旅の始まり
「我々がご同行できるのはここまでです。旅の安全を願っています!お気をつけて!」青
王都の外に出たところで、ここまで案内してくれた衛兵に告げられる。彼らは何も知らないようだ。王都の入口から数百mほど歩いたところで冬弥に聞かれた。
「これからどうするんだ?本当に魔王を倒すのか?」
「バカ言え!トンズラこくに決まってんだろ!」
そう、最初から魔王を倒す気なんて一切ない。なんなら、この国がどうなろうがどうでもいい。
王都を出て1時間ほど歩いたところで、急に親友達の顔つきが変わった。
「つけられてるね」青
「二人組だな」青
「男女のね」青
「は?」
俺はそれを聞いて思わず後ろを振り返った。誰もいない。馬車が走れるように整備された一本道だ。人がいればすぐにわかる。だが嘘はついていない。彼らは何を言ってるんだ?
「どういうこと?」
「後ろから血の匂いがする」青
「俺らの他に二人分足音が聴こえる」青
「地面から走ってる時の振動を感じる」青
益々意味がわからん。周りは草原だ。隠れられるところは一定間隔で生えている道路脇の木ぐらいだ。それに、血の匂いに、足音、冬弥に至っては振動だと?わけがわからん。
「こっちに来てから鼻が利くようになったんだよね〜」青
「俺は耳」青
「こっちは触覚だな」青
「俺は目だな。ついでに嘘を見抜く能力」
なるほど。これで合点がいった。確かに、この世界に来てからやけに世界が鮮明に写る。俺の視覚が強化されたように彼らの五感も強化されたのだ。菜月は嗅覚、習は聴覚、冬弥は触覚か。
「それで?誰がついて来てんの?」
「わからない」青
「足音はかなり小さいぞ」青
血の匂いのする足音の小さい男女か、思い当たる節はある。おそらく、国王からの刺客だ。
「十中八九殺し屋だろうな。それも国王からの」
「国王からの殺し屋?なんで?」
「俺達が国王にとって邪魔だからだろ」
そう、国王にとって俺は邪魔な存在。王宮内で本来使えるはずのない魔法を使い、過去の勇者召喚について疑問を持っている。そのうえ独りよがりで、勝手な行動が目立つ。そんな人間邪魔に決まってる。
「この国の人間は俺達を自分達の都合のいいように利用したいんだよ。他国への侵略戦争とかさ、そういうことがしたいなら、自分達だけで行動する奴等なんて邪魔でしかない」
「なるほど……」
「それにさ、あの王様の言う事嘘ばっかりだったぞ」
「えっマジ……?」
「うんマジ」
魔王に侵攻もされてないし、女神様の神託もおそらく嘘。国は疲弊していないし、帰る手段もない。王の言葉は嘘が多すぎて、どこからどこまでが一つの嘘なのかわからない。
「つまり、この国は疲弊してないし、魔王の侵略も嘘。それなのに外に出られたら嘘がバレちゃうじゃん?それなら殺すしかないでしょ」
「今、尾行してきている二人もそのために来てるよ。俺らを殺してその死体を彼らの前に持って行き、外は危険だと思わせるために」
「それで、どうするんだ?」
「尾行者は今どのあたりにいる?」
「ずっと俺達の後方100m前後を維持してついてきてる」青
勇者の暗殺のために派遣された二人。潜在能力は勇者であるこちらが上だとしても、今現在の能力値で見ればあちらの方が圧倒的に上だ。こちらは、魔法も覚えたてで、筋力も一般人並。向こうは、どちらも一流と見ていいだろう。
「森に入るまでついてきてもらおう。そこで対話を試みる」
「無理だったら?」
「諦めよう」
「はぁ!?」
対話が無理なら諦めるしかない。熟練の暗殺者と一般人とでは、力の差がありすぎる。魔法もこちらはせいぜい水の玉を作る程度。レベル差がありすぎる。もらったばかりのゼ〇〇メでワ〇ルのカ〇〇ューに勝てるわけがないのだ。
「てかさ、なんで森まで行くの?ここでよくない?」
「相手は100m後ろにいるんだぞ?ここからコンタクト取ろうとして、逃げられでもしたら絶対に追いつけない。でも、森の中ならお前らの五感でワンチャンある」
「なるほど、理解した。」
「よし、いくぞ」
森に入って数十分そろそろいいだろう。




