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【賢者に選ばれた者ウラニアの視点】


【賢者に選ばれた者ウラニアの視点】




南の国中枢にある、巨大特別研究所。タリアさまが本来メインで働いている場所。主に医療や救急と言った、人命救助に関わる魔法道具を中心に色々開発している重要施設だ。防衛道具もその範疇になる。


ボクはそこのトップである天才賢者に専属研究員として採用されているので、肩書的には割とすんごくエリートのはず。



別に王族とか貴族ほど実家が太く無いので、実際にエリートっぽいかと言うとそうでも無いけど、少なくとも与えられている権限は凄まじい。別の街にある同系列の研究所まで含めてかなり自由に使えるし、どこの実験室も優先的に使わせてもらえる。




「小僧に、これもヤル。これもダ」

「わぁ凄いですよウラニア博士!」「これがゴブリンの道具!」「未知のアーティファクトまで!」



なので、ボクの研究室に不審者が侵入して勝手にお土産を広げるなんて不用心なことはまず起きない筈だし、その不審なゴブリンゾンビに同僚がお茶菓子を出して談笑している筈が無い。


ボクも若干気にならなくは無いけどね。未知の道具はそりゃ見たいっすよ。でもそれにしても不用心だよね。



「英雄様、本当に賢者では無くこの小僧で良いノカ?どれも一応貴重品なんダガ」

「賢者自身もコイツの方が道具の研究開発は優れていると言ってイタ」

「なんと」

「大した魔力も使えんし筋力も加護もしょうもないのがまた良イ」


「悪かったっすね!?ちょっと最近気になってる事を!」




人が試験データの整理で忙しいのを良いことに、近くで言いたい放題だ。



「コイツは本当に只のヒョロナガなのダ。なんならヤマトから戦う力を抜いたようなものダ。それが知恵と道具で勇者を倒シタ。非常に良イ」


「褒めてるっぽく人を貶すの本当に良くないっすよ?」

「オレも英雄様が何をそこまで評価シテイルか分からんが、土産には感謝シロよ小僧」



なぜか英雄ゴブリンの祭壇までの案内役だった現場責任者ゴブリンまで色々持ってきている。


というか捕縛したノームさんをどうするかって話題になった時に、それはもう大慌てですっ飛んできて色々交渉をしていた。責任者って大変なんだなぁ。




でも小僧はやめて欲しいっす。なんで何度言っても理解しないのか。



あと褒め言葉って意外と高頻度で人を刺すよね。



最近マリウス王子視点の同人見ててたまに共感して泣けるんすよ。ボクには凄い人たちみたいな特別な力が無い。ただちょっと天才でクールで見た目も格好良いから今まであまりその差を感じて来なかった。


目の前でタリアさまが凄く弱ってるのを見た時に、あの人も人間だって実感した時に、急に何かね。



知識としては苦労を知りつつも、結局憧れて盲信してて弱さを見ていなかったから、いざこの人を守りたいみたいな思いが湧いた時に、あれ?でもボクには特別な力とか無いなって。ふと感じたりする。天才なだけだなって。


知り合いに相談したら怒られたけど、でも周りが皆天才か最強だったら、それって普通なんだよね。大会とかで上に行くほど基準自体が上がっていって、地元で最強が只の一般人程度になっていくあの感じ。




「もういいや。作業は後にするから、どういう魂胆なのか説明して欲しいっす」

「色々提供するカラ、邪竜による我々への恐怖共有魔法対策に協力してクレ。我々も動いているが、第三王女からの連絡で既にお前が鍵となって研究が進んでいると聞イタ」



普通にスラスラと事情を説明してくる現場責任者ゴブリン。南の国との交渉に慣れている感じだ。



「気軽に言うけど、魔法生物を通した感覚の共有って物理的に何かを飛ばしているわけじゃなく量子の話みたいに瞬時に重なっているノリだから、簡単な装備で物理的に遮断出来る感じじゃないんすよ」


「だから色々魔法道具を持ってキタ。物理だけで対処出来ないから魔法と呼ばれるわけだが、それでもあれは世界中ではなく一定範囲にだけ起きた現象ダ。距離で減衰している以上必ず止める手段はアル」




今度はノームさんがすらすら理屈っぽい事を話す。意外過ぎる。勇者って皆こんな感じで口も頭も回るタイプなのかな。


そういえばこの英雄ゴブリンゾンビって地下から直接魔石掘り出してその場で簡易の魔法道具みたいに使ったりしてたし、なんかメチャクチャ強い人が賢くて道具も使いこなすのあんまり良くないと思う。ボクらの立場がおかしくなる。




「というか大昔に実際に色々戦った英雄なら、当時の対策方法とかも色々知ってるんじゃ無いんすか?」


「知ラン。映像も見せて貰ったが、むしろ何をしたら本来強大な邪竜があんなに怯えるンダ?怖すぎて逃げても安心出来ず、殺して排除するしかないという上位の恐怖をオレも共有されたが、本当に狂うほどの恐怖ダ」


「ボクらは邪竜がどんなのかも知らなかったんすよ?ご先祖様のせい……だけどノームさんの時代よりは後なのか。ややこしいっすね。一体何が……?」



「例えば、この数千年の間に海の生物を執拗に襲い続けたトカ、そういう話は無いノカ?」


「……」


「オイ。なんで黙ル。まさか魔物まで手当たり次第食ってたんじゃナイだろうな?」


「……」「……」「……」


「オイ!なんか言え!怖イ!!」




同僚含め誰もが一旦黙秘を貫いた。


いやいや。さすがにそれだけじゃないと思う。多分色々複雑な話とかはあるんだって。その上で、ちょっと南の国の住民は海産物の料理がとっても大好きってだけ。


確かによくわからない魔物達であろうとも味と毒性だけは大体調べられているけど、まずかったらそこまで無理して食べないもん。珍味になるだけ。




「こいつ海の生物だったら例えマズくても珍味として食うみたいな顔してないか?怖いゾ?」




仮にちょっとでもボクらの自業自得だと匂わされると、ゴブリン達は本当の本当に巻き込まれただけの純粋な被害者だから協力するのが当たり前というか……そういえばそんな感じで裁判に負けていた気がする。損害賠償の話がメインでボクとは直接あんま関係無いつもりだった。



まずい。ボクじゃん。金はともかく、実際にやるべき対処をする人はボクだよこれ。うわ今気がついた。



もしかして他の皆はちゃんと分かっているから丁寧な対応してるんだろうか。やだなぁ言ってよ先に。


どう見ても同僚たちはゴブリンの道具に興味が惹かれすぎて釣られているだけにしか見えないけど、内心ではちゃんと分かってる可能性が……ある、のかな。




「……まぁ、ヤマトに色々見せて貰って思ったが、あの気持ち悪い手とか足の化物も、或いはヒョロナガへの恐怖の現れカモ知れん」


「ほ、ほらぁ、セーフ!そうか、危険な生き物を真似る擬態の可能性もあるんだ?」


「海だからどうこうじゃなく、誰がどこでどう敵対してもヒョロナガはやっぱり危なすぎるって結論になるのかもナ」



「あれ?なんか余計にダメになったかも。いやもういいっすよ、別に人類がどうとか関係無いもん。どっちにしろボクがやるべき事をやるしか無いし、やるならちゃんとやるだけ。ついでに何か貰えるって話ならありがたく研究しとくっす」


「偉いぞ坊主!で、あと二つ頼み事がアッテ」


「だるいー!」




どうしよう、断れない仕事が無限に増えていってしまう。




「別にお前らにも得なんだから素直に働ケ。一つはオレを倒した封印装置。あれの範囲も大きくシロ」

「そりゃまぁ言われずとも」

「海から別の国まで全部ダ」

「何言ってんの!?幾らかかると思ってるんすか!?」

「金でどうにかなるとこまでは来てるノカ?」

「どうにもならないくらい大金なんすよ!」




まったく!そりゃ無尽蔵な金さえあればなんでも出来る。でもある程度の規模を超えるともうその金を使うことにすら大金が必要になり、あっという間に国家予算だって超えていく。



「……お前が勇者召喚を殺すと聞イタ。オレの知る限り、綻びた封印を再封印できるのは勇者しか居ナイ。そもそも異世界転生勇者はその為の死体道具ダ」



途端に静まり返る研究室。




「まさか、この装置って、あの穴にも効くって事っすか?」


「まだ分カラン。だが賢者が何か怪しい行動を穴にした際、連動してヤマトの腹から魔力が溢れていたのは確認シタ。恐らくオレもヤマトも穴の向こう側の何かに接続されている」


「まずいっす、どう考えても個人的に頼まれてどうこうなる規模じゃなくなってきた」



「おい小僧、お前が勇者を倒し賢者も守るんダロ?ならそいつらの代わりに世界も守れ。まさか妨害だけしておいて困った時には勇者や賢者に頼るつもりナノカ?」


「ぐっ……!!この……っ!!」


「実験台になるくらいは手伝ってヤル。オレ以外からも可能な限り必死にサポートを受けろ。当然他のヒョロナガは死ぬ気でこいつに協力シロ。ヤマトもオレもお前らが鍵という部分では完全に意見が一致してイル。古い勇者を新しい人知で超えろ」


「うおお!」「勿論です!」「頑張ります!」「テンション上がってきた!」




ダメだ、勇者は鼓舞が上手いものなんだ多分。ヤマトさんもそうだけど、特に男の人らは強い人に素直に頼られると皆ウッキウキになっちゃうんだよ。ちょろすぎる。



ボクは改めて言われると責任が重すぎて胃がチリチリするんだけど、皆よくそんな元気に返答出来るね。



べ、別に言われなくたって分かってるけどね。分かってるけど、言われると重いっす。




「で、次ダ」

「ねぇ本当に一個で十分クソ重いんすけど」


「まぁまぁ。オレに勝った相手がそんな情けない事言うナ。これが最後だし、こっちは別にそんな大規模な話じゃナイ」




そういってゴソゴソとノームさんが取り出したのは、まさかのボクが研究している純魔力だった。一体どこから……いやどう考えてもヤマトさんとマリウス王子経由だ。



「それこそ、流通に乗せろとか言われても尋常じゃない時間と金が消し飛ぶっすよ。凄いエネルギーだけど用意するのにも保管するのにもえぐいコストがかかって……」


「そうじゃナイ。オレ、ヤマト、賢者が今一番気になっているのはコレの製造過程だ」




過去の世界を知る英雄ゴブリン、やたら雑学に詳しい異世界人、現代最強の賢者が全員これを気にしていると告げられたので、さすがに皆がザワッとして野次馬も更に集まってくる。


今まで想定していなかった凄いエネルギーなわけで、実際凄い研究だという自覚はボクも皆もあると思うけど、さすがに名だたるメンバー過ぎる。




「実際ボクらも凄いエネルギーだと思うから研究を進めてるんすけど、念のため先に言っておくとこれを大量に用意しろとかすぐに成果を出せって言われても物理的に無理っすよ。これを取り出すのって本当に大変で」


「そうじゃナイ。お前、これを『純魔力』と名付けたナ?」

「え?あ、は、はい」

「つまりお前は一般的に想定されている魔力に何か不純物を見出しているわけダナ?」

「そうっすね。実際不純物の濾過っぽい行為でアネモネさまが見つけたものなんで」


「あの化け物か……グッ!?」

「英雄様!?油断はダメだ!絶対まだどこかから見張ってル!!」




急にノームさんのふとももからパァァン!という破裂音がした。多分どこかに居る透明なアネモネさまに手の平でパシーンって叩かれたんだと思うけど、音で窓がビリビリ揺れる平手打ちはヤバいっすよ。




「あ、あの、一応次の緊急時に備えて準備は進めてるっすけど、本当に渡せてもちょっとしか」

「だから違ウ。用があるのは魔力から剥がした不純物の方ダ」

「え?」



ゴロゴロと高価そうな魔石が机に並べられる。多分これも研究に使っていいぞという事だろう。でも、純魔力は要らなくて、不純物の方……?




「なぁ小僧……お前魔力から『何』を剥ぎ取ってイル?」



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