締め出し
「……どうやら高山殿、『主殺しの光秀を討つというこの聖戦、神の御心は我が高山家と共にあり。その栄光は神と我らのみが独占すべきもの。池田殿に手柄を分け与える必要なし。アーメン。』と、神聖な微笑みを浮かべながら呟いていたとの噂が……。」
「あの信心深い顔してめちゃくちゃ現世利益の塊じゃん!! 抜け駆け処の騒ぎではない! 聖戦って言えば何してもいいと思ってんのか!! 完全にコンクリートで外堀埋められた後に、内側からガチガチに鍵をかけられたよ!?」
狂信的な笑みで十字架を握りしめ、「命を捨てる覚悟はできております!」と爽やかに言い放っていた右近の顔が脳裏をよぎる。
あいつ、命を捨てる覚悟がある一方で、「だから手柄も一番槍もぜんぶ俺のな! 池田軍は後ろで指くわえて見てろ!」という、どす黒いまでの独占欲と功名心を爆発させていやがった。清廉潔白なキリシタンの皮を被った、とんでもない極悪ベンチャー精神の持ち主である。
「父上! 西の門が、西の門がどうしても破れませぬ! 高山右近、カンヌキを三重にかけた上に、内側にデカい石臼まで積み上げてやがります! 完全に我らを締め出す気です!」
長男の元助が、顔を真っ赤にして汗だくで走ってくる。
門の方を見れば、池田家の筆頭家老・伊木忠次が「ぬおぉぉーっ! 右近め、なんという不義理! 殿のためにそこをどけぇい!」と大斧を振り回して門扉を叩き割ろうと力づくで暴れているが、がっちりと補強された西の門は無情にもびくともしない。次男の輝政に至っては「ならば壁を登る!」と近くの民家の屋根に足をかけようとして、中川清秀の部下に「おい池田、そこは俺たちの持ち場だ、登るな!」と押し返され、味方同士で小競り合いを始める始末。完全に大パニックだ。
「ちょっと久秀!! 話が違うじゃないか!!」
私はついに堪忍袋の緒が切れ、本陣の隅で、相変わらず一連の大混乱を特等席のエンタメでも見るかのように楽しそうに眺めている爆弾オヤジの胸ぐらを(今度こそ本当に、親の仇のごとく)ガシッと掴んで前後左右に激しく揺さぶった。
「光秀の軍は君のデマのせいで死に物狂いで突っ込んでくるし! 身内の高山右近は独占欲がバグって門を完全ロックするし! 前にも後ろにも進めないじゃないか! これじゃただの『門の前で立ち往生して右往左往してる池田軍』っていう、歴史上もっとも間抜けなターゲットだよ!? 明智の鉄砲隊が回り込んできたら、狙い撃ちにされて全滅だよ!?」




