103話 剣聖マイカ=キサラギ
アクセスありがとうございます。
勇者レオに連れられリュート達は王城へと向かう。
その道中にすれ違う女性達に呼び止められ、チヤホヤされるのを鼻の下を伸ばし笑顔振り撒きながら歩いて行くのをリュート達は黙って歩き途中の露店で売られている甘い香りを漂わせるお菓子にミヤとカナが誘惑され引き込まれて行くのをリュートは漏れなく買い与え、2人は嬉しそうに袋を持って歩いていた。
「遅れているから、離れずついてきて!」
商人ギルド内での口調とは違う社交的な感じを漂わせる勇者レオのことを、リュート達は裏表がありすぎる男だと改めて認識し黙って歩き王城門前へと辿り着く。
「勇者様!」
門兵は視線だけを向けて動かずにいると、詰所から別の門兵が慌ててやって来る。
「お一人でどちらまで行かれていたのですか?・・剣聖のキサラギ様が探しておられました」
「ちょっとですね・・えっと、後ろの彼らを同行させても?」
「急に同行者を王城へですか?」
門兵の男は、勇者レオの後ろにいる同行者達に視線を向ける。
「リュートさん達ではないですか・・勇者様とお知り合いだったのですか?」
「いやぁ・・知り合いというか・・なんか私に用があるみたいで・・」
門兵の若い男はリュートに親しげに話しかけているも、リュート本人は彼の名前を知らないため内心ドキドキしている。
「あっ・・身元確認は、以前していますので・・えっと、こちらの女の子2人は・・」
「あぁ、銀髪黒目がミヤで、紅目がカナです。2人とも、挨拶して」
「リュート兄様のミヤなの」
「リュート兄様のカナなの」
「はい、よくできました。門兵のカリッドです。リュートさん、入城をどうぞ」
「ありがとう、カリッドさん」
自分だけ疎外感を感じていた勇者レオは、一足先に門を通過していて遅れていたリュート達は小走りに勇者の背中を追いかけた。
「遅い・・」
勇者レオは歩きながら振り向き一言呟いただけで中庭を抜けて王城ではなく、別に建てられている屋敷へと入り2階の大部屋へとリュート達を招き入れた。
「待ってたよ!きみを・・・・」
大部屋に入り勇者レオが壁際へと避けたことで奥に座る黒髪少女と視線が重なる。
「キサラギ様・・ですね」
「へぇ・・憶えていてくれたんだ。私の名前」
「一応、商人の端くれですので・・」
にっこりと笑う剣聖キサラギは、ソファから立ち上がりリュートの前に立ち背の高いリュートを見上げる。
「ねぇ・・本当に商人なの?」
「生粋の商人ですよ、キサラギ様」
「うそ・・ウソついてるリュート君」
「嘘など・・」
剣聖キサラギは、右手を伸ばし人差し指をリュートの胸の・・心臓の位置にゆっくりと寸分のズレもなく捉え触れる。
「・・知ってるんだから私。リュート君が・・」
剣聖キサラギの言葉を遮るようにレナがキサラギの指先をリュートの胸から弾き自らの左手でリュートの心臓を守るかのように覆い被せた。
「いたっ・・」
「失礼ながら、主様にこれ以上の接触はおやめください」
「もう・・いいところだったのにぃ・・貴方は誰なのかな?」
剣聖キサラギは、レナに弾かれた指先を左手でさすりながらレナに視線を向ける。
「従者のレナと言います」
「従者?」
「はい、護衛と身の回りのお世話と夜の営みまでを・・ぽっ」
「レナ、ぽって自ら言うやつじゃないからな?それに、夜の営みってアレはな・・」
「リュート君!立場を利用して、弱い立場の従者に・・まさか他の女の子も?」
「ちくしょー!!」
急に黙っていた勇者レオが叫び、リュートを睨んでいた。
「レオ君、リュート君達とは住む世界が違うのよ・・この世界だから私達の世界にはない、ハーレムが存在するの」
「だけどさ、勇者の俺にも存在してもいいんじゃないのかよ・・リアルハーレム」
「不潔よ、レオ君・・」
「うぐぅ・・」
「キサラギ様、そろそろ本題の方に」
「そうね、立ち話もあれだから無駄に長いソファに座って」
「は、はい・・」
リュート達は、壁際に置いてある長すぎるソファにリュートを中央にして座る。
「・・初めて役に立つのを見たわ、そのソファが・・まぁ、今日ここに来てもらった理由わかるかな?」
一呼吸置いて考えるフリを見せるリュートは、適当に答える。
「デートのお誘いですか?」
「てめぇ!!」
リュートの言葉に勇者レオがキレて怒鳴った。
「ちょっとレオ君!?私より先に反応しないでくれるかな?」
「わりぃ・・つい」
剣聖キサラギに注意された勇者レオは、視線を天井へと向けて腕を組み目を閉じる。
「リュート君、話が逸れちゃったけど期待していたデートの誘いじゃないよ。君の周りは既に可愛い女の子ばかりに囲まれているじゃない・・もう、ぷんぷんよ!」
「・・その、ぷんぷんされる理由は知りませんが、本当に私を呼んだ理由をそろそろ・・・・」
「そ、そうね・・コホン。まず一つは、私達の戦闘技術を教えてくれているSランク冒険者アンドリューさんの行方が不明なこと。2つ目は、なぜ私がリュート君の店で気を失ったかを知りたいの」
「そうでしたか・・アンドリューの奴は長い旅路へと行ったので帰ってくることは無いでしょう・・」
Sランク冒険者アンドリューは、店先でミヤの暗黒魔法に飲み込まれこの世界から消失したなんてリュートは言えるはずがない。
「二つ目のキサラギ様が気絶した理由は、私にもわかりません」
リュートの黒い瞳をジッと見つめていた剣聖キサラギの黒く輝く黒い瞳は、自称商人リュートの僅かな動揺を見逃さないように注視していたものの何も変化はなく終わってしまった。
「・・どうして、私が気絶した理由がわからないの?そこにいる子に、店に入るのを止められたんだよ?」
「はい、私が剣聖様の行動を止めたのは事実です」
レナの言葉に補足するようにリュートが続いて口を開く。
「レナには他人が不用意に家の・・いえ、店の中へ入って来られないよう注意するようにと店主である私が言い聞かせていました。なので、レナの行動は当然でありしかも腕を伸ばしただけですので、直接キサラギ様には触れていません」
「・・たしかに、その子が手を伸ばしただけってことは記憶にあるわ。でもね、それじゃ納得できないの」
壁際で1人会話に取り残されていた勇者レオは、このままではキサラギの立場が悪くなると思いつき助け舟をだす。
「結局さ、俺のマイカに何かしたのは間違いないんだろ?」
「レオ君!?私は、貴方のモノになったことは一度も無いのだけど?」
「あっ・・いや、絶対に彼女を気絶させる魔法を使ったに違いない!」
「・・・・・・」
リュートは勇者レオの言葉に思わず黙り込む。
「私達の中で、そのようなことができる魔法適性者はいません」
今まで黙っていたリュート好みのメイド服を纏うルカの言葉に、剣聖と勇者の視線が向けられた。
「貴方は、リュート君のメイドさん?」
「はい、ルカと言います。リュート様の食事から湯浴みから睡眠まで全てを私が承っております。もちろん夜の営みも・・・・キャッ」
「ちょっ・・ルカ?」
「ほんっとうにハーレムじゃないの・・・・まさか」
剣聖キサラギは、絶対にあり得ない2人へと視線を向けると、視線に気づいたミヤとカナは返事をした。
「ミヤもだよー」
「カナもだよー」
「「 リュート兄様と毎晩一緒なの 」」
ミヤとカナの言葉に剣聖キサラギは発狂した。
「なんてことなのー!おまわりさん、ここに変態がいます!!助けて!」
「マイ・・キサラギ、落ち着けって!」
「だって、こんな可愛い子にも手を出すなんて・・私より先に大人の階段を・・」
取り乱す剣聖キサラギを勇者レオが落ち着かせようとしている光景を眺めているリュート達に勇者レオは嫉妬と苛立ちの感情で睨んでいると、大部屋のドアがノックもなく勢いよく開けられて大勢の近衛兵達がなだれ込んできた。
「剣聖様!!」
剣聖キサラギの叫び声を聞いて部屋に入って目にした光景は、ジタバタ暴れる剣聖を抑える勇者の姿だった。
「お二人で、いったい何をされているのでしょうか?」
「「 へっ?? 」」
大勢の近衛兵の注目を浴びている剣聖と勇者は動きを止めて、近衛兵長リーヴスの問い掛けをきっかけに我に返る。
「勇者様は、これから大事な儀式が控えていますので早く私室にお戻りください。剣聖様も立ち会いますので、お着替えのためご準備を・・」
勇者レオと剣聖キサラギは、恥ずかしさの余りリュート達の存在を忘れ与えられた部屋へと戻って行き、2人を見送った近衛兵長リーヴスは、ここで2人の来客の存在を知る。
「リュート殿ではありませんか」
「どうも、リーヴスさん・・もう俺達は帰りますね」
「でしたら、門まで同行しましょう。お前らは、この後の儀式の警備の配置についてくれ。俺はリュート殿をお見送りしてから合流する。別れ!」
統制の取れた行動で近衛兵達は部屋から出ていき、リーヴスとリュート達が部屋に残った。
「さぁ、行きましょうリュート殿」
近衛兵リーヴスの案内でリュート達は来た道を歩き王城門へと歩き出したのだった・・・・。




