女神様は見たっ!!
旅の途中でふと聞いた“音が消えた街”の伝承。
それは、どこか懐かしい昭和ドラマのように、妙に胸に残る話でした。
ころねとわためは楽しそうに話し、俺はただ聞いているだけ──のはずだった。
でも、どこかで誰かが見ていた。
そう、まるであの有名なドラマみたいに。
女神様は見たっ!!
そんな気配を背中に感じながら、俺たちは東へ向かうのであった。
ーーーーー冒頭は 前話の朝の続きになりますーーーーー
「じゃ〜、おばぁちゃん行ってきます。 途中で何かあれば戻ってくるし、
珍しいものがあれば送るから……心配しないでね」
「ころねも、わためも気をつけるんだよ。 くれぐれもジプシ〜君に迷惑かけるんじゃないよ。
いつもみたく無茶したらいけないよ」
「いやいやいや、迷惑だなんて。 こちらこそ、いろいろと分からない事だらけで……
ご迷惑、多々おかけすると思いますが……よろしくお願いします」
「ふぅ〜……ほんのちょっとしか歩いてないのに、もう見えなくなっちゃったねぇ〜。
あんなに周りは広いと思ってたのに……まだまだ広いとこはあるんだねぇ〜。楽しみだねぇ〜」
「ころね、楽しみにするのはいいけど……気をつけなさいよ。
何かあるとすぐ夢中になって、そっちの方しか見えなくなるんだから」
「あぁ〜ひどぉ〜い。 それ言ったら、わためだって人のこと言えないでしょ〜。
何かあった時に最後に引くのは、いつもわためなんだからぁ〜」
「ジプシ〜君、今の話でどっちがひどいと思いますぅ〜?
わたしは、ころねが何にでも興味持って突っ込んでいくから……
あとから追っかけて止めようとしてるだけなんですけど」
「いやぁ〜……自分はまだそこを見たことがないので、何とも……」
(まさか……再びもしかして俺にも──ついにモテ期が来たのか? この歳まで一度もなかった
“モテ期”という奴が。 一時は諦めかけた“モテ期”という奴が。
……なんやこれ。ほんまに“モテ期”ってやつ、来てるんか。
……なんにせよ、今の状況を楽しむことにするかぁ〜。)
「ところでジプシ〜君、どこか行ってみたい場所とか希望はあるかな〜?
もし分かる場所なら案内できると思うし、道も多分わかるよ。あんまり遠いとこは無理だけどね(笑)」
「ころね、それ言うけど、いつも道調べてるの私じゃない?(笑)」
「う〜ん、行き先ですか……ちょっと考えるんで、少し待ってもらっていいですか?」
「ゆっくりでいいよぉ〜。今は道沿いに進むだけだし、何もないからね。のんびり行こうよ〜」
(場所かぁ……そういや、飛ばされてきた時に下を見たら、多分この辺は地図がないから
分からないけど、東に向かえば“あそこ”に着くはず。行ったことはないけど、中学生の時に
読んだ本で雰囲気は分かるし……行ってみたいよなぁ)
「わためさん、ころねさん。行きたいというか、まずお伺いしたいんですが……
ここから東の方に、豚が見つけた温かいお湯に王子様が入ったら病気が治った、
そんな伝承のある街ってありませんか?もしあるなら、そこに行ってみたいなと思うんですが」
「えぇ〜ジプシ〜君、ほんとにどこから来たのぉ〜?その話は有名だけど、この近くに小さい時
住んでたとか?それで覚えてるとか?」
「違いますよぉ〜(笑)機会があれば一度は行きたいなと思ってた場所なんです」
「わためぇ〜、今の話だけで思い当たるとこある〜?私はさっぱり分かんない(笑)」
「ころねはほんと苦手だもんねぇ〜(笑)勢いだけで進んで、急に止まったと思ったら
“どっち行くのぉ〜?”ってなるし。でも今のジプシ〜君の話だと、多分あそこかなぁ〜。
ここからだと東に……約1週間くらい歩けば着くんじゃないかな? でも、なんでそこなの?」
「昔読んだ本で伝承を知って、行きたいなと思ったんです。それに俺の国の人は、ほぼ全員そこが
大好きなんですよね。国民性ってやつですかね。嫌いな人のほうが珍しいと思いますよ」
(ふぅ〜……うまくごまかせたかな。あの本の舞台になった“モデルの街”に行けるなんて、
これは絶対行くしかないでしょ。楽しみだなぁ……)
「ジプシ〜君、でもいいの? 行く場所はそこで?
わためぇ〜、どうする〜? 多分だけどね、今の話しで思い当たるのは……
おばぁちゃんが昔話してくれた“あそこの事”だと思うんだけど、あってれば」
「はいっ、お願いしますっ」
「ころねも気づいたんだ。おばぁちゃんが小さい時に聞かせてくれた“おとぎ話”。
でも……おとぎ話でしょ?」
「んっ? なにか自分、むずかしいお願いしちゃいましたか?」
「あぁ〜そうじゃないの。実はね、寝る前におばぁちゃんがよく聞かせてくれた“おとぎ話”ってのが
あって……えぇ〜っと、何年前って言ってたっけ?わたし達の生まれる前って、おばぁちゃん
言ってたよね〜。ころねぇ〜、覚えてるぅ〜?」
「多分だけどね……今から38年前くらいっていってたかな?今から向かおうとしてる街で
“音が消えかけた”事があったんだって。そういうおとぎ話を、夜寝る前におばぁちゃんから
聞いてたから、興味があるかって言われれば……いってみたい場所ではあったんだよねぇ」
「えっ それは ほんとにっ? 俺の読んでた本でも音の消えかけた街が舞台になっててさ〜。
ある日 突然に街の音が1つづつ消えていくって物語で、それを1人の女の子が気づいて失われた音を
取り戻そうとして異世界に迷い込むっていう物語を読んでたんだよ」
「うんうん。それでね、おばぁちゃんの“夜寝る前のおとぎ話”楽しみで。いろいろ想像して
……気づいたらもう朝で、えっ、なんでもう朝なのって(笑)」
「それは、ころねがすぐ寝ちゃうからでしょ(笑)おばぁちゃんのお話始まったら、
すぐ寝ちゃうんだから。あとね──おばぁちゃんのおとぎ話では、そこには“女神様”がいてね。
スリスっていう女神様で、その女神様の名前が街の名前になってるの。」
「そうなんだぁ〜 女神様の名前が街の名前に……なんかおしゃれだね〜。
それだけ街の人には女神様は身近な存在なんだろうねぇ〜」
(どっかの女神様と大違いだな〜。加護とオヤツどっちが大事か聞いたら、こっちが言い終わる前に
“おやつ” って被せてくるし……ほんとに、俺も身近な女神様がよかったなぁ……)
(──そうか。そんなに “身近な女神様” がいいんだね?なら、次の街で待つことにしようかねぇ〜。
次の街は……スリスっていったっけ?あれだけ悪く言ったら天罰だって伝えてたのにねぇ……)
(えっ……いつから見ていらしたんですかっ?(やばっ)いやだなぁ〜そんなぁ〜
……冗談じゃないですかぁ〜……もう〜……おれと女神様の関係じゃないですかぁ〜……)
(ほんとに物好きだねぇ〜。きちんと逃げないで来るんだよ?ちゃんと “お仕置き” の準備して
待ってるから。どこに逃げたって、すぐに分かるからね 教会で待ってるから 必ず逃げずに来るのよ
いいわねっ──じゃっ)
「ジプシ〜く〜ん? もの凄い顔色悪いけど、だいじょ〜ぶ〜?なんか心配事でもできたのかな?
どこか広いとこあったら休んでいこうか?」
「わため〜、どうしたのぉ〜?なんかあったぁ〜?わたしじゃなくてジプシ〜君がね、
急に顔色悪くなって……今いろいろ聞いてたの〜」
「じゃ〜、ちょっと休めるとこ探しながら向かおうか。ジプシ〜君、だいじょぶだからね。
わたし達がいっしょにいるから、何かあればすぐ言ってね。ゆっくり行くから、慌てなくていいからね」
(うぅ〜……まずいよなぁ……。“逃げても無駄” って……あれ 完全に脅しやん……。
あれで 女神様って絶対おかしい。でも2人に迷惑かけられないし……まずはスリスだっけ?
向かいますかぁ〜……)
───立秋/平月/友引/一白水星/巳の刻/晴光───
次回 おっさん、初めてのお使い(本人は否定しています(笑)) へ続く。
今回は、懐かしき昭和のオマージュを思いきり入れた回になりました。
“音が消えた街”という伝承と、どこかで誰かが見ている気配。
まるであの有名なドラマのように、視線だけが物語の外側から差し込んできます。
女神様は見たっ!!
次の目的地はスリス。
どんな“視線”が待っているのか、楽しみにしていただければと思います。
ご案内の語り部は、次回 またあなたを特等席へ。
次の Causerie(物語)も心待ちにしていただければ幸いです。




