112話 貴族令嬢ミーシャ
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「リックス!あなたのリーダーは、まともに買い物もできないの?この私をいつまで待たせれば、気が済むのよ!?」
2人の沈黙を破った少女の威圧的な声にリックスは失敗した顔をしながら顔を向け、リュートもつられて顔を向けると、どこか見覚えのある少女が歩いて来た。
「・・どこかで見たような」
「ミ、ミーシャ様!申し訳ございません・・これには、理由がありまして・・」
「あなたの理由なんか興味ないわ!噂のポーションは手に入れたの?」
「えっと・・それが不手際がありまして、バーナスはまだ手に入れてないようです」
「はぁ?・・もう、いったい何をやっているの?明日から必要なのよ?」
リックスは、自分より背の低い少女の頭の高さより低い位置まで頭を下げて謝罪している。
「申し訳ございません・・すぐに手配をしますので、宿屋でお待ちください」
「・・・・」
ジロっとリックスを見ていたミーシャは、他の存在からの視線を感じ顔を向けると見覚えのある少年が座って見上げていることに驚き目を見開いた。
「ぬぁっ・・あなた・・リュートなの?」
「元気そうですね?ミーシャ様。この街に来たということは、あの討伐祭で・・いや、騎士団の入団おめでとうございます」
「・・えぇ」
ミーシャはリュートの言葉に俯き沈黙し、命を奪われた幼馴染のガイアスの最期を思い出し拳を強く握り締めている仕草に訳が分からないリックスはリュートとミーシャの顔を交互に見ながら不穏な空気へと変わるのを肌で感じていた。
「・・リュート。あなたは、ガイアスを・・・・」
「あれは、正当防衛。それ以上でもそれ以下でもないと思うよ」
「うるさい・・ガイアスは無抵抗だった。命乞いもした・・なのに・・それなのに・・ガイアスを殺した!!」
小さくも力強く呟いていたミーシャは、涙目でリュートを責めていた。そして感情が一気に吐き出されると同時に遠くまで響き渡る声でガイアスを殺したと叫んだため、行き交う人々は立ち止まり商店リューノスの前にいるミーシャ達に視線を向けていた。
「ミーシャ様!落ち着いてください、今ここで騒ぎを起こすのは入団前にマイナス評価に・・」
「うぐぅ・・・・お前のせいで、ガイアスは・・」
ミーシャをリックスに制止されたことで、勢いを失い独り言の様な声量で目の前のリュートを涙を流しながら睨み帯剣していた剣の握り部に手を添えたところで、店の奥からとてつもない殺気を感じ呼吸が止まるとともに言葉が出なくなった。
「・・・・」
興奮していたミーシャを完全に沈黙させたのは、リュートの背後で今にもミーシャを斬り捨てようと抜剣し構え鋭い目つきのレナだった。
「・・・・レナ」
両足に力を込めていたレナは、あとは飛び出すだけの動作でミーシャの首を体から斬り落とすはずだったのにリュートに名前を呼ばれ躊躇ってしまった。
「主様、行かせてください!」
「ダメだ!・・落ち着けレナ!」
「しかし!主様を罵倒するあの女の自分勝手な言い分を見過ごすことは・・」
「はやまるな・・お前は、俺達の日常をここで壊したいのか?」
「ぐっ・・・・申し訳ございません、主様」
レナを落ち着かせることができたリュートは、先走り行動した彼女が自分を追い詰めないようにするため、強く抱き締めながら瞳を見て告げる。
「ありがとうレナ。その想いに俺は素直に嬉しい。だから、今は耐えてくれ」
「はい、主様・・」
リュートの言葉にレナは涙を流しながら、リュートをギュッと抱き締めた。
レナから放たれた殺気をまともに受けていたミーシャは、その殺気が飛散し解放されたことで浅く小さい呼吸で生命の維持をギリギリ保っていた状態から戻るため何度も深く深呼吸をしている隣りで、レナの殺気の対象外だったリックスは平然とした態度でリュートに聞いた。
「リュート、その美少女は?」
「・・ウチの可愛い従業員。それ以上は秘密」
「そ、そうか・・わかった」
「助かる、リックス・・・・では、ミーシャ様。当店では、貴族様にお売りすることができる商品を生憎取り扱っておりませんのでお引き取り願います」
「覚えておきなさい・・この屈辱は必ず・・」
顔面蒼白のミーシャは、貴族としての威厳のためそう呟きリュートの前から立ち去り姿を消すも、数時間が経過した夕暮れ時に1人で再び商店リューノスの前に現れたのだった・・・・。




