもね、フライも両方なくなってるのぉ〜(笑)」
「それはもの凄く美味しそうだねぇ〜。夕ご飯が楽しみだねぇ〜。
今ほんのちょっと聞いただけなのに、さっき食べたばかりだけど……
まだまだお腹に入りそうな気がしてきたよ(笑)」
「それなら、今日も街なかいろいろ歩いてきたんだろ?
先に汗流してきちまいなっ。風呂もちょうど今わいたと思うから、まずは疲れとっておいで」
「ありがとうございますぅ〜。ではお言葉に甘えて先にお風呂を。
でもここのお風呂いいですよねぇ〜。
足をいくら伸ばしても、ゆったり入れるなんていいですよねぇ〜」
「まぁうちはそれも売りだからねぇ〜。
毎日の旅から旅で疲れたまってるのに、確かに温かいお風呂は疲れは取れるかもしれないけど……
それだけだろ?
ならもうちょっとって思って、うちは広いお風呂場を用意したんだよ」
「確かに。
お風呂なので温かいのは当たり前としても、ほんと気持ちの疲れまで取れますからねぇ〜。
広いお風呂はいいですよねぇ〜」
「ねぇねぇ、おかぁさん。今日のお手伝いは全部終わってるし……
おねぇちゃん達と一緒にお風呂入って来てもいい?」
「キャロル、何いってんだい。お客様とお風呂なんてだめに決まってるじゃないか」
「ころね、どうするぅ〜?キャロルちゃん、あぁ〜言ってるけど」
「別にいいんじゃない?
ひさびさに小さい子と入れるなんて逆に楽しそうじゃないか。
おばぁちゃんのとこでも、みんなのお風呂の面倒たのまれて見てたんだから。
いいんじゃないか?」
「何かすいませんねぇ〜。ほらっキャロル、こういう時はなんていうんだい?」
「ころねおねぇちゃん、わためおねぇちゃん──ありがとう〜」
(キャロルちゃんいいなぁ〜……俺も一緒に入りたいなぁ〜)
「ジプシ〜どうしたの? なんかこっち見て? 何かあった?」
「わためぇ〜ちがうよぉ〜。
ジプシ〜は、わたし達と一緒に入るキャロルちゃんをうらやましがってただけだよぉ〜。
どうだぁ〜ジプシ〜、あってるだろぉ〜?
違うとは言わせないぞぉ〜(笑)」
「ばかっ、急に何言ってんだよ。
そうじゃなくて──オフロ広かっただろ?
思ってた以上にだから今日も貸し切りかなぁ〜とか考えてたんだよ。
きのう入った時、宿にこれだけお客さんいるのに……
たまたまなのかわかんないけど、1人きりでゆったり入れたからな。
今日はどうかな〜って考えてたんだよっ」
(ほんとっ……ころねは勘するどいよなぁ〜。気をつけないといつかバレるな)
「えぇ〜そんな事考えてたんですかぁ〜?
私はジプシ〜と一緒にお風呂入ってもいいかなぁ〜って思ってたのにぃ〜」
「わためそんなこと言ったら、このおっさん変に勘違いするからだめよっ。
女神様も言ってたじゃない。妄想が激しいから気をつけなさいって」
(くっそぉ〜……あの駄女神めぇ〜……よけいな事言いやがってぇ〜……
妄想するくらいいいじゃなぇかぁ〜……誰に迷惑かけるんじゃないんだからよぉ〜……
1人でニヤニヤして何が悪いんだ……友達いなかったんだからよぉ〜……
1人で妄想してもいいだろ〜……(´;ω;`)ブワッ)
「またぁ〜何考えてるのか知らないけど、1人でダメージ受けてるよ。
じぶんをMもるの好きだねぇ〜」
「そうと決まったら、みんな風呂へ入ってきなっ。出てくる頃には全部できてると思うから。
あとは〜風呂上がりの楽しみも用意しとくからねっ。さっさと入ってきなっ」
「ころねぇ〜、お風呂上がりの楽しみってなんだろねぇ〜。
まずはそのお楽しみを期待しながら、お風呂に入ってきますかぁ〜」
「だねぇ〜。わたしはだいたい想像ついてるけどねぇ〜。
ジプシ〜もその顔してるってことは、おおよそ頭ん中は思い浮かんでる顔だねぇ〜。
なら風呂上がりに答え合わせしようじゃないかっ」
「ハズレた方が、明日の移動の時になにか罰ゲームするってことで」
「なんで勝手に決めてんだよぉ〜。でも絶対あれだから、じぶんが絶対勝つ。
明日の罰ゲーム楽しみだな。どんな顔して罰ゲームしてくれるんだろ〜なぁ〜。
明日の罰ゲーム考えたら今日もいい夢見れそうだ」
───立秋/幾望/先負/一白水星/酉の刻/晴光───
次回 キャロルのちょっと怖い昔話 と おっさんがたてたフラグ へ続く
今回のおっさんは、駄女神の余計な一言で妄想を封じられ、
ついに風呂にも入れず投了となりました。
キャロル家の温度が強すぎて、妄想より生活の呼吸が勝ってしまう一話でした。
お風呂上がりの“お楽しみ”の答え合わせと、明日の罰ゲームの行方は次回へ続きます。
今回も御手にとっていただき、ありがとうございました。
ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。
どんな誘いになるのか、次の Causerie (物語)をお待ちいただければ幸いです。




