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105話 抜けない勇者と抜ける商人

アクセスありがとうございます。


「うおぉぉぉぉ!!」


 勇者レオが聖剣を抜く・・・


 まだ抜けない・・・


「ぬぅおぉぉぉぉ!!」


 勇者レオが聖剣を抜き・・・・抜けずに、まだ刀身の半分辺り・・・・


「こんちくしょ〜がぁぁ!!」


 カチンッ!!


 聖剣は澄んだ金属音を大きく鳴り響かせ鞘に刀身を納め元に戻る。


「くはぁ・・はぁ・・はぁ・・」


 勇者レオは肩を大きく上下に揺らしながら息をしていると、国王が眉間にシワを寄せた表情で問いかける。


「勇者レオよ、何をしている?」


「・・国王様・・これも試練の一つなのですね?」


「ん?・・どういうことなのだ?」


「勇者の僕であっても、そう簡単には聖剣を手にさせない・・つまりこれが、真の勇者となるための最終試練だったのですね?」


「んほ?・・・・か、神の真意に気付いたようだな・・」


 聖剣を抜くことが最終試練だと微塵も思っていなかった国王は勇者の言葉に戸惑いつつも、でまかせを口から吐き出しこの場をなんとか繋いだ。


「ふぅ・・わかりました。これからは、気持ちを入れ替え全力で挑まさせてもらいます」


「そ、そうか・・勇者レオよ・・その聖剣を掲げる勇姿を見せてみよ」


 ギルホップ国王は、口では期待していることを告げるも心は穏やかではなかった。


(この少年は、本当に勇者なのか?しかし、ステータスに勇者とあったと聞くが・・ん〜過去の文献では、スパッと抜いてササッと儀式が終わったと記されておったし)


「聖剣よ!この勇者レオが、試練を乗り越えて絶対に手にしてみせる!」


 国王の悩みを知ることなく、勇者レオは手にしている聖剣を抜刀するため腕に力を再び込めはじめた瞬間だった・・。


 バチンッ!


 突然聖剣から目を覆いたくなるほどの青白い光が一瞬発せられ、勇者レオの全身がビクンと震えた後に床に倒れ伏しピクリとも動かなくなった・・・・。


「「 レオ!! 」」


「「 レオ君!! 」」


 召喚者の少年少女達が、突然倒れた勇者レオの名前を呼び駆けつけ体を揺らすも目を覚ます気配はなく、1人の少女が慌てて治癒魔法をかけるも目覚める効果はなかった。


「近衛兵長リーヴスよ!勇者様を治癒士達がいる部屋へ運ぶのだ!」


「はい!」


 宰相の指示により、リーヴスは部下に指示を飛ばし勇者レオを部屋から退場させ見送った後に、国王が告げた。


「・・本日の儀式は、延期する。よって、今をもって解散とする」


 そう告げたギルホップ国王は、興味を失くしたかのように部屋から立ち去り参列していた王族達も部屋を後にして、取り残された召喚者達の雰囲気は沈み重苦しい状況になっていた。


「クリスティーネ様、私達も戻りましょう」


「ねぇリュート・・聖剣をテーブルに戻してあげて。床の上じゃかわいそう」


 終始リュートの左手を握っていたクリスティーネの小さな手に僅かに握る力が強まり、リュートを見上げている姿を見たリュートは、片膝を床につけて視線の高さを低くしクリスティーネの瞳を見つめた。


「王女様、お任せください」


「うん、お願いねリュート」


 リュートは立ち上がり、放置されたまま床に転がっている聖剣へと歩き近くにいる召喚者達の視線を集めるも合わせることなく聖剣だけを見て足を止める。


「・・リュート君」


 背後から剣聖キサラギから声をかけられたため、動作を止めたリュートは振り向くことなく返事をする。


「キサラギ様、なんでしょうか?」


「・・もしかしてだけど、聖剣に触らない方が身の為だよ・・普通の人が触れたら死んでしまうんだから。適性があるレオ君だって倒れたんだよ?」


「そうですね・・ですが、クリスティーネ様の強いご要望なので、聖剣をテーブルに戻すだけです」


「でも・・」


「マイカ、その人が触りたいなら放っておきなよ」


「リョウコちゃん、でもね・・」


 そんな会話を聞きながら、リュートはしゃがみ込んで聖剣を見つめると、ピリッと何か繋がった感覚を感じる。


『やっと隣りに来てくれたのね』


『声が・・』


『もう忘れたの?一度会ったじゃない』


『・・宿屋で会った子?』


『名も無き・・わたしは、聖剣』


『シロネ・・』


 リュートは、聖剣から伝わる負の感情とあの長い白髪と黄金色の瞳で雪のような真っ白な肌の少女の姿を思い出し、無意識に名前を呟く。


『シロネ・・それがわたしの名前?』


『あぁ、キミはシロネ・・聖剣じゃなくて、シロネ』


『うれしい・・初めて名前を与えてくれた』


 リュートへと流れていた負の感情から喜びの暖かく感じる感情へと変わる。


『テーブルに戻すよ』


『うん。抱っこして』


 リュートは左手で鞘を握り優しく持ち上げると、聖剣は重さが無くなったかのようにフワッと持ち上げられる。


「ウソ・・」


 勇者レオとは違い、聖剣を軽く手にするリュートの後ろ姿を見た剣聖キサラギから戸惑いの声が漏れる。


 リュートは聖剣をテーブルに戻すため3歩ほど足を進め、聖剣を置こうとした時に聖剣シロネから念話が届いた。


『ねぇ、まだ貴方の名前を貴方から直接聞いてなかった・・』


「リュート。シロネ、俺はリュート」


『リュート・・リュート、そのまま私をもう一度抜いてみて』


「いいのかい?俺は、勇者じゃないぞ?」


『うん。リュートだからいいの・・お願い』


「・・わかった。いくよシロネ・・」


『きて・・リュート』


 テーブルに置くため水平に持っていた聖剣を腰に寄せて切先を下に向け帯剣している格好となったリュートは、試し斬りをするかのようにスッと聖剣を抜いて、軽く二振りした後に切先を前方へと向け止めた後にクルッと手元で回転させ鞘に収めた。


『リュート、相性バッチリだね』


「ありがとう、シロネ」


 そう呟いたリュートは、聖剣をテーブルにソッと置いてからクリスティーネの隣りへと戻る。


「お待たせしました、クリスティーネ様」


「リュート・・すごく格好よかった」


「ありがとうございます。では、戻りましょう」


 クリスティーネが伸ばした左手を優しく握るリュートは、一緒に部屋を出ようとした時に剣聖キサラギに呼び止められた。


「待って!リュート君!」


「なんでしょうか?」


「君はいったい何者なの?」


「ただの商人ですよ・・元冒険者ですけどね」


 そう告げたリュートは、クリスティーネに手を引っ張られ部屋を出て行きルカ達が待っている部屋へと向かったのだった・・・・。


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[気になる点] ~テーブルに置くため水平に持っていた聖剣を腰に寄せて切先を下に向け帯剣している格好となったリュートは、試し斬りをするかのようにスッと聖剣を抜いて、軽く二振りした後に切先を前方へと向け止…
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