107⚫️矛と盾 目覚める魔王
必死に地を駆けるカナタの視界に、突如として朧げな光景が重なった。
どこで見たのか・・・いや、確かにどこかの世界に’あった’記憶。
脳裏に、かつて交わされたはずの誰かたちの声が、
鮮烈に聴こえる。
こりゃあ、ダメだな。
ええ。想像を絶するわね。
思いきり突っ込んでも跳ね返される。目に見えないクッションに包まれているみたいだ。
物理的な防壁だけじゃない。攻撃魔法も瞬時に中和される。これほどの多層構造、見たことも聞いたこともない。
技術と莫大な魔力の結晶。’とんでもない’の塊よ。一級の魔法使いが何年も蓄えた魔力量でも、この長城の結界の一部にも満たないはず。
単一の魔力プラントじゃ不可能。つまり、賢者クラスが長い年月をかけて編んだ”世界を遮断する防壁”ってことよね?
なんだ、これは。
いや、知っている。ワレは、これを知っている。
どこかで・・・。
ダリア。 ・・・エレナ。 ルイーダ。 グラノフ。・・・リノ。
・・・’大賢者’・・・。
忘れていたはずの名前が、奔流となって記憶を駆け抜ける。
その瞬間、カナタの中で、
散らばっていた全ての’何か’が一本の光となって繋がった。
彼は目を見開く。
現実の肉体を置き去りにして、次元の狭間・亜空間のプラントから、天文学的なエネルギーの奔流を強引に引き抜いた。
目標、正面。迫りくる、天を衝く大津波。
カナタは両手を突き出し、かつて魔王と呼ばれた己の長城防壁、世界を遮断する多層結界を、今この辺境の海へ向けて一気に展開した。
王都の城壁すら遥かに越えて襲いかかる、狂った自然の’水の矛’。
対するは、魔王が編み上げた超科学という名の’魔法の盾’。
両者が、真っ向から激突する。
圧倒的な大自然の猛威。対するは、時空を超越した未来の叡智。
光も影も大気も、
惑星も恒星も星雲も、
過去も現在も未来も
すべての多層世界が
この一瞬の交差点に、激しく凝結した。
第10部 037⚫️越えられぬ壁を乗り越えて https://ncode.syosetu.com/n8145mf/32/ 参照




