勇者召喚
俺の名前は橘晴。年齢18歳。妹大好きな高校生。友人や家族に恵まれそれなりに楽しい人生を送っている。
「何見てんの〜?」
「今日の1限何だっけ?」
「後で数学の課題写させて」
彼らは菜月、習、冬弥。俺の幼馴染兼親友達だ。
「見てんのは妹の写真。1限は体育。課題は自分でやれ」
こんな無愛想な態度をとっているが、少なくとも一緒にいれて幸せだと思うくらいには大好きだ。そんなことを考えていると、思わず頬が緩んでしまう。
「急に笑顔になってどうした?」
「別に?幸せを噛み締めてただけだよ」
そんな会話をしていた時だった。
『まもなく2番のりばを電車が通過します。危険ですから黄色い線の内側まで下がってお待ちください』
ドンッ
誰かに背中を押された。
線路に落ちた。
電車が来る。
ああ、死ぬんだ。
「勇者様ッ!」
「えっ?」
目の前に知らない女性がいる。日本人じゃなさそうだ。そんなことよりも何で生きている?今さっき、俺は誰かに背中を押されて線路に落ちた。電車もすぐそこまで来ていた。普通に考えて助かるはずがない。どうやら今流行りの異世界召喚というやつらしい。
「晴ッ!大丈夫か?!」
聞き覚えのある声が聴こえて振り返ると、俺の親友達がいた。
「何でお前らまでいるんだよ……?」
「落ちそうになってる晴の腕を掴んだら一緒に落ちちゃって…」青
どうやら俺を助けようとして一緒に落ちたらしい。それに、召喚されたのは俺達だけじゃないようだ。
「ここどこ?」
「私、さっきまで学校に…」
皆、制服を着ている。おそらく同年代だろう。
そんな風に考えている間に王様らしき人が何か喋りだした。長々と回りくどく言っているが簡単に言うととこうだ。
·魔王がこの国を支配するために何度も攻め込んできている。赤
·度重なる侵攻によって国は疲弊し、民も苦しんでいる。赤
·そんな中、女神様の神託を受け、古の儀式である勇者召喚を行った。赤
·身勝手な願いなのは承知だが、力を貸してほしい。赤
·元の世界に帰る方法はこの国にはないが、数千年の時を生きる魔王や神託を下さった女神様なら知っているはず。赤
さっきから話している人の周りにオーラのようなものが見える。勇者特典的なやつなのだろうか?赤と青の違いがいまいちわからない。嘘を見分けているのか、相手の危険度を見分けているのか、少し実験してみよう。
「習、俺の質問に嘘をついてくれ」
「え?分かった」青
「年齢は?」
「82歳」赤
さっきまで青だった習のオーラが赤に変わった。どうやら嘘を見分けているらしい。だとすると、王様の話はすべて嘘だ。何故、嘘をつく必要があるんだ?嘘を見抜いていない体で質問してみよう。
「いくつか質問いいですか?」
「なんだ?」
「古の儀式って言ってましたけど、俺達よりも前に召喚された人がいるってことですよね?」
「そうだが、それがどうかしたか?」青
「勇者の子孫とかいないのか気になったので」
「勇者の子孫は存在しない。異世界の人間とこの世界の人間の間に子はなせないのだ」赤
勇者の子孫は存在する。おそらく子をなすことも可能。なら何故嘘をつく?信用できない早くここからでよう。
「この国にはそなたらの力が必要なのだ」青
「どうか力を貸してくれ」青
今度は本当のことを言っているようだ。
「みんな!この国の人たちを助けてあげよう!」青
俺達の他に召喚された奴等の1人が言った。他の奴等もそれに賛同している。制服が同じだ、おそらく同じ高校なのだろう。相当信頼されているらしい。
「えっ?やだ」
「どうしてだ?俺達は勇者としてこの国の人たちを助けるために召喚されたんだぞ?」青
「赤の他人のために命をかける義理はないね」
こいつは心の底からそう思っているようだ。絶対に分かり合えないタイプだ。だが、意見が割れたこれを理由に城から出られないだろうか?
「要は、魔王を倒せればそれでいいんだろ?」
「あ、ああ」赤
「なら俺は、好きなようにやらせてもらう」
「なら、せめて魔法の鑑定だけでも受けてくれ」青
「……分かった」
黒いローブを着た人たちが、水晶玉を持ってくる。言われた通りに手をかざすと、ステータスのようなものが表示される。俺の魔法適性は闇と水らしい。魔法の使い方を教えてもらったので試してみると、何もないところに水が現れた。ローブを着た人たちはめちゃくちゃ驚いていた。他の召喚者達も試していたが俺以外出来ていないようだ。
「じゃあ俺は行くけど、お前らは?」
俺は親友たちに聞く。
「行く」青
「行くに決まってる」青
「絶対行く」青
こうして俺たちの異世界での逃避行が始まった。




