第15話 依頼
「ジャイアントボアってあれで合ってるよな?」
「合っていますよ我が主」
Gに勧められた依頼を受け、俺は森に来ていた。
依頼のジャイアントボアもすぐに見つかったのだが………。
「デカくね?」
めちゃくちゃデカい。
せいぜい大きめの猪くらいかな?とか思ってたのに、余裕で木をなぎ倒せるくらいのデカさはあるんですけど?
突然変異かな?突然変異だろ?突然変異であってくれ!!
「ジャイアントボアの生体は大体あのくらいの大きさですよ」
「は?」
終わった………。
勝てるわけがないよ。デカすぎるもん。どう見てもデカいもん。大型トラックくらいあるよ?絶対に1人で戦う相手じゃないでしょ。30人くらいで束になってようやく勝てるかどうかってレベルじゃないの?
あ!そうか、このGは精霊王候補なんだったわ。こいつなら、あのバカでか猪も余裕で倒せるでしょ。いやー持つべきものはクソ強い黒光りするアレだね!見直したぞ!G。これからは特別に人類の味方として扱ってやろう。
「よっしゃ!やっちゃえG!」
「何を言っているんですか?主が戦うんですよ。それに先程から私のことをGと呼んでおられますが、私にはエリザベスという名がございます」
OKわかった。こいつはやはり人類の敵だ。
なーにが、エリザベスだ。ふざけんな。二足歩行できるようになってから出直してこいやクソが。
あの大型トラックサイズの猪とタイマン張れだと?
無理に決まってんだろ。明らかに人類が逆らっちゃいけない見た目してんだぞ。
てか、あんな奴の討伐依頼を冒険者ランクが1番下の奴に受けさせんなよ。止めろよ受付嬢。
「OKOKつまり死ねってことだな?」
「違います」
「あれに勝つなんて無理だって。できるわけないからさ。な?それとも、やるやらないの問題とでもいう気か?」
「出来るできないの問題でも、やるやらないの問題でもありません。やれと命令しているのです」
こいつ今、命令してるって言ったか?酷くない?
もしかして俺のこと、下に見てる?え?我が主って呼んでくれてたよね?
それに、俺の拒否権は効力発揮してない感じ?やるやらないとか関係なく、俺の返答ってはいかYESしか許されないってこと?
「一応聞くけどさ、あいつの討伐って何人くらいでやるのが普通なわけ?」
「あのサイズですと………熟練の冒険者20名くらいですね」
「でしょうね!ジャイアントボア1頭の討伐で大金貨2枚とか変だと思ったわ!俺は駆け出しの冒険者なんだよ?」
「ごちゃごちゃ煩いですね。さっさとやりなさい」
とうとう命令口調になりやがったよこのクソ虫が。ぜってぇパワハラで訴えてやる。
仕方ない、効くかわからないがあいつの頭を破裂させてやるか。
「できませんよ」
「は?」
「前提として、精霊と契約すると魔力の性質が変わって、自身と魔法適性の違う者の魔力と反発します。主の場合、2種類の精霊と契約しているので、闇属性である私と水属性であるもう1体の精霊の魔力で反発するので、魔法として以外で魔力を身体の外に出すことができません」
なるほどわからん。
てか、今こいつ俺の頭の中呼んでなかったか?
とりあえず、これまでみたいに頭を破裂させたりできないってことだと思う。
………どうやって倒すんだ?
「それで?どうやったらあいつを倒せるんだ?」
「とりあえず、何でもいいので魔法を使ってみてください」
「魔法の使い方を知らないから聞いてるんだけど………」
「そこからですか………」
この野郎なんで呼ばれたと思ってんだ?
俺達に魔法の才能が毛ほどもないからやぞ?
「一旦、やって見せてくれよ。そのほうが早いだろ?」
「確かに、そのほうがいいですね」
急にあたりが光って、気づいたら目の前にエリザベスが現れた。
いつ見ても気持ち悪いなこいつ。
「そういえばさっきから気になってたんだけど、お前はどこにいたの?」
「主の影の中です。ちなみに、影の中から主の行動を監視することもできます」青
影の中から俺の行動が監視できるってことは、1人でナニをする時も見られてるってことだろ?
この世界にプライバシーとかないのか?
「まぁいいか、さっさと実演しておくれ」
「いいでしょう。よく見ていてください」青
エリザベスの影が伸び、ジャイアントボアの首を切り落とした。
「これが、闇属性の初級魔法《影刃》です」青
「かっっっっけぇぇぇぇーーーー!!!!!」
正直に言って、個人的にめちゃくちゃ好き。
自分の影を伸ばして相手に攻撃するとか、俺の厨二心がくすぐられてめっちゃ興奮する。
この魔法を使っているのが、巨大な黒光りするアレじゃなければ完璧だったのに………。
「闇属性魔法ってあんなんできんの!?すげぇな!もっと見せてくれよ!」
「嫌です」赤
「いいじゃん!お願い!」
「まったく………しょうがないですねぇ!」青
エリザベスの言動から、喜びが感じ取れる。
不覚にも、この巨大な人類の敵を可愛いと思ってしまった。
ドシン
大きな音と共に地面が大きく揺れた。
鳥たちが一斉に空へと飛び立ち、森は喧騒に包まれる。
誰がどう見ても異常事態だ。
「おいおいおいおいおい!どうなってんだ?」
俺の疑問は一瞬にして晴れることとなった。
音と振動の正体が目の前に現れたからだ。
「んだよ、あいつ………」
トウヤの契約した精霊に似た姿の、とんでもなくデカいおそらく爬虫類。
ただ立っているだけでとんでもない威圧感だ。
「あれは、地竜ですね。あのまま天寿を全うすれば、精霊と成るやもしれません。主のご友人に、地竜と契約している方がおられたでしょう?」青
精霊ってそんな感じでなるの!?
って、そんなことよりあいつをどうするかだよな。
さっきの猪の倍以上の巨体に、歩くだけで大地を揺らすというイカれた能力。
まるで、歩く災害だ。
「どうすんだよ、あれ」
「倒します」青
「あんなバケモンどうやって倒すんだって聞いてんだよ!?」
「はぁ………仕方ないですね。特別に、最上位の闇属性精霊魔法をお見せしましょう。これが、」青
「■■■です」青
今、何て言った?
周囲の地面や草木、空に至るまで全てが闇に染まった。
夜が来ただとか、真っ暗だとか、そんなレベルじゃない。
異世界に来て強化された視覚をもってしても、自分の身体すら見えない程の完全な闇。
「はっ………はっ…………!」
光どころか、声すらも飲み込まれてしまう。
仲間の、それも自分の契約している精霊の魔法だと理解しているのに、本能からか恐怖を抱いていまった。
「もう終わりましたよ」
エリザベスの声が脳内に響くと同時に、闇が晴れた。
光に目が慣れて辺りを見回すが、地竜の姿がどこにも見当たらない。
「地竜は?」
「倒しましたよ」青
「その方法を聞いてるんだけど?」
「あまり、詮索しないほうがよろしいかと」青
「お、おう………」
こっわ!!!
あのバカデカい地竜が跡形もなく消え去ってるんですけど?
てか、なんなの?あの魔法。あれ出来る奴が仲間なの裏切りが怖すぎるわ!
「地竜はいいとして、このバカでか猪はどうやってもって帰る?」
「影に入れてみては?闇属性魔法の《影収納》なら、簡単に持ち運べますよ」青
「へ〜、やり方は?」
「ご自分の影に魔力を流すだけです」青
クッソ簡単じゃん!!
勇者が闇属性とかなんか違うくね?とか思ってたけど、もしかして闇属性の魔法って便利なのが多いのでは?
「おぉ~すげぇ〜」
大型トラックサイズの猪が、俺の影に沈んでいく。
超が付くほど便利だわこの魔法。
「ジャイアントボア1頭の討伐、完了しましたよ」
「………申し訳ないのですが、にわかには信じ難いので、何か討伐を証明出来るものはお持ちでしょうか?」青
そりゃ疑うよね。俺が冒険者登録したのって1週間前とかだもん。
猪の死体なら影に入ってるし、さっさと出して焼き肉パーティーしよっと。
「これでいいですよね?」
「え、ええ。失礼ですが、こちらは貴方が?」青
「いえ、正確には俺の契約している精霊が」
「精霊使いの方でしたか!」青
精霊使いってジョブがあるのかな?ごめんなさい、勇者です。
「契約している精霊を見せていただいてもよろしいですか?」青
「ああ、はい」
契約してるのが黒光りするアレだって知ったら引くだろうな。
「す、すごい!」青
「へ?」
思ってた反応とちがう。なんか周りの見てた人たちも「おお!」とか「なんで神々しいんだ……!」とか、こいつら目イカれてんのか?Gだぞ?G!
「あの〜済んだなら帰っていいですか?」
「すいません!すぐに報酬のお支払いに移ります!」青
さてと、依頼も終わったし宿に戻って、あいつらと一緒にジャイアントボアの焼き肉パーティーとするか!
「ただいま………は?」
「あ!おかえり!」青
「ど…どうも……おじゃま………してます……」青
部屋に俺の知らない獣人の女の子がいた。
早速、面倒事に首を突っ込みやがったよこいつら。




