087⚫️エレナの解答
百合光月14日(光冠曜日)
ベルムの調理は、相変わらず素晴らしい。
朝食のハムエッグに添えられた、焼き立てのパン。
それに’クロテッドクリーム’っていうの?
これがもう、飛び上がるほど美味しいの。
四人での旅も、いよいよ帰路むかっている。
自由とワガママ、秩序と抑圧。
その境界線を求めて歩いてきて、分かったことがある。
人にはそれぞれの基準があり、
一つの現象でも見方によって意味は変わってしまう、ということ。
私が自由だと感じる環境が、すべての人に当てはまるわけではない。
当たり前のこと。
このクリームだって、口に合わない人だっているはずだもの。
’最大多数の最大幸福’という言葉を聞いた。
けれど、その影でマイノリティに我慢を強いることは、
本当に正しい’秩序’なのかしら。
魔王カナタが示した結論は、彼自身の世界における正義だった。
それでも、それを誰かに押し付けることはできない。
だから私たちは拳を振り上げず、
顔を合わせて話し合わなければならない。
言葉だけでなく、心でも。
私たちの頭は、なぜついているのか。
私たちの心は、何をしているのか。
きっとそれが、境界線を決める唯一の手がかりなんだと思う。
カナタの宿題に、たった一つの正解はない。
永遠に、未解決。
なぜなら少なくとも、
人の数だけ’世界線’は存在するのだから。
エレナはノートブックを閉じると、
ルイーザ、グラノフ、ベルムと共に、
故郷の王国を目指して歩き出した。




