騙されやすい二人
運動に適した季節。その快晴の朝。庭に出て呼吸するだけで幸福度が上がるような快適さ。
勇者を倒すには絶好の日だ。もうなんかやる気が漲ってくる。
作戦はある。先日言いそびれた、分かったことの3つ目。
「アネモネは手加減が下手」
「どうして急にしみじみと言うの?全然私出来るわよ?」
ヤマトの捕獲を想定して風の壁を練習して貰っているのだが、ムキムキ巨体サキュバス格闘家のライラさんが突風で硬い壁に叩きつけられて「ギャアア!」と言っていたので多分駄目だと思う。
咄嗟に庇っちゃったもんね。たまたま訪れて相手役をかって出てくれたのに、あまりにもむごい。
結局のところ手加減が下手なだけで最強は最強なので、上手く抑えればそれだけでアネモネはヤマトに勝てる。それこそ賢者の3つ目の答えかつ必勝の作戦なんだけども。
「おかしいな。もう一度説明するからよく聞いてねアネモネ」
「わかった」
わかってなさそう。
「硬い壁に激突させると怪我させちゃうかもしれないし、どうしても範囲が狭くなるから逃げられもする。だからむしろ『柔らかくて』『広い』空気の壁を作れば良いんだよ」
「わかった」
絶対わかってなさそう。
「突風で叩きつけるとかも要らないの。柔らかい壁でじわじわ包んでいくんだ。ほら、でっかい布団とかクッションって硬いものより弾きづらいでしょ?」
「?」
完全にわかっていない顔になった。
アネモネってもしかして空気でふわふわなものも硬くして切れるんだろうか。いや出来るよな。そこらへんの空気固めて足場にして飛べるんだから逆に出来ないわけがない。
おかしいな。作戦は完璧な筈なんだけど、なぜか成功する気がしない。
1:私の索敵は最強。絶対見つけられる。
2:ヤマトが抜けないと判断した隊長さんの配置で方向を誘導出来る。
3:秘密の切り札、柔らかくて見えない空気の壁ゾーンに追い込んで勝ち。
三行以内の完結で完璧な作戦なんだ。明らかに天才。ちょっと苦手なだけでスポーツだって策士役にはなれる筈なんだよ私。
正直、これが秘密の切り札だぁあー!ってスポーツ創作物みたいに作戦が決まってメチャクチャ格好良い感じになるつもりだった。智将が輝く系のやつ。
念のため事前練習してよかった。考えた通りに物事が進むなら人生に苦労は無いんだ。
いやおかしいな、それが出来るから知的天才美少女賢者の筈なんだけどな私。
てかさぁ、人が乗れる硬い空気の壁を作れるほうが凄いわけで、もっと広く大きく柔らかいクッションっぽいふわふわしたのを作るだけなら楽勝だと思うじゃん。
「ぐわああああ!!」
再び突風で吹き飛ばされたライラさんが見えない何かにめり込んで変な形になっている。逆さまになったサキュバスが大きく足を開いて空中に張り付けられている光景は色々な意味で不安になる。
なぜなんだアネモネ。
「もしかしてアレかな?柔らかくって話を銅と鉄の柔らかさみたいな感覚で捉えてるのかな?それはどちらかというと硬さの差なんだよアネモネ」
「どっちも大して硬くないわ?」
「うーーーん!!マズイなー!!本当に駄目そう!!なんで!?」
他国との風習の差なのか、勇者信仰がとんでもない教育でもしているのか。いやでも風習とか教育とか絶対ちゃんと話を聞かないぞアネモネは。もうぜっっったい独自のおかしさだろ。
「あ、姉御、タリア王女、少なくとも午前中は練習に費やして欲しい」
ライラさんが際どい体制からなんとか抜け出して、あまりにも当然の提案をしてくる。
朝っぱらから空中で大開脚させられていたサキュバスには間違いなく言う権利があるだろう。
「私結構シリアスに焦って急いでるつもりなんだけどなぁ」
今日も起きたら既に空は薄っすらと結界に覆われていた。どう考えてもそんな連発して良い魔法じゃない。医者に魔力を使うなって言われてて世界規模の大魔法撃つやつ普通に許せないだろ。
「……アネモネ、もしかして『ヤマトに無茶させるのも嫌だけど、あいつの意志を勝手に邪魔するのも駄目』みたいな葛藤してるわけじゃないよね?」
「……!!」
アネモネは、『たしかに!!』という顔をした。逆にそこまで考えていなかった証明である。
「ねぇタリア、私が勝手に邪魔するのってもしかしてダメじゃない?」
「もう絶対今気付いたよねそれは。でもさぁ、医療関係者が皆やっちゃダメって言ってるのに無茶をするやつって、誰かが強引にでも止めないと本当に壊れちゃうよ」
アネモネは、『たしかに!!』という顔をした。ちょろくて可愛いが心配にもなるよね。
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本当に午前中丸ごと練習に使って、ようやく私は自分が頭でっかちで、机上の空論に近い乱暴な理屈をアネモネに押し付けていたと気付いた。
どうやら『程々に柔らかく広い壁を配置する』というのは、アネモネの感覚で言うと『卵を割らないように積み上げる』ような繊細なものだったらしい。
「柔らかいものをそっと指でつまむような感じでこの硬さになっちゃうのか……」
「ご、ごめんなさいタリア、でも出来るわ私」
「いやこっちが悪かったごめん。どうも戦闘はダメだ。頭で想像出来る理屈が現実とズレすぎる」
胸が痛い。
正直アネモネが変な誤解してるのかと思い込んでいた。ギャグみたいな話かと勝手に決めつけていたがアネモネは至って真面目にシリアスに頑張っていた。
そして数時間の練習で多少なりとも柔らかい壁を一瞬だけ配置出来るようになった。というか一旦硬い空気の壁を出してそこから丁寧に慎重に力を抜いていくような感じらしい。
「恐らく姉御は空気を操るというか、空気中の魔力を勝手に使って魔法を組み上げているのだ。空気を素材にした壁の魔法。それを発動するかしないかのギリギリに調整し続けるのはさすがに伝説的存在だろうと難しいと思う」
実験体になり続けたライラさんが体感からの感想と推測を話してくれる。興奮状態じゃない時は本当に知的キャラだ。ムキムキの巨体なのに。
そういえば最初にアネモネと戦う事になった時も『伝説に挑もう』とか言ってたし、ライラさんの中で勇者信仰の聖女というのは伝説的な魔法戦士みたいな認識なのかな。
絶対聖女って呼び名と合ってないと思う。
「私がもっと早く気付いていたら調整道具を作るだけだったのに、選択肢を間違えちゃった」
「タリア王女は、というか賢者は我が聞いた限りだと絶対正解する存在だと思っていたが」
「するよ。でも正解っていうのが私が求めているものと一致しているとは限らないんだ」
「あー、そういう話なのか」「どういう話?」
納得するライラさんと、今まで散々同じ話を聞いていた筈なのに全く察していないアネモネ。
「効率的な答えは人命を軽視しがちだし、国民を守りたいという選択と勇者に無茶をさせないという選択は相反している」
「意外と面倒なのだな賢者の力は」
「だから自分の体で実際に動き始めないとダメなんだ。答えの方向性を心と体で断定しないとダメ」
「なるほどそれでいつも必死に駆け回って……いかん姉御、我キュートアグレッションが凄い」
スパーン!!と背中を叩かれるライラさん。アネモネによるツッコミをまともに受けられる存在が居るせいで謎のコント空間が発生している。
「でもようやく方向性が決まった。力を合わせようって言ったのにアネモネだけに頼って無茶をさせようとした私のアホさが間違っていただけだ」
髪の毛を数本切って、手に複雑な形で巻き付けて簡易魔法陣を作る。
魔法を消す魔法。これを良い感じにコントロールする。風の壁の魔法をちょっとだけ溶かすように。
借りにも賢者と呼ばれる者だ。せめて繊細さでは秀でている所を見せておかないと。
「タリア、それ疲れて眠くなっちゃう魔法じゃなかった?」
「うん」
「我としては、勇者の負担を止めるために賢者に負担をかけたら結局ダメな気がするぞ」
「何の負担も無く良い結果だけ手に入れたいってのは難しいじゃん」
「じゃあ勇者の負担も認めるのか?」
「異世界人云々を抜きにしても、それは医者がやめろと言ってる負担なのでダメ」
「タリアも言われてなかった?」
「私はほら、運動しなさすぎるのもダメみたいな感じだから」
すごい、めちゃくちゃ怪しまれてる。そういえばこの二人は前回の戦いで私が寝ぼけながら魔法を撃って最終的に気絶した所を見ているらしいので、過保護さが増しているかも知れない。
「そもそも今回のはあいつが変な無茶しなきゃ何の問題も無いんだ。悪いのはヤマトで、私が変な負担背負ったとしても全部ヤマトのせい。どっちも勝手にやってる事なんだから、誰かに負担を押し付ける云々の議論はちょっと状況が違うだろ」
「うーん」「うーん」
まぁあんまりこっちも厳しく言ってないだけで、さすがに天才賢者がレスバで負けるわけ無いのでさっさと話をまとめて
「タリア王女にお伝えを!!」
「うわ!?なに!?」
庭の外から突然の大声。見た目的にたしかマリウス王子の兵かな……?
「町民が勇者様を発見!打ち合わせ中の王子と位置が近かったらしく、緊急で追跡に向かわれました!」
メイドさんが要件を聞いてきてくれようとしたんだけど、それより早くアネモネに抱えられて直接話しを聞きに連れて行かれ、直接報告を受ける。
そうするつもりではあったけど判断が早すぎる。
「打ち合わせってどっかの会場でやってたの?いちばんでかいとこ?」
「いえ!先日タリア様達が駆けつけた山の近くです!地区の自治会の会計さん達と青年団の自警組織との話し合いがどうたらこうたらで!」
「また地味な仕事しつつ見てない所で活躍しようってのかあの王子は」
だがマズイぞ。マリウス王子は確かに強くなってきてるけど、やたら強い装備を手に入れた今のヤマトを一人で捕まえられると思えない。
「マズイわ。タリアの索敵が自認以上に重要なのは、不意打ち出来るからなのよ」
急にキリっとして頭の回転も上がるアネモネ。戦闘モードだ。
「どうしよう、まだ練習したかったけどすぐ応援に行く?」
「そう、ね。仮に仕切り直してから不意打ちを狙うにしても、今のチャンスをあえて見逃す利点は無いわよね?」
「待って下さい、まだ別の報告がありまして」
空を見上げて飛び立ちそうだったアネモネを兵が引き止める。
「あの、ライラ殿」
「我?」
ちょっと遅れてきたライラさんに突然話が振られる。なんだ?どういう流れ?
「昨日今日と、喉に違和感や、息苦しさなどありませんでしたか?空気が乾燥してるみたいな話でも良いんですが」
「そう言えば喉の筋肉に潤いがちょっと……?」
喉の筋肉ってどれだ。
「分かりますか?王子が言うには、数人のサキュバスから似た話を聞いたとの事で……」
「え?……あ!?」
「もしかしたらタリア王女に相談したほうが良いかも知れないと仰ってまして」
私を抱えて飛び立とうとしていたアネモネを一旦止めて、ライラさんを鑑定する。
──昨日今日と限定して異常を問うという事は、空の封印にデメリットがあるのではという事だよね?
サキュバスは種族名というより魔力を摂取する美形女性異種族の総称に近い。
私達に何の違和感も無く、彼女達に何か症状が出るとしたら、それは物質的な話よりも魔力絡みの見えない問題の可能性が高い。
迂闊だった。複数の国を丸ごと巨大封印で覆うような大魔法は、本人の負荷だけじゃなくもっと様々な影響を予測するのが当たり前じゃないか。
「さっと確認できる範囲では何も異常が無い。ライラさんちょっと来て、家の中で簡単に診察する」
「い、いやしかし、勇者は?」
「うーん……アネモネに先に行って貰うか、ちょっと待って貰うべきか」
「分身はもう飛ばすけど、」「この状態であの繊細な壁は難しいわ」
普通にアネモネが二人になってて、言いたいことが沢山あるけど今ちょっとシリアスなので一旦流す。
「行っても止められない分身を飛ばすよりは、本体で行って分身残してくれた方が」
「ダメ」
絶対に私の警備から離れないという鉄の意志。どうしてそんなに過保護になってしまったんだろう。
「まあ診察が先か。本当に空の封印に健康被害があるなら、ヤマト自身の為にも無傷で捕獲とか悠長なことを言っていられなくなる」
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「……ライラさんって、人間に換算した年齢はどれくらい?」
「三百くらいだったか?我らは発生するかしないか辺りのモヤモヤした感じの頃も長くて曖昧なのであんまり細かくは」
手持ちの診察用魔法道具を使って色々診たものの、本人に若干の違和感があるみたいな自覚症状だけでどこにも何も見つからない。
「似た症状を他で感じたことは?」
「うーむ。いや難しい。自覚出来ないほど微かな違和感を普段いちいち細かく気にしないぞ。自覚出来るほどはっきり息苦しい時は空気の悪い閉所とかに居る時だが、それはそうとしか言えないだろう?」
「うーん」
呼吸が詰まる感じって、人間でも何も要因が分からずストレスなのではという話になることが多い案件だ。
もっと精密に分かる機器で調べれば炎症とか出てくるかも知れないし、定期的に診断しているのならそれと比較して何かが見えてくる事もありそうだけど……
「ちょっと難しいぞ。今すぐヤマトを捕えるべきではあるが、今すぐ私が大勢の診察データを持っているシンシアちゃんとこに行って詳細を調べたほうが良い案件でもある」
「まずは原因を真っ先に断つべきよね?ヤマトさんが知らずに他者を傷つけるのはきっと凄く良くない事だと思う」
短剣を構えるアネモネ。なぜ。
「しかし姉御、空の封印が問題という話なら、一旦アレが消えるまではいつ勇者を止めても変わらんのでは?魔力で常に維持しているわけじゃなく、一度発動したらしばらく消えない筈だ」
「あ」「そうだった。よく分かったねライラさん」
「い、いや、まぁ、となると今すぐ選ぶべきはその診察データの方では。勇者だって悪影響の疑いってだけで邪魔されるより、ある程度本当にそうなのか調べた上で判断されるべきだろう。思い込みで過激な攻撃をして違ったら可哀想だ」
「賢いわねライラ」「たしかに」
「どうしようこの二人チョロすぎる……我こういうの得意じゃないのに余裕すぎる……」
結論は決まった。まずは診察。分からないまま行動するより情報のほうが大事。学問の国の天才美少女王女だし、やっぱそういう感じが良いんだきっと。
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「そう来ると思ってたのよタリアさん」
シンシアちゃんは偉すぎるので、昨日今日と違和感を覚えて診察に訪れた全てのデータと、その人達の健康診断データを既に用意してくれていた。研究所に着くなりこれだ。管理職の人が青ざめているが見ないことにする。
すごい。全然余裕で無関係な個人情報も盗んできてる。確か医療研究目的という条件で色々な閲覧が許されている機関の筈だけど、越権かどうかグレーな部分にも躊躇が全く無い。
「タリアさんもあんな巨大な魔法を見たら少なからず何らかの影響を疑うわよね」
「うん。もう最初から全然気付いてたんだよね」
「そうだったのね」「姉御これ大嘘では」
山のようなデータを見せられて、よく分からない計算もさせられる。なんかこういう事多いな最近。
「大事件でタリアさんが無茶をして駆け回るのは分かっていたけど、やっぱり頼るしかない。本当に無理はしないでね」
「じゃあどうして書類をドサドサ追加してるのかな?」
「スイーツももっと食べて」
「めちゃくちゃ甘い」
子供の頃の学友であるシンシアちゃんは、一歩踏み出す勇気を持っている素晴らしい友達だ。
人付き合いが下手だった私に話しかけてくれる勇気を。本当に大事な事の前では細かい事を全然気にせずさっさと話を進める勇気を。もう法とか私の扱いとか些事だもんね。まぁ実際そう。そんなことウダウダ言ってる間に出来ることが沢山あるからね。
口に次々突っ込まれるスイーツ。手に次々持たされる書類。私のこと甘味で稼働する計算機だと思ってる?
「──やっぱり!!!」
「何が!?」
そして作業の途中で突然叫ぶシンシアちゃん。
「ヤマトさんの世界には魔力が無い!だから魔力を食べる種族も絶対に居ない!」
「そう、だね?」
「つまり、魔法は、魔力は、本当に普通なら有り得ない力なの!ヤマトさんの世界の方が普通で、この世界には有り得ない力があるのよ!」
「まぁ有り得ないから魔法って呼んでるからね?」
ズバーンと机を叩き、早口にまくし立てるシンシアちゃん。怖い。ライラさんとアネモネの屈強組が突然の豹変に怯えている。
「……つまり、この世界の外部から何らかの力を得ていないと、魔法も魔力も有り得ない!元々この世界は穴だらけなんですよ!恐らくもっと見えない穴……ほら、ダンジョンの奥で魔石が出てくるみたいな……」
「そういえば何か比較的新しい映写機が魔石の中に閉じ込められてたの見たな」
再びズバーンと叩かれる机。知的興奮でドラミングみたいな事する学者怖すぎる。
「だから穴の向こうで塞ぐのね!!無限にある異世界の全てでは無く、一つのトンネルだけを塞ぎたいから!!勇者とウラニアさんの言っていた通りだわ!!!」
「え?」
そして突然訪れる沈黙。え、怖い。何?何か失言したみたいな顔をしてるけど全然分からない。表沙汰になると駄目な部分が多すぎて何を失言だと感じているのか逆に全くわからないよシンシアちゃん。
「……というわけで、ライラさん」
「は、はい!?我!?」
見慣れない魔法道具を取り出して、何らかの結界を作るシンシアちゃん。私の高級結界魔法石と似ているが、多分ウラニアによる新装備だ。
その中に誘導されるライラさん。勇者との殴り合いにすら勝てて、ガハハハ!とか笑う巨体が怯えて縮こまっている。可哀想に。怖いよね。説明されないと。結構天才って細かい説明飛ばしがちだよね。私もそう。
「……どう?息苦しいですか?」
「すまん、入る前から若干気圧されていて……あ、いや!確かに!症状がもっとハッキリしたぞ!!」
「ほら!!!タリアさん!!!!」
「ほらっていうか、なんでそんな道具準備出来てるんだ?勇者封印装置の亜種?」
「あっ……いや、そう!それ!!」
「絶対違う反応だけどねそれ?」
「勇者を健康診断する時に遮断が必要だから!!!」
「う、うん。そうか。それは確かに?」
なんかだいぶ色々怪しい気がしてきたが、そこに突っ込んでる余裕が与えられない。
「で?どうタリアさん?症状の詳細。データの比較と、この状態の鑑定で」
「え、あ、はい」
促されるままに賢者の答えを求める。
「……少なくともサキュバスは人間の呼吸と違うものも常に吸って吐いている。シンシアちゃんの言う通り、この世界は思ってるよりもっと見えない穴だらけらしい」
「まぁ食事の概念から違うからな我らは」
「どんなに調べても身体の方には異常は無い。ライラさんも、他の大半のデータも、超大型封印に覆われたという外的要因のみで不快感や違和感が発生している。賢者の力で断定出来る」
「やっぱり!!!」
「そもそもヤマトの世界を考えると色々な穴が無いとサキュバスが世界に現れて受肉とか定着とか出来ないっぽいし、こうなると問題はサキュバスだけじゃない。この世界は穴がある前提で出来ていて、勝手に巻き込んで塞いじゃいけないんだ」
立ち上がる私と、途中から何も聞いていなかったらしくようやく終わったのかと嬉しそうに近寄ってくるアネモネ。大型犬を見ているような感覚。
「結果は出た。やっぱり内側の巨大封印は駄目だ。健康被害に留まらず、世界のことわりに影響してる気がする。取り敢えずヤマトを捕まえるか、せめて話が出来るくらいに足止めしよう。どうせ接近しただけで逃げて拡声器でも声届かなそうだし」
「タリアさん、今日一日分は見逃してデータを取っちゃ駄目かしら?そんな危険な被害が出るとかではなく違和感程度なのでしょう?」
「いや、もう全部分かったからさっさと止める。シンシアちゃんのおかげで普通なら見れない情報まで見れちゃって分かりすぎた」
なんだかライラさんとシンシアちゃんが気まずそうに見つめ合っている。
「……まぁいっか!捕まえちゃいましょうタリアさん!」「うわ切り捨てたぞ!?」
何をどう切り捨てたんだろう。最初から色々ルールとか倫理とか切り捨てがちだからどれの事か分からないぞ。




