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106⚫️間に合わない
海が、異様な静けさをまとっていた。
潮は沖へ吸い込まれ、海底がむき出しになっている。
その光景を見た瞬間、カナタは叫んだ。
「みんな、高台へ走れッ!!」
その声が、村の空気を裂いた。普段と全く違う鋼の響きだった。
「カナタ? どうしたんだ、急に?」
「いいから走れ!海が戻ってくる!都の城壁を越えるほどの水の壁だ! ここにいたら、全員呑まれる!」
村人たちの顔色が変わった。
「子どもを抱け!病人を背負え!足の悪い者を支えろ!走れ、走れッ!!」
カナタは先頭に立ち、村人たちを高台へと導く。
背後で、海が低く唸った。
地鳴りのような、世界そのものが動く音。
振り返ると
水平線が盛り上がり、
巨大な影が立ち上がっていた。
カナタは歯を食いしばり、
村人たちを引っ張るように走り続ける。
だめだ、間に合わん!




