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主人公を置いて勝手に話が進んでいく


なんか機関とか金持ちと色々提携しているらしい高級病院内。


私は自分の開発道具のテストで自分の検査を頻繁に行っているので、わざわざ病院に行って検査せずとも前のデータ色々持ってくれば良いって言ったんだけどね。全然許されなかった。



健康診断に付き添いとか絶対要らないと思うんだけど、金持ち用の病院で賢者を狙った襲撃とかあったら大変な事になるからと皆ゾロゾロ着いてきてしまい、外の警備と合流した第一王子以外はでっかい待合室で暇を持て余している。



金持ちが病気になってから自宅にそれ相応の医療機器揃えるのは定番だけど、健康な時に使う巨大検査機器を技師ごと家に揃えたい人はあまり居ない。


なので、かかりつけの医師を自宅に呼んでどうにかなるタイプの患者は居ないけど、めっちゃ重症な人か健康な人だけが居るという、ちょっと不思議な空間だ。




私は様々な大型魔法道具の準備が出来次第順番に次々検査されている所なので、断続的な待ち時間がとてもダルい。



医療用だから慎重に作らざるを得ないし、準備も慎重で時間がかかるのはしょうがないんだけど、もっと気軽に検査出来る魔法道具も開発したいな。




「タリア様、検査機関の方が細胞と尿と血液を先に機関に持って行くそうですが、宜しいのですか?」

「はい…。そういうことになっちゃった」



白衣のお姉さんが若干気まずそうに確認に来てくれる。


もう帰ったんだシンシアちゃん。私の周りには一度思い込んだら猛突進するタイプが多い気がする。大体みんな途中から人の話を聞いていない。




そのままでかい診察室に案内され、無駄に豪華なソファで医師から細かい説明を受ける。



「大便は三日分欲しいので、出来れば連日採取して改めて病院の方までお持ち下さい」

「はい……。ねぇ、顔知ってる職員や昔の学友に自分のおしっことかうんこ検査されるのふつうに嫌なんだけど」


「大枠では医療関係者なのですから、タリア様はそういうのにもう慣れているのかと」

「いや私自分で自分の検査出来るし」


「良くないですねそれは。いくら正解が分かっても、自分の目で見た自分のデータなんて客観性ゼロじゃないですか。今回から慣れるべきです」

「はいぃ……」



穏やかそうなおばさん先生に、ニコニコと窘められる。雰囲気の割に容赦がない。




……そこからまたでっかい機械に入れられての検査と、不摂生を叱るお説教からようやく解放されて再び待合室に戻ると、何やら知らないおじさんが第二王女のお姉様にペコペコと謝罪しまくっている場面だった。なんだろう。



「申し訳ありません…!まさか賢者様のご自宅を知っていて直接乗り込むなどと…!!」

「ああ、シンシアちゃんの上長か。大丈夫だし、本人はもう帰ったよ」


「うおお、もう、若いエリートってやつは本当に!あの、タリア王女、大変、大変申し訳ありませんでした!!」


「小さい頃の友達が心配して駆けつけてくれただけだからね」



「いえ、自分が早く判断して正式に届けるか勇者様の個人情報を守るか決断していれば。ああ、どうにか勇者様にも謝罪を…」

「いやアイツはいいよどうでも」

「お前が勝手に決めるな。まぁ全然いいですよ」


「あれヤマト?何で居るんだ」

「あ、え、この方が勇者様…!?ですか!?申し訳ありません!ごめんなさい!」



なんか普通に入口の方から勇者が歩いてきた。どうやら先にマリウス王子と合流して色々話してから来たようで、警備の人らがワチャワチャしながら通したっぽい。




「まぁでもさ、古い慣習に囚われず、自分で仕事を探し、自分の判断で動ける人間を求人してますよね?」

「は、はい?まぁ、その、よくある綺麗事で……」

「求人通り慣習を破って自分の判断で自分の仕事しただけなんですから、上長だろうと現場の人が謝る事は無いですよ」

「破ったのは慣習だけじゃなくて法律もなんですよね!本当に申し訳ありません!」




ヤマトが恐縮しすぎている上長さんと話し始める。ほぐそうとしているのかも知れないが、なんか丸め込もうとしてるような気配もする。



「大丈夫。データ盗むのはマズいし、盗める程度のセキュリティなのもマズいけど、時系列を遡って俺のデータの研究フリー利用許可をマリウス王子が出してくれます。今回の事は最初から何も問題なんて無かった事になります」


「そ、そこまで!?」


「俺って、勇者の力で何かあると勝手に回復するんですよ。って事は魔力の悪影響って既に判明している結石よりもむしろ勝手に治されて気付いていない部分のほうが怖いかも知れないっすよね。多くの研究者に公開して多角的に調べて貰ったほうが実際安心だ」


「……!」



ぺしょぺしょに萎んでいた上長おじさんの雰囲気が徐々に重要課題を任された研究者の顔つきになっていく。




「ちなみに俺は元の世界だと身長体重は平均より僅かに上、健康診断は同年代と比較して特別な事はほぼ無し。学力も平均よりやや上程度。筋力は一般人より優秀で格闘家としては平凡。痛みにちょっと鈍いのと格闘技でのケガとか軟骨の減り等はありますが、日常生活では座り仕事が長い時の切れ痔くらいしか自覚症状は無いです」


「……そ、それを今自分に教えるという事は!」


「そういうことです。まぁ異世界の平凡な人間のデータだと確定した上で、俺の為にも分析の方に尽力して下さい。タリアのやり方に習って、俺もあなたを頼るので今回は貸し借り無し。……この問題に自力で気付いたらしい貴方と学友さんの二人には、かなり期待して頼りたいんです。秘密にお願いしたい部分まで」


「は、はい!秘密……い、いや、やはり賢者様と勇者様が組むと凄いですね!?よもやそこまで!」




おかしいな、まだヤマトとはこの件の会話をしてないと思うんだが。イケメン王子に聞いてきたのかな。むしろ秘密ってなんだ?


でも私の手柄でもあるという事になっているようだから一旦沈黙して流す。無駄に手柄を手放すよりしれっと通す。




……その後もなんやかんやと上長おじさんを励ましたり頼る雰囲気を出して、しまいにはバイオ研究者仲間みたいな顔つきで仲良くなって、相当元気にしてから機関に帰らせていた。



もともとなんかそうやって簡単に仲良くなるシーンは良く見てきたので、別に今回もただそれだけの事なのかも知れないが、本気で重要だと思っているような気配も感じた。



定期的に次の検査に呼ばれるので、断片的にしか話を聞けないから何かが違うと断言できるほどでもないんだけど、ヤマトがただ良心で庇ってるんじゃなく、本当に分析が大事だだから些細な事で躓いて欲しくないみたいなガチの感じがあった。





#############################




ようやく検査が終わって、帰路の馬車。



「異世界でも病院は緊張するから苦手だ」

「ヤマト、お前今まで何してたんだ?ノームさんとの話はどうなった?」



大きな馬車内は私と隣のアネモネ、正面のムネメお姉様が広々と寛いでいるのだが、屋根にヤマトが飛び乗ってきた。


普通なら馬とか御者さんがビックリして大変な事になりそうなものだが、この特別な加護がついている馬車とそれに慣れた御者さんはもはや国境付近からの顔なじみであり、なぜか馬までやたらとヤマトに懐いている。もはや突然飛び乗ってきても嬉しそうに嘶くだけだ。



今は居ないけど、多分ウラニアならこの馬の性別がオスな事に反応していたと思う。ここまでオスだけに人気の男もそうそう見ないし、世の中にはとんでもないジャンルのエロ漫画があるので、あまり油断しないほうがいいぞお前。あらゆる種族のオスにモテてる。




「ノームもこの世界の人も善良過ぎて、俺だけセコい気がするんだよな」

「どういう事だ?何を聞き出した?」


「秘密にすると約束はしたが、あの設定なら俺が秘密をバラす必要も無いんだ。魔力のある場所で話しちゃダメなんだよ。実際どういう流れなのかよく分からんが理想通りの動きになってるし」


「どういうこと?何を言ってるんだ?」


「邪竜の曖昧さとか、俺が『恐竜』の名前を出した辺りから、タリアの力には隠された細かいルールがあるんだろうなって思ってた話」

「????」




ヤマトの話がいつも以上にややこしくて、何言ってるのか全然分からん。


馬車の窓から白フクロウが入ってくる。またウラニアに改良してもらったらしく、可愛い仕草で手紙を咥えて持ってきた。こういうの好きそうだもんなアイツ。でもこの距離なら手で渡せよ。




「タリアちゃん、それは異世界の絵文字?ちょっと簡単には読めないわね」

「あ、そうか。未知の文字でもすぐに完全な翻訳が通るのは勇者か私くらいなのかな?」

「勇者ってちょっと便利すぎるわね。もっと確実に禁忌にすべきだったわ」



ムネメお姉様の禁忌評価にアネモネがぶんぶん頷いている。



再び上からヤマトの声が響く。



「とりあえず昔の賢者が大問題を起こしたっぽいのはほぼ確定なわけじゃん」

「そうだな。迷惑な先祖だ」


「俺の知ってる賢者って自分ではよく分かって無くても結果的に正解を引くじゃん」

「そうだな。天才は天才にすらよく分からない」


「もし昔の賢者が元凶で、同じ能力を持っていて、死者も復活出来るならさ、敵は不死身のタリアみたいなものって事だろ?思ってたよりキツイぞ」




一瞬怖い表情で私に視線が集まる。まぁ確かに私が敵だったらとても大変だろう。



「……いや。悪いけど私は昔の賢者より確実に強い。多分特定の力を持つものを賢者と呼ぶだけで、賢者同士の個人差は絶対にある」


「おお?言うじゃないか。過去の賢者が不死身で、同じくなんでも正解を引き当てるチーターでも、タリアなら勝てるって言うんだな?」



「無効化魔法を編み出した私には、魔法の封印も魔法の不死も意味が無い。そして魔法で不死化してる者に無効化魔法は撃てない。死んじゃうもんな。スポーツと同じだ。この条件のままなら勝負はもう私達の勝ちで終わってる。過程はともかく結果は決まりだ」


「なるほどな……不死にショックを受けてた時はちょっと警戒したが、やっぱりそこらへんは大丈夫なんだな」




仕舞おうとした紙をフクロウが回収して飛び立つ。どうやら誰にも見せずヤマトが自分で処分するようだ。



……あの紙には、『秘密裏に加護と魔力の悪影響を調べるつもりだった』とだけ書かれていた。


これが秘密にしたいことだったというのが鍵なんだろう。話を逸らすように前の賢者の話題を出してきた。



こちらからすると私の学友とその上長が普通に問題に気付いただけなので、今更秘密と言われてもな?という感想だが、それを知った上でこれを伝えたという事は……



……つまり、ヤマトはこれが偶然ではないと疑っているわけだ。自分がノームさんから聞いた情報を元に、事態が動いたと。



私が主導では無いのに、賢者の力によるものだと思っていると。


いくつかの答えが、一斉に脳裏を駆け巡る。




「……呪文って誰に唱えているんだろう、か」

「うわ」「魔力よ?急にどうしたの?」




上からヤマトの引いた声が聞こえて、アネモネには即答される。




「いや、その、あれだ。昔の学友に会って、小さい頃に誰かと話した疑問がふと浮かんだんだ」


「そうなんだ」

「大嘘ねタリアちゃん。勇者と隠している何らかの重要案件がそれなのね。でも割とよくあるテーマよ?重要視するまでも無く、魔力が反応するのだから聞いているのも魔力だわ」



ちょろいアネモネは普通に納得してくれたのにお姉様がそれを砕く。


こういう話に過剰な反応をしがちなヤマトが何も言わないという事は、これが答えで、まだあまり公にしたくも無いのだろう。



曖昧に頷いて話を終える。




……それから少しの間、無言の時間とか他愛も無い雑談があり、不意にヤマトが上からノックしたあとよく分からない頼み事をしてくる。



「これは別に秘密って言われてないから普通に頼んでおきたいんだが」

「なんだ?」



何気ない口調だが、妙な溜めがあって重要だからちゃんと聞いてくれという意思を感じる。



「『風の英雄』、『星の巫女』……あと、『魔王』の古い文献を探して欲しい。ついでにそういう古い本に細工がされているかも確認してくれ」


「なんか魔法使いとか魔女の名前が変わってるし変なの増えてるじゃん」

「敵から見たら悪魔で、味方から見たら英雄みたいなよくある話っぽいぞ」


「ほーん。じゃあ魔王ってのも歴代の賢王とかそういう感じで調べろと?」

「いや、あまり決めつけず広く探して欲しい。ちなみに、俺の世界で一番有名な魔王の定義は、勇者に倒されるラスボスだ」


「……ふーん」




言うだけ言ってヤマトはどこかに飛び立つ。


あれ?一瞬だったから鑑定しきれなかったけど、あいつゴブリンに何か色々変な魔法装備を渡されてる気がする。今自分の魔力を使わなかったような。



「……意味分かってる?タリアちゃん、ダークナイトさん」

「え?」「はい?」



さっきからヤマトが秘密にしようとしている部分の方が気になっていて、頼まれ事は全然何も考えてなかった。



「知ってる神話の有名キャラの聞き慣れない別の呼び名。聞いたことのない魔王。本に細工。あの勇者が警戒している内容は結構重いかも知れないわよ?わたくしも人を……いえ、国王を動かすから、ダークナイトさんも教会を動かしなさい」


「は、はい!」


「タリアちゃんは引き続き自宅で休んで貰うけど、細かく意見を聞きに行くし、何か見つけたら毎回持ってきて鑑定してもらうわ。ちゃんと役にも立って貰うから、今度こそ慌ててうろちょろ動かないで。体力の無い自分ではなく、わたくしや王子を動かしなさい」


「う、うん……」




やばい、よく分からないけど結構色々周りが大事な案件で動き始めてる気がする。私だけ取り残されつつあるような。



ウラニアは常時引っ張りだこで忙しいし独自の人材ルートも持っていて裏表の活躍度合いが凄い。天才美少女なのも被ってるし。


勇者はしれっと頭脳系の活躍もしていて、マリウス王子はもはや国の重要な手続きをぶんぶん回している。


そしてアネモネは国単位を超えて教会を動かせる上に最強じゃん。



で、私は家で鑑定士というか、何も持ち込まれなかったらずっと暇だよね?

まずいよ。それはまずい。



大事なお姫様扱いは気分が良くて素晴らしい事なんだけど、将来に向けての評価は何も得られない。今が楽な代わりに未来が閉じていく。箱入り娘に甘んじているような人間なんて、とてもじゃないが王の器には届かない。



私が無駄に心配させすぎてしまったからこうなった。状況を打開しなくては。




「……まぁタリアちゃんは三日間ちゃんとウンチして病院に届けるところからね。あなた便秘大丈夫なの?今のところタリアちゃんの一番大事な仕事はウンチよ?」


「うわ忘れてた!嫌だ、うわ、本当に嫌だあ!絶対飛ばしていいって!毎日うんこしたか確認されたく無さ過ぎる!!」




取り残されるどころの問題じゃなかった。私だけ!私だけが!なんか、こう、なんだかなぁ!!


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