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家で休んでても仕事は来る…



「サキュバス達が水商売を申請ぃ?なんで私に??」



実家でグダグダと休養していた私にじわじわ国からの雑用が届き始めた矢先、絶対私に聞かなくても良いだろって案件の判断を任される。



「いや、そのぅ、僕も反応しづらすぎて…」



そしてその案件をわざわざ手渡しで持ってきたのはマリウス王子。イケメンに何やらせてるんだ。いやイケメンだからギリギリ許されると踏んだのだろうか。


こいつ、どうやら家の周辺地域を兵と連携して警備してくれているらしいのに、招いても「簡単にあがるわけには」とか言ってやんわり断りまくるので、事あるごとに門の外で立ち話する羽目になるんだよね。逆に礼儀がおかしいだろ。



そもそもどう考えても第一王子の仕事では無いんだけど、私がゆっくり休めるようにと今まで以上に私絡みの事務仕事まで頑張った結果、セクハラの伝言をやらされる羽目になったようだ。


なんかこう、基本的に不運だよね王子。とても申し訳無さそうに水商売の申請書類を手渡してくる。




「待ってタリア。誰か飛んでくるわ」



一応ノームさんを警戒したボディガード役らしいアネモネが、寝巻きのまま私の部屋の窓から飛び出してくる。また勝手に侵入して昼寝していたらしい。


うちに馴染みすぎて完全にだらけきっている。




「ふはははは!手続きにミスがあった!ごめんなさい!!」



ドズーンと凄まじい着地音を響かせながら現れたのはサキュバス格闘家のライラさん。


背中にジェットパックみたいなのが見えたけどサキュバスの翼ってあんなんだっけ。




「どういうミスをしたら私に水商売の申請書が届くんだ?」

「本当は勇者と相談したかったのだ!」

「あいつまだサキュバスに色々求めてるのか!」



あいつがしれっと監修に紛れ込んでいた『爆乳ムチムチふとももモデル』と『小柄スレンダーボーイッシュ日焼けモデル』のサキュバス人形は、試作説明会の時点でとんでもない数の注文になっていたと最近聞いた。


他国からも注文と素材提供が殺到しているらしい。カス。



「いや、大儲けのお礼も兼ねて、勇者の健康も踏まえた水商売なのだ!」

「あいつのそっちの健康はむしろ多少損なってもいいと思うよ」

「違う違う!これ!」




ライラさんは爆笑しながら謎の筒を見せてくる。これアネモネが大好きな魔力を濾過する水筒では。




「まぁこれは溶けたものだが、本当は水商売では無く氷商売の予定だった!」

「ヤマトへのお礼に、氷商売?……あー、魔力の少ない濾過済みの氷って話?」



ガハハハと爆笑しながら私とアネモネに水を見せるライラさん。



「タリア、濾過よりもっと簡単でもっと完全に魔力が抜けるって話みたいよ?」



なぜだか少し不満そうにアネモネが答えを教えてくれる。どうやら濾過を愛していて上位互換が嫌だったらしい。



……なるほどね、サキュバスが魔力を吸い取った後の水を凍らせて売ると。それは確かに濾過よりもっと直接魔力抜きの水が作れそうだ。


地味に思いつかなかったな。確かに私に相談が来そうな水商売だ。




「水商売ってほんとに水の商売ね。紛らわしいわ!」

「申し訳無い!!イメージがな!我らのイメージが!!」



なんか別の意味で欲しがりそうなやつが居そうで嫌だが、これが本当に流通できるなら使い道も多そうで気になる。料理とか健康とか色々だ。でも絶対余計な方面にも売れる。



「さすがに我らも食べ残しを一般流通させる気は無かったのだがな!勇者が絶対売れると!!」

「あいつの性癖はさぁ!」


「前に我らの街に来た時から、既に話は動いていたみたいだぞ!元々はウラニア嬢が勇者の健康を気遣っての相談からだったし」



なるほど。あいつまた人の善意を。なるほどね。


ウラニアは本当に常時忙しいので今日は居ない。となると今ここで詳しい話を聞けるのは一人だけになるようだ。



「マリウス王子、ちょっとこっち来て。ちょっと話を聞いてもいいか?」

「僕は違いますよ!?本当にただの善意で!!」

「『僕は』って事は、ただの善意じゃないヤマトの動きも知っていたわけだ」

「しまった!!」




客人達を強引にお招きする。特に王子には詳しいお話を聞かせて貰わないとな。じっくりとね。




##############################




私の家に自分の兵を入れるべきか迷ったイケメン王子は、外の警備を任せて単身自分だけが我が家に入ると決断した。



庭で話すには不適当な内容なので、広い客室に招き入れられてソファに誘導された王子は、食堂のおばちゃんみたいな見た目の第二王女が中で待ち構えていた事に絶望し、小声でヤマトに助けを求めていた。



まぁね。王女二人、聖女、サキュバス、女性メイド達に男一人で取り囲まれているからね。ヤマトみたいに欲望のまま喜ぶわけにもいかないだろうしね。


可哀想。嘘をつく余裕も無いだろう。だから素直にヤマトの悪行を全部吐け。




──そんな感じで、ただただ素直に質問に答え続けるしかない第一王子の危機を救ったのは、更に別の来客だった。


色々と警戒中のタイミングでの飛び込みだからか若干不穏な雰囲気になりそうだったので、また私が直接門の外まで迎えに行く。警戒のせいで逆に私がチョロチョロ動く羽目になってるんだよね。なんでだよ。本末転倒。




「申し訳ありません、どうしても緊急でタリア様にご相談を……!」



どうやら本当に緊急案件らしく、黒髪ポニーテールのその女性はまるで研究所からそのまま飛び出してきたような白衣姿で、様々な荷物と付箋だらけの書類を抱えている。


熟練みたいな服装の割にけっこう若いというか、私と同年代くらいの……



「……あれ?シンシアちゃんだよね?」

「っ!?」



動揺して女性が落とした書類をアネモネがさらっと全て空中で受け止める。かっこいい。いつの間にか普段着に着替えている。



「シンシアちゃん、この達人みたいな金髪ふわふわ美少女は元聖女でダークナイトのアネモネ」

「初めまして、タリアの妻よ」

「はじめ、まし、て!?えっ、どういうことですか!?」


「全然妻じゃない。で、アネモネ、この人は同学年のシンシアちゃん。幼馴染ってほど知り合いじゃないけど、同じ場所で勉強していた学友的な感じ。まぁ私途中で卒業しちゃったんだけど」


「あ、あの!?タリアさん…タリア様!私のこと覚えて……!?」




凄い、ぱっと切り替えてこっちに食いついてきた。聖女のダークナイトの自称妻より私の方が気になるパターンあるんだ。




「頑張って話しかけてくれてた学友を忘れるほど薄情じゃないぞ私は。まぁ子供の頃は仲良くなるの凄く下手だったけども」


「あ!?しまっ……!?そうよね!?逆に失礼よね!?私、ごめんなさい!」



変わらない学友の姿に、自分の失敗も色々と蘇ってきてちょっと顔が色々な意味で熱くなってきた。




「まぁまぁ。何か緊急案件なんでしょ?中で話そう」




あえて外で一旦紹介しあったのは、周囲で若干ピリッと警戒している警備っぽい人達に知り合いだと伝える意図もあり、どうやらそれを汲んでくれたようで和やかに学友を家に招く空気になっていく。


まぁ本当は警備ってピリッとしたままの方が正しいと思うけど、他ならぬ賢者の判断だからさすがに信じて安心して欲しいよね。


というか警備自体要らないと思う。



客室では第二王女による厳しいセクハラ質問が第一王子に続けられていて、その光景にシンシアちゃんは絶句し、更に女性が増えたことに第一王子の方も絶句していた。


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