八章二十八話 大森林探索10
用語説明w
神らしきものの教団
現在の世界は神らしきものに滅ぼされるべきとの教義を持つカルト教団。テロ活動や人体実験を行うなど、世界各地で暗躍していた。大崩壊後に規模を縮小し、現在はナイツオブラウンドに吸収された模様
ナイツオブラウンド
複数のBランク戦闘員を擁する目的不明の組織。各国で単発的に破壊活動などを行っている。十三人の円卓の騎士と呼ばれる騎士を中心とした組織であり、マーリンが創設した組織であることが判明。神らしきものの教団の目的を引き継ぎ、何かを企てているとか
マーリン
裏社会でたまに名を耳にする、犯罪行為のコンサルタント。錬金術師トラダムスを始め、龍神皇国やカルノデアなどの大国にも手駒がおり、デスペアとも関係を持っている。目深にフードをかぶった女性…に見えるが、正体は不明。エマの仇
サードハンド
手を離した武器を、一つだけ落とさずに自分の体の側に保持して瞬時に持ち替えることができる補助型のテレキネシス。大型武器の補助動力としても使用
「フィーナ、範囲魔法!」
「はい!」
砲弾の中を、装甲車一台と歩兵たちが走ってくる
だが、訓練をされた動きではない
寄せ集めだ
ボボォォーーーーーーッ!!
広範囲に火炎が吹き荒れる
火属性を強化する遺物を使った火属性魔法
異世界国家ヨズヘイムから輸入した、遺物を装填する杖の力だ
フィーーーン!
ドンッ!
俺の自己生成爆弾、シルフ
羽を持った爆弾で、誘導性能がある
歩兵を一人仕留めた
これは、宇宙拠点ストラデ=イバリから仕入れた武装
兵器は日々進歩し、新しい技術が入って来ているのだ
「…来たぞ」
お互いに、攻撃の手が止む
理由は、向こうの大将がやって来たから
森から姿を現したのは二人
ナイツオブラウンドの一人
ドラゴンナイトのペリノア
魔竜の化身である竜闘士だ
そして…
「お久しぶりですー。ラーズさんにミィさん、お元気そうですねぇ」
「そっちもな。マーリン」
フードを目深に被った、小さな女
相変わらず、背丈ほどもある杖を持っている
「セフィリアさんが最も信頼する騎士。蒼天竜ラーズさんとクレジットクィーンのミィさん。想像を超えられるという感覚は、とても面白いものでしたぁ」
「素直に悔しいって言っていいわよ?」
ミィがボウガンを構える
「正直言って、とてもとても悔しいです。でも、それ以上に驚きが勝りました。だって、騎士百人に一人で挑んで生き残ったんですよぉ? 信じられません」
「地獄に落ちる寸前で這い上がったんだよ。お前に用があったからな」
俺は、ブルミナスを握る
…エマの仇がようやく討てる
今日は逃がさない
「そんなに焦らないでくださいよぉ。今日も驚かされましたぁ、人数に勝るこっちがこんなに簡単に崩れるなんてぇ」
「ただ突っ込ませて勝てるわけがない。あんまり舐めるなよ」
「普通は簡単に勝てるんですよぉ。それと、バビロン教授とミィさんですか」
「何?」
「あの壁画に描かれた地図の謎…。調べてもらおうと思ってカラクリ箱の石板を渡したんですけどぉ。まさか、たったの一日で見つけ出すなんて思いませんでしたぁ」
「こっちには、バビロンさん含めて考古学のプロフェッショナルが付いてんのよ」
「…おかげで準備不足です。人数をかき集めて、またペリノアさんに頼むしかありませんでしたぁ。本当に優秀で、嬉しくなってしまいますぅ」
マーリンは、笑っているのか口を手で隠す
「あんた達、ナイツオブラウンドの目的は何?」
ミィが言いながら、何かがか書れた紙を見せる
それは、大きな円の円周上に十三の小さな円が描かれたマークだ
「私たちのシンボルマークじゃないですかぁ。ミィさんも入ります? 歓迎しますよー」
「お断りよ。犯罪によって、正常な経済競争を破壊する奴らなんて大っ嫌い」
「冷たいですねぇ。今の経済制度は、全員が参加できているわけではないのに」
「それを変えるために、私とセフィ姉は戦っているのよ」
ミィが堂々と言い返す
こいつの信念は、昔から嫌いじゃない
「…この遺跡は、お金にはなりません。譲ってくれるなら言い値で払いますよぉ?」
マーリンは、言葉での説得を諦めたようだ
「あんたらの目的によるわね。真実の眼の遺跡を追って何がしたいわけ?」
「ナイツオブラウンドの目的は…、秘密です。でも、私の目的なら話せますよぉ」
「危ないからダメだって!」
「ちょっ…、何を、ミィさ…!」
装甲車から出ようとするバビロンさんが、ミィに押し戻される
「真実の眼の遺跡は、世界の真実を語る可能性があります」
「世界の真実?」
「その真実とは、古代からの遺産だそうです」
「どんな情報なの?」
ミィが尋ねる
多分だが、車の中でバビロンさんが尋ねている言葉だ
「ずっと調べて来たんです。時に、教団とも手を組んで」
「…」
「ナイツオブラウンドが神らしきものの教団を吸収しました。おかげで、教団が進めていた計画にシフトしてしまい、私の目的はなかなか進まないんです」
マーリンが困った顔をする
「やっぱり、吸収したのね」
「はい。これから先、大きな大きなことが起こります。これは絶対です。楽しみにしていてください」
「どうやって一つになったんだ? 教団の規模は大きい。そんな簡単に…」
俺は、思わず口を出す
大崩壊を引き起こし、国を破壊した
世界中に支部を持つ教団の規模は大きい
ナイツオブラウンドといえど、簡単に吸収できるとは思えない
「簡単ですよぉ、教団一の戦闘員がナイツオブラウンドに入ってくれたんです。ゴッドナイトのベディヴィアさんと言って、Aランクの騎士なんです」
「Aランクだと…!」
「後は、反対する教団の首脳陣の首を引き抜いただけです。すんなり、ナイツオブラウンドへの吸収は済みました」
「…」
何のことはない
ナイツオブラウンドは、力で教団を組み入れたのだ
…それが出来る力を持つ組織
教団を喰うことができるほどの組織力は恐ろしい
「さぁ、どうですか? この遺跡は、私がずっと求めていたもの。でも、ナイツオブラウンドの目的ではありません。譲ってくだされば言い値を出しますし、私たちの情報を渡してあげても…」
「お断り。この遺跡は私達で調べるわ」
「…」
「さっさと帰るか、私達とやり合うか。決めなさい」
「残念です。お二人とは、お友達になりたいと思ってるんですけどねぇ」
マーリンが言うと、ペリノアが前に進み出た
「…マーリンの動きを見ておけ」
俺も、前に出る
「ちょっ、また一人で…!」
フィーナが言う
「作戦があるんだよ。無理はしないからやらせてくれ」
「さ、作戦?」
フィーナがミィを見るが、知らないと首を振る
「サシでやるのか? 仲間に助けてもらえよ」
ペリノアがバトルアックスを構える
「必要なら助けをもらう。必要なら、な」
俺は、ブルミナスを盾のように構える
「むかつくぜ…」
ペリノアが魔竜化
闘氣が膨れ上がる
ドラゴンを人間の形に押し込めたような威圧感
だが、俺はピンクやセフィ姉の竜化と組手をしたことがある
異世界イグドラシルで竜王グレイムの圧倒的威圧感も経験した
知ってるってのは大きい
ズドッ!
ペリノアの斧の叩きつけ
冷気が吹き荒れる
小型杖のクイックドローで拘束の魔法弾を当てる
「どうした! トランス3を使え!」
ペリノアが斧で袈裟斬り
上体を左に振って躱す
スドッ!
渾身の左フックにトランスを乗せる
闘氣も思いっきり集中させてやった
「このっ…!」
だが、普通に耐えられる
魔竜化したこいつはタフ
一般兵と騎士の差くらい、防御力に差が出やがる
…信じてたよ!
俺は、サードハンドで浮かせていたブルミナスを持つ
「喰らえっ!」
近距離カウンターで、フル機構突きを叩き込む!
ゴゥッ…ズッドォッッ!
ペリノアが吹き飛んだ
いや、吹き飛ぶ力に変えられた
この野郎、反応速度が尋常じゃない
「ぐがっ…、クソが…!!」
ペリノアの前腕をブルミナスが縦に貫通
ボタボタと血液が噴き出ている
だが、それだけ
人間が、闘氣有りのフル機構攻撃を前腕と闘氣だけで止めやがったのだ
信じられねぇ
同じ人間で、ここまでの物理作用を作れるとは…
成竜レベルの魔竜化は、ちょっとどうしようもない
グオォォーーーーーッ!
遠吠えが響く
暴れさせろ
こいつは敵だ
紋章に干渉する力
俺の中のドラゴンが、同じ竜種であるペリノアを敵とみなした
…奴の竜の気配に引っ張られているんだ
だめだ、もう竜化はしない
暴走して勝てる相手じゃない
理性で戦う
勢いには任せない
ドラゴンの力を改めて理解した
これは、狂気
侵食する異物だ
「おら、来いよ! 押さえてねーで、全力で行こうぜ!」
ペリノアは、血を滴らせながら斧を振るう
そして、ケガした腕で爪を振るう
圧倒的な闘争心は、捕食者のそれだ
ゴッ!
ローキックを入れながら、奴の足の外側に足をつく
続けて、膝を外側から押し込む
「おらぁっ!」
横から膝を押され、バランスを崩しかけたペリノアが爪を振るう
俺は、頭を下げて回避
胴に組み付いて背後へ
裏投げ…バックドロップでぶん投げながら、俺は一緒に回転する
トンッ…
空中で蹴って距離を取る
そして、またサードハンドで保持していたブルミナスを真上から振り下ろす
ゴゥッ…ズドォォッ!!
叩き潰すつもりの、フル機構斬りの振り下ろし
だが、ペリノアは肩とクロスさせた両手で受け止める
血が噴き出るが、またフル機構斬りを止めやがった!
ドゴォッ!!
「ぐっ…!!」
冷気を纏った斧の斬撃で、俺は吹き飛ばされた
エマの仇、マーリンがいる
こいつは邪魔だ
排除する
「準備は終わった。ピンク、ソロン、手伝え」
俺は、頼りになるパーティメンバーを呼んだ




