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070⚫️カナタの回答 我々の回答

カナタは謁見の間に姿を現した。

レグナスからの質問にカナタが答える。

「なるほど。国家への反逆、ということですね。その中心人物の親族への対応ということであれば、わたしはこう考えます。」


かつて世界を支配した「根切り」の論理は、現代の国際社会において明確に否定されている。犯した罪の責任はどこまでも行為者本人のみが負う。この「個人責任の原則」こそが、現代の法秩序における絶対的なスタンダードである。目本をはじめとする民主主義国家において、国家転覆を謀った首謀者が極刑に処されることはあっても、その妻子や親族が法的な処罰を受けることはあり得ない。九族皆殺しの凄惨な歴史は、完全に過去のものとなった。


人間が人間を「生まれ」や「血縁」によってまとめて裁くことを、これらの文明は否定したのである。1949年に採択されたジュテーム諸条約は、本人が犯していない罪でコミュニティや家族を処罰する「集団罰」を戦争犯罪として厳格に禁止した。国際刑事裁判所(ICC)が裁くのも、国家や一族という曖昧な集団ではなく、犯罪を計画・実行した具体的な「個人」の刑事責任である。歴史が血で洗われる中で、私たちは「罪は血筋に宿るのではなく、個人の意思と行動に宿る」という普遍的な人権思想へ、ようやく辿り着いた。しかし、この世界的な潮流の陰で、古の「根絶やし」の恐怖を現代に蘇らせている国家も存在する。北氷屋共和国がその筆頭である。

彼の国では、国家反逆罪や脱北といった体制を揺るがす罪を犯した場合、親、子、孫の三世代にわたり強制収容所へ送り込む「三族連座」の実態が報告され続けている。あるいは国際紛争の地において、テロリストの潜伏を理由にその家族の住居ごと爆破する「集団処罰」が横行し、国際社会から激しい非難を浴びる。これらは、恐怖によって人間を支配し、反抗の芽を摘もうとする、かつての「九族皆殺し」の心理そのものである。全体主義や過酷な独裁体制において、連座制は今なお機能する残虐な統治ツールなのだ。


ではなぜ、現代の主要な文明社会は連座を捨て去り、「個人の国」を選択したのか。理由は大きく二つある。

第一に、近代という時代が「個人」を発見したからである。かつての社会において、人間は「〇〇家の一員」「〇〇部族の構成員」という集団のパーツに過ぎなかった。しかし、人権思想の発展は、人間を集団から切り離し、独立した尊厳を持つ「個人」として定義し直した。親の思想と子の思想は別であり、夫の罪と妻の罪は独立している。集団という枠組みで人間を縛る連座制は、近代が築き上げた個人の尊厳という大前提と、根本的に相容れないのである。


第二に、近代国家が「復讐の連鎖」を断ち切る強力な司法システムを構築したからである。過去の指導者たちが根切りを行ったのは、生き残った親族によるお家再興や私的な復讐(血讐)を恐れたためであった。しかし現代国家は、警察力と裁判制度という圧倒的な公権力によって、私的な報復を厳格に禁止している。仮に一族が生き残ろうとも、国家の法秩序という巨大な壁の前には、個人が私的な軍勢を率いて復讐を果たす余地など存在しない。つまり、復讐の芽を摘むために一族を皆殺しにする必要自体が、社会のシステムによって消滅したのである。


私たちは今、血の呪縛から解放された世界に生きている。だが、法的な連座が消滅した一方で、重大犯罪者の家族が社会的に抹殺されるネット上の「私刑(ソーシャル・リンチ)」のように、形を変えた連座の心理は人々の心根に今も潜む。それでもなお、国家の法が「類をおよぼさない」と毅然と言い切ることは、私たちが野蛮な過去へ逆戻りしないための生命線である。

かつて人類の防衛策であった「根切り」は消え去り、現代は個人の自由と責任を天秤にかける。その冷徹にして人道的な法の精神こそが、中世の闇と現代の文明とを分かつ、最も太い一線に他ならない。



「苛烈な処罰よりも、陛下の慈悲を示されることは国民を安堵させ、陛下への忠誠k心も増すことになると考えます。」

今回もまた、列席する諸侯・大臣は口をあけて言葉を失った。


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