104話 勇者に聖剣を・・・
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リーヴスに先導されながら廊下を歩き屋敷から出たリュート達は、王城内にある中庭を歩く。
勇者レオに連れられて来た時と違い、今は大勢の使用人達が忙しなく移動している姿をリュートは目にしていた。
「リーヴスさん、今日は何かあるんですか?」
「リュート殿、ここだけの話しですが・・数時間後に勇者レオ様に聖剣を授ける儀式を行うのです」
「聖剣・・あぁ、俺が運んで来た荷物ですね・・」
「そうです。厳しい訓練を乗り越えた勇者様に、これから実戦経験を積んでもらうための節目として大大に受け継がれてきた聖剣を手にさらに成長され、世の安泰の為に魔王討伐をしてもらう・・」
「そうですか、でもこの国の偉い人達は酷いですよね?」
「酷い?リュート殿、それはどういう意味ですか?」
「リーヴスさん、本気で聞いてますか?この世に縁の無い少年少女達が召喚され、魔王を倒せと言われるんですよ?」
「日々の生活を国費を使い豪華にしているんですから、当然だと思いますが・・」
「リーヴスさん・・明日突然、目を覚ましたら知らない世界で、いきなり己の命を賭けて魔王を倒せと言われても恐怖はありませんか?」
「・・・・たしかにそうですね」
「今の召喚者達は、その状態なんですよ?俺には無理です・・絶対に心が耐えられません」
「私達は、酷いことを当たり前のように押し付けているのですね・・」
「はい。自分たちの命を犠牲にすることなく、勝手に期待して勇者様達に押し付けているんですよ・・」
しばらく無言のまま歩いていると、右手に見えていた王城の方から少女の声が中庭に響き渡る。
「リュート!・・リュート!」
突然、自分の名前を呼ばれたリュートは足を止めて顔を向けると、小さな窓から必死に覗き込み細い手を必死に振る第1王女クリスティーネの姿をリュートは見つける。
「クリスティーネ様!」
「・・リュート!・・リュート!今からそっちに行くから、絶対に待っててね!」
「クリスティーネ様!・・私は、今から帰るところなんですよ!」
「だぁ〜めぇ!・・絶対に待ってて!!」
クリスティーネは、小さな窓から出していた腕をスッと戻し窓を閉めて姿を消す。それを見ていたリュートは、帰るべきかこのまま待つか悩み、答えを求めるかのように近衛兵長リーヴスに視線を向ける。
「リュート殿、ご予定があると思いますがクリスティーネ様の願いなのでお待ちください」
「・・わかりました」
苦笑いをするリーヴスにリュートは小さくため息をついて待っていると、メイド2人を付き従いながら小走りに駆け寄るクリスティーネの姿をリュートは見つける。
「リュート!リュート!・・お待たせなの!」
「クリスティーネ様、このような私に会ってもいいんですか?」
クリスティーネは、リュートの問い掛けに答えることなく立ち止まらず抱き付き見上げる。
「いいの。リュートは、私の専属護衛騎士なの」
「クリスティーネ様、それについては・・」
「もう決定事項なの!リュートは、私の専属護衛騎士なんだからね!」
「・・・・わかりました。クリスティーネ王女様」
「ふふっ・・言質取った・・ねぇ、騎士リュート。今から私と一緒に来て」
「ど、どこにですか?」
「んーとね、今日は勇者に聖剣を授けるんだって。その儀式に私も立ち会わないといけないの」
「それは流石に・・他の者もいますので」
「他の子たちには、別室を用意させるわ。だって、儀式は退屈なんだもん・・そうだ!あの勇者が聖剣に認められなかったら、リュートが試してみてよ?」
「む、無理ですよ。部外者ですし・・それに・・」
「ノア!レベッカ!・・リュートの従者達に部屋を用意して!」
「「 はい、クリスティーネ王女様 」」
王女の命令に従うメイド2人は、ルカ達を連れて先に王城へと入って行く。そして残されたリュートと近衛兵長リーヴスは、クリスティーネ王女の思い付きに巻き込まれてしまう。
「リュート、早く」
左手を握られたリュートはクリスティーネと並んで歩き、すれ違う使用人達の驚く反応に苦笑いしながら歩き目的である勇者聖剣授与の儀式が挙行される大きな部屋に入ると、既に召喚者達の黒髪黒目の少年少女達が横一列に並び待っている光景を目にすると、召喚者達が視線をリュートへと向けた。
「リュート君?」
第1王女クリスティーネと手を繋ぎ部屋に入ってきたリュートの姿を見た剣聖キサラギは、思わずリュートの名前を口にする。
「マイカちゃん、あの人知ってるの?」
「うん」
「彼も召喚者?」
「違うよ、リョウコちゃん。リュートくんは私達と同じ黒髪黒目だけど、この世界の人なの」
「本当に?この世界は、召喚者以外に黒髪黒目の人は存在しないって・・」
「そうなんだけど・・リュート君は否定してるの」
彼女達の会話を聞き取れることのないリュートは、剣聖キサラギ達召喚者から視線を外しテーブルに置かれている聖剣に視線を向けると、近衛兵が守るようにテーブルの左右に立っている姿をしばらく見て心を落ち着かせている。
ややあって、自分は場違いにいるなと考えながら国王が来るのを待っていると、ふと聖剣に視線を向けると聖剣から何かが発せられている気配を感じ取る。
『・・・・迎えに来るのが遅すぎじゃ』
キンキンッ・・キンキンッ・・
そんな念話が聞こえたような気がするリュートは、苦笑いし聖剣がカタカタと金属音を小さく鳴らす。
「おぉ!聖剣が勇者様に反応しているようだ!」
列席している宰相ロヤーソクが呟くと、他の貴族達が同調し声を上げると感動の眼差しで聖剣を見つめていた。
「国王様の入場!!」
近衛兵の宣言の後に、国王が姿を見せて召喚者たちと聖剣を挟んで向き合う。
「召喚者達よ、今日までの厳しい訓練を乗り越えたことは賞賛に値する。そして、勇者レオに、伝説の宝具である聖剣を授けることに決まった。さぁ、勇者レオよ!目の前にある聖剣を手にし、我々にその姿を我々に見せてくれたまえ!」
「はい!!喜んでお受けします!」
列から一歩前に出る勇者レオは、聖剣の前に立つと同じ召喚者達から羨ましむ声と冷やかす声を浴びて振り向き苦笑いすると、もう一歩前に進み手の届く位置についた。
その勇者の行動に反応するかのように、聖剣はさらに金属音を大きく鳴らしながら震え始める。
その聖剣の光景に国王や宰相そして貴族達は驚きの声を上げて盛り上がるも、リュートの隣に立つクリスティーネだけは不満な表情を浮かべていることにリュートは遅れて気付く。
「クリスティーネ様?どうかされましたか?」
「むぅ・・アレは、私のリュートの剣なのに・・」
「私の?・・まぁ、そんなことはありませんよ。聖剣は、勇者様が持つべき剣でありますから」
いよいよ勇者レオが聖剣を手にする直前に国王は両手を広げ告げる。
「さぁ、聖剣を手にし掲げ、その勇者の姿を見せてくれ!!」
国王の期待する言葉に頷いた勇者レオは、緊張と期待の感情が入り混じった表情で右手を伸ばし聖剣を握ると、プルプル震わせながらゆっくりと聖剣を持ち上げた。
(聖剣って、そんなに重かったかな?」
そう思いながらリュートは勇者の動きを見つめていると耐えきれなくなったのか、レオは左手で鞘を持ちすぐに左腕も小刻みに震え始める。
「こっこれが!・・聖剣の重さなのか!?」
勇者レオが必死に聖剣を持ち上げる姿に、勇敢さは微塵も無い。しかしながら、聖剣を手にする唯一の資格がある
勇者に対して、国王達の瞳には勇敢な勇者像が確立され興奮していた。
「レオ!格好良く聖剣を抜けよ!」
勇者の背後にいる召喚者の少年が1人、期待を込めて声を上げて勇者レオは期待に応えるように気合の声を上げる。
「うおぉぉぉぉ!!!」
水平に持っている聖剣をプルプルと震わせながらゆっくりと抜刀する勇者レオ。その純白に輝く刀身をゆっくりと少しづつ見せる聖剣に感動の声を上げる国王達にリュートは複雑な思いでその光景を見守っているのだった・・・・。




