105⚫️霊山で得ていた カナタの知識
津波とは、海そのものが巨大な一枚板のように持ち上がり、押し寄せる現象である。普通の波は風が海面を揺らすだけだが、津波は海底そのものが動くことで、海全体が揺さぶられる。海底がわずかに隆起しただけでも、その上にある膨大な海水が一斉に押し上げられ、その反動が質量を持った波となって四方へ走り出すのだ。
海は深いほど水の量が多く、動く力も大きい。深海を伝うその波は、洋上ではほとんど気づかれないほど低く、しかし信じられないほどの速度で疾走する。
だが、浅瀬へ近づくにつれて逃げ場を失った水塊は上に積み上がり、高さを増しながら陸へ向かって急加速する。これが、津波が’山のような壁’となってすべてを呑み込む理由であった。
津波の前に海が異様に引くのは、海底の変動によって海水が沖へ激しく吸い込まれるためである。海が静まり返り、風が止むのは、巨大な水の塊が動き出す直前の’溜め’のようなもの。自然が恐怖で息を潜める瞬間なのだ。
すなわち津波とは、
【 海底の変動 ➔ 海水の大移動 ➔ 浅瀬での増幅 ➔ 陸への襲来 】
という、単純だが圧倒的な力の連鎖に他ならない。
噴火がなくとも、地震だけでそれは十分に起こり得る。かつて霊山でカナタの脳裏に刻まれたその知識は、今、目の前の不気味な静けさと完全に一致していた。
海が引き、最大の静寂が訪れた。 それは、海そのものがすべてを滅ぼすために動き出す、最悪の前触れであった。
カナタと霊山、現世界戦との関係は、第10部 https://ncode.syosetu.com/n8145mf/ の以下をご参照くださいませ。
023⚫️その時は・・・ https://ncode.syosetu.com/n8145mf/19/
026⚫️駆け上る階段 https://ncode.syosetu.com/n8145mf/22/
029⚫️’お兄さん’と’おじさん’の境界線 https://ncode.syosetu.com/n8145mf/24/
057⚫️大いなる矛盾 https://ncode.syosetu.com/n8145mf/48/
058⚫️楽しみな今夜のパーティ https://ncode.syosetu.com/n8145mf/49/




