98話 朝の悪ふざけで失う物が多すぎた客
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ドタバタだった昨夜から翌朝となり、リュート達6人はリビングで一緒に朝食を食べ終わると1階の店舗スペースへと移動し商店リューノスの営業を始める。
相変わらずやる気が出てこないリュートは、1時間も立たないうちに店番をミウに任せ後ろにあるローテーブルに肘をつけて虚空を見つめている。
その反対に、双子のまるちどぉーるのミヤとカナの2人は店先の通りの地面にリュートからもらった木の枝で、理解し難い何かを描いたり消したりして遊んでいる。
念のためレナは店前に新たに設置された木製のベンチに座り、2人のお守りをリュートに任されたためポーションを買いに来た男冒険者達が悪さをしないよう警戒している。
「リュート様、またミウちゃんに店番を任せっぱなしではダメですよ?」
「そうなんだけどさ〜俺がいる時より、ミウが座っている方がポーションが売れるんだよね〜。さっきも、俺が対応したら舌打ちされたし・・」
「ほとんどのお客さんは、男の方ばかりですからね・・」
「まぁね・・固定客がいるのは良いことなんだけど、もっと客層を増やさないと売り上げが伸びないんだよね〜」
「商売の事については、私の知識が足りず詳しい事はわかりませんが・・・・ポーションも容器の瓶もリュート様の魔力で作られているので、丸儲けではありませんか?」
「・・どこで覚えたんだよ、丸儲けって・・」
「リュート様からですよ?」
「あぁ、そうだよね・・俺達は魔力融合で繋がっているから、俺の思惑もダダ漏れか・・」
「はい。ですから、変なことを迂闊に思い浮かべないでくださいね?ミヤとカナにも伝わってしまいますから」
「・・・・善処します」
ローテーブルに置かれたコップを手に取り紅茶を飲むリュートは、これ以上何も口にしないぞと無言の意思をルカにアピールしていると、ルカは何も言わずゆっくりと立ち上がり店から出てレナが座るベンチに座った。
そんなとある商店の何気ない日常が流れ繰り返され2ヶ月の時が流れ、いつものようにリュートが開店準備を終わらせて椅子に座り店番をしていると、定期的にポーションを購入してくれる男冒険者がいつもの時間に姿を見せる。
「よぉ、店主リュートが店番すると売り上げが激減するのに精が出るな?」
「うるせぇよ!・・毎日大怪我して売り上げに貢献しろよ、ポンコツ冒険者」
「Sランク冒険者アンドリュー様の怪我は、名誉の負傷だぞ!」
「はぁ?あのポンコツがSランク冒険者だぁ?どんな強者と毎日激戦してんだよ?」
「てめぇっ」
窓越しに立っていたSランク冒険者アンドリューは、朝からリュートの挑発に乗ってしまい帯剣していた片手剣を反射的に抜剣し切っ先をリュートの眉間へ寸止めするところで、右手から愛剣が姿を消している事に気付いた時には、既に自身の喉元にリュートの脇から伸びる剣で動作を止められていることを認識しすぐそこにある確実な死に震え生唾を飲んだ僅かな喉の動きで切っ先に触れてしまい喉元を浅く切り赤い血が滲み出る。
「・・・・貴様は、築き上げてきたモノを今ここで過去の栄光にするのが望みか?」
リュートの背後から、普段の表情から敵を殺す剣士の瞳で見つめるレナが冷淡な口調で静かに告げる。
「ぴぎぃ・・」
「「 ねぇねぇ、生きてる?? 」」
ツンツン・・
レナに生死の主導権を握られてしまったアンドリューは、小さな奇声を漏らし足元で面白い生き物を見つけた表情で見上げているミヤとカナに右足を押されたことで体の重心が後ろへと寄りそのまま地面に尻餅をついた衝撃で意識を失った。
「カナちゃん、この落し物の剣はおじさんの剣かな?」
「きっとそうだよ、ミヤちゃん・・危ないから捨てた方がいいよ」
「うん。危ないよねカナちゃん・・リュート兄様を刺そうとしたし」
「そだよ、ミヤちゃん。早く捨てて」
「うん。捨てるね・・えいっと」
シュワッ!
Sランク冒険者アンドリューの片手剣は、銀髪黒目のミヤが指先で強く上から押して地面へと押し付けた直後に一瞬で紫黒色に染まり泡が弾けるような小さな音が出て存在を消した。
「すごいね、ミヤちゃん。今のは魔法なのかな?」
「そだよ、カナちゃん。暗黒魔法っていうの」
そんな2人の恐ろしいやりとりを、リュートとレナは、突然後ろに倒れたアンドリューを意識していたため気付いておらず、アンドリューの片手剣が、小さな女の子の暗黒魔法によってこの世から存在を消され僅かな時間の後に店先へと出てきた。
「ミヤ、カナ・・ここにいたのか?」
「「 そうだよ、リュート兄様。この人は誰ですか?? 」」
「店の客の1人だよ。まぁ、それなりに買ってくれる客かな・・うん」
「主様、あの男の剣が見当たりませんね・・私が叩き落としたハズなのですが」
「そう言えば、アイツの剣がないね・・2人とも、この人の足元に剣が落ちてなかった?」
「ミヤが捨てたよ。リュート兄様」
「ミヤが捨てたの?」
無垢な笑顔でミヤはリュートを見上げている。
「偉いねミヤ、それで何処に捨てたのかな?」
「えへへ。ん〜わかんない」
「リュート兄様。ミヤちゃんは、消したの」
「消した?カナ、それを見てたの?」
「うん。見たよ」
「・・マジか・・それじゃ、これも消せるかな?」
リュートは、アイテムボックスから不要な短剣を取り出し地面に置く。
「うん、ミヤはなんでも捨てれるの」
ミヤはリュートが地面に置いた短剣を指先で触れて、グイッと押し込むと、銀色の鞘に収められていた短剣は一気に紫黒色に染まり泡が弾けるような音を出してその姿を消した。
その現象にリュートとレナは驚愕し、その幼き容姿から想像もできない強大な魔法を持っていると確信した。
「ミヤの魔法は、なんていうのかな?」
「んとね、暗黒魔法だよ?」
「あ、暗黒魔法!?・・・・ちょっと家に戻ってさ、ミヤとカナのステータスを俺に見せてくれないかな?」
「「 いいよ〜リュート兄様には見せてあげるー 」」
ことの重大さを自覚していないミヤとカナを連れて、リュートは臨時休業と木札を窓に掲げローテーブルの脇に2人を座らせルカとミウを呼び緊急の会議を開くのだった・・・・。
王都での月日が流れたため、そろそろ登場人物を増やしていきます。
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