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適性試験

「エリス草合計20本の納品確認致しました。本登録に移りますので、こちらの書類に記入してお待ちください」青


渡された書類に書かなければならないのは、名前、年齢、魔法適性、武器種だ。

名前や年齢はもちろん、魔法適性も王宮で鑑定を受けているので問題なく書ける。問題は武器種だ。ハル達は誰一人として武器を持っていない。


「あのー、俺達一人も武器持ってないんですけど、この武器種の欄ってどうしたらいいですか?」

「そちらの欄に書いた武器を、本登録後に協会が支給いたしますので、お好きな武器種をお書き下さい」青


武器の支給。今日の宿代すらも持っていないハル達からすれば、ありがたいことこの上ない。各々が自分の使いたい武器種を書いた。


「本登録が完了しました。ライセンスの発行には、時間がかかりますので、その間に適性試験を受けて頂きます」


『冒険者適性試験』

冒険者協会に選ばれる試験官をつれて、協会が決めた依頼を受け、戦闘能力や索敵能力を測る。試験の結果によっては、パーティーの結成時などに役立つ称号などがもらえる。


「お前らの試験官を務めるアランだ!よろしくな!」青

「よろしく」

「お前らに受けてもらう依頼だが、小鬼(ゴブリン)退治だ!」青

「小鬼………」


小鬼―――薬草の採集依頼でハルを苦しませた魔物。この世界の人間にとっては小鬼は弱い魔物だが、ハルにとっては恐怖の象徴であった。ハルの体が震えている。


「武器をお持ちしました」


受付嬢が武器を持ってきた。日本では絶対に見ることのない武器に、ナツキ達は目を輝かせる。各々が書類に記入した武器を手にとり小鬼退治へと向かった。


「そういえば、お前らのことは親父から聞いてるぜ!裸で街に来たんだって?」青


森に入った頃にアランが思い出したように話しだした。

ハル達が裸で街に来たことを知っている人間は一人しかいない―――モランだ。アランは親父から聞いたと言っていた。アランはモランの息子らしい。


「200m先、小鬼がいる」青

「足音的に20匹くらいだと思う」青


小鬼の存在に気づいたナツキに続いて、シュウが小鬼の数を言い当てる。


200mほど進むと、本当に小鬼が20匹程いた。

アランは驚いていた。シュウの足音と言う言葉を信じていなかったからだ。数百m先の足音を聞けるほどの聴覚を持っている人間などいるはずがない、アランはそう思っていた。


「すごいな、本当にいたぞ!索敵スキルでも持ってるのか?」青

「持ってないよ」青


アランはさらに驚く。索敵スキルを持たずに、200m先の小鬼の位置を特定し、その数まで正確に把握することは不可能だからだ。


「どうやって仕掛ける?」青

「俺に任せてくれ」


そう答えるとハルが前に出る。

その直後、小鬼達の頭が弾け飛んだ。ハルが小鬼を見た時に抱いていたのは、恐怖ではなく殺意だった。トラウマを克服したのではない。それは、かつて自身を苦しめた小鬼を見たことによって、己の身に起こったことがフラッシュバックしたことへの自己防衛だった。


「困ったな………」


アランはそのような言葉を洩らしてしまう。当たり前だ。これは全員の戦闘能力や索敵能力を測るための試験なのだから。このままでは試験の意味がなくなってしまう。

そんなことを考えている時、トウヤがアランの背後を指して言った。


「そこ、誰かいる」青


トウヤの指が示す先には、軍服を着て怠惰した黒髪の少年が立っていた。

誰も油断などしていなかった、できるはずがなかった。油断がハルの身に起こった悲劇を生んだのだから。

それなのに、こんなに近くまで近づかれた。


「!?誰だお前」青

「気配は完全に殺してたはずなんだけどな〜なんで気づいたの?」青


驚いた様子で質問するアランを尻目に少年がトウヤに質問した。


「名前も知らない奴に教える義理はないね」青

「それもそうだね!」青

「おい!無視するなよ!」青


アランが少年とトウヤの会話に割って入る。


「邪魔だよ、お前」青


少年はそう言った直後、一瞬にしてアランの前へ移動し、アランを蹴り飛ばした。


「ガッ」


強い力で木に叩きつけられたアランが気絶する。


「驚かせてごめんね。僕はクロノ。君たちを殺しに来た」青

「王からの刺客さ」赤


『王からの刺客』クロノがその言葉を発したとき、オーラの色が赤に変わる。

それは、王の他にハル達の命を狙う者がいることを示していた。


「何者だ?お前」

「さっきも言ったでしょ?王からの刺客だよ」赤

「白々しいことを。王からの刺客じゃないんだろ?お前」

「なぁんだ、バレてるんだ」青


空気が変わった。目の前にいるのは間違いなく少年のはずなのに、まるで魔王を前にしたかのような威圧感を発していた。背筋が凍るというのはまさしくこういうことなのだろう。


「お前は何者で、何故俺達を狙うんだ?答えろ!」

「そんなこと……これから死ぬ君たちが知る必要なんてないだろ!!」青


クロノが視界から消えた。予備動作もなく、音もなく、一瞬にしてクロノはトウヤの目の前に移動していた。


「殺す前に聞いておきたいんだけど、なんで僕の存在に気づいたの?」青

「索敵スキルだ」赤

「嘘つくなよ」青


トウヤの左腕が折られた。まただ、またクロノが瞬間移動をした。

なにかタネがあるはずだ。人間が目に見えない程の速度で移動したら、踏み込みの時点でものすごい衝撃波が出るはずだから。


「さっきからどうやって移動してるんだ?」

「気になる?いいよ冥土の土産に教えてあげる。僕はね、時間を止められるんだ」青


オーラの色は青。嘘はついていないようだ。

クロノは止まった時間の中で移動していたから、まるで瞬間移動したように見えていたのだ。なら、何故止まった時間の中で何者できない俺達を殺さないんだ?


「時間を止めれるなら、そのまま俺達を殺せたはずだろ。何故そうしなかった?」

「別に、ただの優しさだよ」赤


赤、つまり嘘。トウヤの腕をへし折った時、わざわざ時間が動きだしてからへし折っていた。

止まった時間の中を自由に動けるだけで、止まった者たちに危害を加えることはできないのか?だとしたら勝機はある。

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