第18話 迷子
「まてコラァぁぁぁぁ!!!!」青
「めっちゃ追ってきてるよ。どうする?」青
「人混みを突っ切る」
幸い、今日は人が多い。それこそ、子供は抱き上げなければ周りが見えないほどに。この人混みの中で人を見つけるのは不可能と言えるだろう。が、それはこちらも同じこと。結論から言って、ナツキ達とはぐれた。
「またしてもどこだよここぉ……」
薄暗い路地裏に迷い込んでしまった。まさか1日に2度も迷子になるとは……。もしかして俺って方向音痴なのか?そんなことより、早くあいつらと合流しないとだし、フィーアも探さないと。でも、連絡手段もないのにどうやって……。いや、方法はあるな。気乗りしないけど、やるしかないか。
「聞こえてんだろ、エリザベス」
「ええ、もちろん聞こえておりますよ」青
エリザベスが建物の影から出てきた。毎日のように見てるけど、やっぱり慣れないわこの姿。どうにかしてシルフみたいな人型になれないかな。
「お前の眷属でナツキ達を探してくれ。あと、できれば俺のところに連れてきて」
「承知致しました」青
「ヒェッ……」
エリザベスの返事と共に、建物の影から大きめのヒラタクワガタくらいの大きさのGが大量に出てきた。本当に鳥肌が立つくらい気持ち悪い。なんでこんなのが精霊やれてるんだよ。
まぁ、それはそれとして俺はもう待ってるだけだし、さっきのおもちゃ屋辺りに戻って―――って俺今迷子なんだったな。こうなったら、迷子ついでに露店でも見て回って、このお祭りを楽しむとするかな。
「にしても、何の祭りなのかねぇ」
「おや、お兄さん。この町は初めてかい?」青
「え……ええ、まぁ……」
知らんおっさんに話しかけられた。急に後ろから話しかけてくるからさっきの奴らかと思って逃げそうになったぞ。親切なんだろうけど、俺ってそんなに「初見です」みたいな雰囲気醸し出してたのか?
「これって何の祭りなんですか?」
「この町ではな、新月の夜に神が降りてくると信じられているんだ」青
へー、じゃあ今日はその神をお迎えするための祭りってことかな。そんなめでたい日にこんな騒動が起こってるのは何とも言えない気分になるけど。
「今日はその前夜祭だな」青
「前夜祭かよ」
「おや?あなたは先ほどの」青
「どうも、早い再会ですね」
さっき俺を宿まで連れて行ってくれた爺さんに再会した。
「お久しぶりです、ドワイトさん」青
「ええ、お久しぶりです」青
この爺さんが犯人候補第一位の司祭ドワイトだったの?なんで俺はさっき名前を聞かなかったんだろ
「あ、ドワイトさんって言うんですね」
「そういえば名乗っていませんでしたね。はじめまして、この町の教会で司祭をしております」青
「ドワイトと申します」赤
赤。つまり嘘。偽物?でもおっさんが先にドワイトって言ってから爺さんが名乗ったよな。つまり、少なくとも町の中ではドワイトで通ってる。なら偽名?いや、影武者の可能性も0じゃないよな。ダメだ、頭こんがらかってきた。もういいや、後でこのドワイト(仮)のことも探ってみよう。
「これはご丁寧にどうも、僕はハルといいます。よろしく」
「ハル…」青
俺の名前を聞いたドワイト?の顔が一瞬強張った。何故、強張ったのか。1つ、考えられることがある。俺の名前をさっきのガラの悪い兄ちゃん達から聞いた可能性。もし、これが本当ならこいつは黒だ。
「本日2度目になるんですけど、迷子なんで道案内してもらってもいいですか……?」
「ええ、構いませんよ。どちらに行かれるんですか?」青
「おもちゃ屋ですね」
「おもちゃ屋……何かその店の特徴など覚えてることはありますか?」青
特徴―――なーんにも覚えてない。近くに座れるところがあった以外になんか特徴あったっけ?何か外から分かるような特徴………あ、あったわ。
「白い狼と黒い狼の2匹のぬいぐるみがセットになったやつが売ってましたね。外から見えるように置いてました」
「狼のぬいぐるみ………わかりました」青
ドワイト?が歩き始めた。
自分でも結構クソみてぇな特徴言ったなとか思ってたけど、わかるもんなのか。すげぇなこの爺さん。
「ここですね」青
「よくわかりましたね」
「ええ、まあ、そのぬいぐるみが少し気になっていまして………」青
気になっていた。か、嘘ではないみたいだが、どう気になっていたのかはわからないよな。案外、あのぬいぐるみがこいつと関係あったりして。
「いやぁ〜どうもお世話になりました」
「………」青
「どうかしました?」
「……いえ、なんでもありませんよ。またいつでも頼ってください」赤
ドワイト?が何か思い悩んだ様子で去っていった。
なんでもないというのも、文字通り真っ赤な嘘だし、何かこの店に因縁でもあるのかな。
まぁいいや、早いとこぬいぐるみ買っちゃお。
「おばちゃん、そこの狼のぬいぐるみ2つセットでいくら?」
「金貨30枚だよ」青
高くね?ぼったくられてるわけでもないのに金貨30枚?この世界の金銭の価値はよくわかんないけど、金貨は最低でも万は超えるだろ。
「……今手持ち大金貨1枚しかないんだけど足りる?」
「足りるよ」青
「なら買うわ」
「はいよ、釣り銭が金貨20枚ね」青
大金貨−金貨30枚=金貨20枚ってことは、金貨50枚で大金貨1枚か。金貨1枚を1万と仮定しても50万。てことはこのぬいぐるみは2体で30万―――1体辺り15万か。たっけぇな。
「それにしてもあいつら」
「それにしても奴ら」青
「「どこに行きやがったんだ?」」青
「「あ」」青
さっきのガラの悪い奴らの1人と再会した。どんな偶然だよ。俺が探してんのそいつじゃないねん。なんでこんな最悪な運命の再会果たしてんだよ。
「見つけたぞぉぉぉ!!!」青
「おい待て!!」
野郎が逃げやがった。昨日ナツキ達に負けてるからタイマンじゃ俺に勝てないと踏んで仲間を呼びに行ったのだろう。逃げ切られたらまた、いつ何処で誰に見られているかも分からない状況に逆戻りだ。
「待てコラテメェ!!!」
「待てと言われて待つバカがいるわけねぇだろバーカ!!」青
「あっ!お~いハル〜!」青
目の前から手を振りながら歩いてくるあの小さいのは―――ナツキだ。いいところに戻って来やがったな。このまま俺とナツキで挟み撃ちにして捕まえていろいろと吐かせてやる。
「どけぇチビ!!」青
「あ゛」青
「あ」
逃げてた奴がナツキに「チビ」と言って手を伸ばした。
よりにもよってナツキの1番気にしてるところに触れやがって、どうなっても知らねぇぞ。
「だれがチビじゃい!!」青
一本背負い投げからの腕捻十字固め。十中八九悪人とはいえ、硬い石の地面に投げられそのまま関節技決められるのは流石に同情する。可哀想に、せめてちゃんと埋葬して供養してやろう。
「お前なぁ、死んだら情報引き出せねぇだろうが」
「そうだね、ごめん…」青
「うぅ……」青
「あ、生きてた。よ~し、そのまま関節決めとけよ」
「あいよ!」青
「いでででで!!!」青
さっき買い物した時に余分に買っておいた衣服でナツキに絞め技かけられてる野郎の手足を縛った。
「さーて、知ってることを洗いざらい吐いてもらおうか」
「はっ!だれが話すか!」青
「だろうな、しゃーない、トウヤを待つか」
当たり前だが、捕まってすぐにすべてを放すようなバカはいない。それこそ拷問でもしない限り。とはいえ、俺も元はただの一般人だ。拷問なんてできるわけない。結局、トウヤにこいつの記憶を読んでもらうのが1番手っ取り早くて円満に終わる。
「あれ、もうナツくん来てるじゃん」青
「まぁね、シュウちゃん。それより、トウヤくん見てない?」青
「見てないよ」青
シュウが合流した。後はお目当てのトウヤとフィーアを待つだけだ。
「あいつ遅くね?もういっそのこと、どっかの店で飯でも食っちゃう?」
「そうしたいけど、この人のこと放って行けないでしょ」青
「そうだった……。じゃあ、おとなしくここで待つか」
「だね」青
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ハル達とはぐれた。
地面から伝わる振動で探そうとしても、今日は何かのお祭りだ。人が多すぎてどれが誰の歩く振動なのか分からない。
「どうしよう……」
万策尽きた。スマホもなく、土地勘もない異世界のこの町で、彼らに再会するのは困難だ。さっきの奴らに見つかったらどうしよう。みんな捕まってるかもしれない。怖い。そんな感情が胸の内側からこみ上げてくる。そんなときだった―――
「うわっ!」
近くにあった建物の影から1匹の家に出たら発狂するくらい大きなGが出て足元まで近づいてきた。
おれはこの虫に見覚えがある。
ハルが契約した精霊。その眷属だ。
そんな虫が何故こんなところに?決まってる。ハルがおれを探してるんだ。
「おれを探しに来てくれたのかな?」
目の前の虫が円を書くように周り始めた。おそらく〇、正解ということだろう。
「おれはここで待てばいい?」
今度は虫が横にした8の字のように動き始めた。おそらく✕、不正解ということだろう。
「ならキミについていけばいいのかな?」
虫が真っ直ぐ道なりに動き始めた。「ついてこい」ということだろう。
大きな道に出ると、虫は人の影の中に入った。あんなに大きな虫が歩いていたら騒ぎになるからだ。
おれは、虫の入った影の持ち主を追って歩いていく。
そうしてたどりついたのは、おもちゃ屋。
追われる前にいた場所だ。虫はその場から動かなくなった。
「ここで待てってこと?」
虫は円を書くように周る。
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『主よ、トウヤ殿を発見致しました』
「そうか、どこにいる?」
『先程の店の前でお待ちです』
「フィーアは?」
『現在、捜索中です』
フィーアがまだ未だ見つかっていないのは少し気がかりだが、今はトウヤとの再会を喜ぶとしよう。この調子でいけば、すぐに見つかるはずだ。
「あ、やっと来た」青
「めんごめんご、急で悪いんだけどさ、こいつの記憶読んでくれない?」
「いいけど誰……ってああ、さっきの、捕まえたんだ」青
「そう、捕まえた」
「OKまかせて」青
トウヤの手が男の頭に触れた。それから10秒か20秒。それくらい経ったと思う。だんだんと、トウヤの表情が険しくなっていった。
トウヤは少し考えた後、意を決した様子で口を開く。
「フィーアちゃんが捕まった」青




