暗殺者
「いるんだろ?出てこいよ。さっきからずっとついて来てんのはバレてんだからさ」
スッ
フードをかぶり、口元を隠した男女が現れる。
意外だ。尾行がバレた時点で逃げると思っていたが、まさか素直に姿を現すとは。よほど腕に自信があるか、油断しているらしい。
「お名前、お聞きしても?」
「図に乗るな。貴様らに名乗る名など無い」青
うん、対話無理だわこれ。無理無理絶対無理。殺意増し増しの目で睨んでるもん。仕方がない。賭けに出るとしよう。
「お子さん、元気ですか?」
「俺達に子供はいない」赤
賭けに成功した。天は俺に味方しているようだ。この二人には子供がいるらしい。だが、どうしたものか、こいつらの子供の顔や名前はおろか性別すら知らん。
(ハッタリだ。こいつらがマリアのことを知っているはずがない)
「へぇ。マリアちゃんていうんだ」
「……嘘をつけ」
習がそう言った。マリアって誰だ?彼らの子供の名前か?なんで知ってるんだ?だが、明らかに動揺している。これはチャンスだ。一気に畳み掛けよう。
「マリアちゃん、王宮にいたでしょ?」
「いない!!!」赤
「でも俺が鑑定眼で王宮を見たときには、あんたらと同じ姓のマリアって娘がいたぞ?」
「ッッッ!!!口からでまかせを!!!」
もちろん嘘だ。俺の目は、嘘を見分けるだけで鑑定眼なんてものは存在しない。だが、この二人には脅しが効くこと、娘が王宮にいたことが分かった。これなら勝てる。
「俺の魔法適性知ってる?闇属性なんだけどさ、印を付けた相手の影にワープする魔法があるわけよ。マリアちゃん、印つけてるけどどうする?」
「嘘をつくな!!そんなことあるはずないだろう!!」赤
もちろんこれも嘘。ワープする魔法なんて知らない。なんなら、この世界に来てからまだ半日も経っていない。闇属性魔法なんてせいぜい自分の影を少し動かす程度だ。だが向こうはそれに気づいていない。上手く信じさせることに成功したようだ。
「そんなこと言っていいの?マリアちゃんのとこ行っちゃうよ?」
「くっ!殺せ!」青
「さっさとやりなさいよ!」青
「やだ」
マジかよくっ殺かよ、おっさんのくっ殺とか見たくねぇよ。誰得だよ。なんか奥さんの方も覚悟決まってるみたいだし、これじゃあこっちが悪者じゃん。最低な言動をしてる自覚はあるけど……。
「言うことは何でも聞く!だから娘の命だけは助けてくれ!」青
「じゃあ、俺の質問に嘘偽りなく答えろ。」
「………分かった」青
さて、何を聞こうか。なんか色々と知ってる風に話しちゃったから何聞けばいいかわかんねぇ……。この国の名前とか聞いたら嘘がバレかねないし、王の目的とかを聞くしかないか。
「勇者召喚の目的は?」
「知らない」青
「俺らを殺しに来た理由は?」
「王の命令だからだ」青
「王直属なのか?」
「そうだ」青
王の目的は知らないか。できれば答え合わせしたかったんだが……。彼らは下っ端なのか?それとも信用されていないか。ん?待てよ?そもそも何で二人だけなんだ?召喚されたばかりとはいえ、一応は勇者が四人だぞ?二人で事足りるくらい強いから?ああ、もう、わからなくなってきた。
「娘が王宮にいる理由は?」
「我々は、暗殺者という仕事柄恨みを買うことが多いから保護してもらっている」青
「俺達を見逃してくれる?」
「………殺せ」青
「娘の命がかかってるのに?」
「……………殺せ」青
無理だ。彼らも、その娘も殺すことはできない。その手段も、度胸も持ち合わせていない。王都を出るときに、武器どころか路銀も貰っていないのだ。殺害方法は素手しかない。絶対に嫌だ。なら、どうにかして王を裏切らせるしかない。使うなら、娘か………。
「娘が王宮に保護されてるって言ってたけどさ、それってホントに保護かな?人質じゃなくて?」
「そんなはず………」青
「お前ら優秀な暗殺者なんだろ?そんな人間を裏切らせないために、娘を手元に置くってのは理にかなってると思うぞ。」
「ありえない………」青
「じゃあなんで、勇者召喚の目的とか、何も聞かされてないの?王直属の人間なのに、何も知らないとかおかしくない?………もうわかっただろ?用済みなんだよ、お前ら」
「……嘘だ」赤
弱々しくそんな言葉が発せられる。オーラの色は赤。王に対し、疑念を抱いている証拠だ。
「さっき、殺せとか言ってたけどさ、お前らが死んだら人質の価値なくなるよね。最初からお前らは、俺達を殺すか、娘を見殺しにするかしかないんだよ」
「そんな………どうすれば……」青
「死んだことにすれば?あんたらが死んだことにしたら、娘の警備も手薄になるだろうし、二人の力なら娘を連れて逃げるくらいできるでしょ」
「わかった。………ありがとう」青
そう言って彼らは去って行った。嘘がバレれば、また殺しに来るだろう。おそらく、そのときは話も聞いてくれない。だが、数日は時間を稼げるはずだ。今のうちに逃げよう。




