例えば鬼の子が
彼の日常は突然奪われた。以前から送られて来ていた幾多の刺客を跳ね返し、最強を誇っていた鬼の一族その子ども。彼はまだ幼く、参戦などかなわなかった。仲間が殺されていくのを黙って見ているしかなかった。殺戮者は女子どもの境無く、皆殺しにしていった。そして、最後に彼の前にやってきた。
「お前で最後みてぇだな」
彼は見上げた。恨みのこもった目で。
「ほう、良い目をしてるな、お前」
「どうしてだ!どうしてみんなを殺した!」
「弱いからいけないのだ。弱いから殺される。彼らが強かったならば、俺を殺しお前達は生き残れただろう。それができない弱虫だから殺されたのだ」
彼の目に恐怖は無かった。ただ純粋な怒りを湛えていた。
「殺してやる!殺してやるよお前!」
「やってみろ。だがよく考えてみろ。お前は弱い、俺は強い。どっちが勝つかなんて目に見えている。そこで一つ提案がある」
「なんだ!今更なんだ!!」
「魂喰、あの刀を使って強くなれ。俺への恨みを原動力として、一騎当千の強者となれ。何年かかってもいい。とにかく強くなれ。勝負はそれからだ」
「なんだと!ふざけるな!今すぐ殺させろ!」
「今のお前では俺に決して勝てない!ならばお前は強くならなくてはいけない。いいか?お前の宿敵の名を言おう。俺の名は聡士!黒岩戸聡士!お前が倒すべき仇敵の名だ!忘れるな!恨み続けろ!必死で強くなれ!強くなければ生きる意味が無い!」
殺戮者は去っていく。鬼はその背中に向かって叫ぶ。
「覚えていろ!必ず、必ずお前を殺してやる!仲間達の無念を晴らす為に!!覚えていろ!!!」
彼は魂喰を手にした。そして、鬼ヶ島に上陸した三人の兵士を殺した。その瞬間、彼ら三人の記憶、知識、運動能力、戦闘技術の全てが体に入ってきた。
「へぇ…こりゃあ良い。最高だ。だがまだ足りない。もっとだ、もっと、沢山殺さなきゃな。強くなくては生きる意味も無いのだろう?やってやるさ、待っていろ」
鬼は復讐を誓った。




