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八章二十七話 大森林探索9

用語説明w


MEB

多目的身体拡張機構の略称。二足歩行型乗込み式ロボット。ラーズは空色に塗装されたシノダ製エースマン・カスタムをオーバーラップしている。思念操作に対応し、第二の身体として使え、必要に応じて兵装を交換可能


フィーナ

漆黒の髪と赤い目のノーマン女性。漆黒の戦姫と呼ばれ、仙人として覚醒、宇宙戦艦宵闇の城をオーバーラップ、更に複合遁術を習得した大魔導士。クレハナの王族出身ながら、ラーズの幼馴染な嫁さん


ミィ

魚人女性、ラーズの騎士学園の同期であり、龍神皇国騎士団経済対策団のエース。戦闘能力はそこまで高くないが、経済的な観点で物事を考える。海の力を宿したオーシャンスライムのスーラが使役対象


スサノヲ

見た目は赤ずきんをかぶった女の子。正体は、怪力の腕利き鍛冶職人で、ラーズの装備の作成者


「う…」


眼を開けると、ピンクとソロンが俺を覗き込んでいた


「ガウ」


俺の横にはフォウルもいる



「ラー兄、大丈夫?」

「気分は?」


「…大丈夫…だけど…」


何があった?

また意識を失っていたのか


記憶が飛んでいる



「ラーズ!」


フィーナが入って来た

ここは、装甲車の中だ


「何があった? ペリノアは?」


「あいつは逃げたよ。でも、すぐにまた来ると思う」


「迎え討つ準備しないと」

ミィもいた


「そうか…」


ベッドから身体を起こして、全身をチェック

腕も足も動くし、首も大丈夫

ケガはなさそうだな



「ラーズ、身体は大丈夫?」


「ああ、問題なさそうだ。状況を教えてくれ」


「覚えてないの?」

フィーナが少し驚いた顔をする


「ラー兄、竜闘士の力が発現したんだよ」

ピンクが言う


「ちょっと良くない方にだけどね」

ソロンが困った顔


「どういう意味だ、不安にさせるなって」



「ラーズの身体が変異したの。ピンクやソロンみたいに」

ミィが話してくれる


「変異?」


「体の一部がドラゴンみたいになったの。手が大きくなって爪が生えたり、鱗みたいなものが出てきたり」


「俺に…?」


竜化の兆候…

だが、俺が体を見回しても、いつもの人間の体だ



「ラー兄は、竜化しながら暴走したんだよ。それを必死にピンク姉が止めてくれて、俺も手伝って二人で抑えたんだ」

ソロンが続ける


「ラー兄の暴走、紋章と竜化の影響じゃないかって思って、二人でドラゴンの力を押さえたの。でも、今回はかなり粘られて…、ね?」


「うん。ラー兄の中のドラゴンが抵抗して、フォウルも来てくれて、やっと竜の力を抑え込んだんだ」


「そ、そうだったのか…」


「あの竜闘士もびっくりしてたよ。トランス3を発動してやり合ってたら、急に体に変化があったから」


「うん。慌てて距離を取って、そのまま逃げて行ったんだ。ただ、本隊が到着したとか言ってたから、合流するつもりだったのかもしれない」


要するに、ペリノアは撤退した

だが、ナイツオブラウンドの部隊が到着した


撃退の準備をしないとってことだ



「ピンク、ソロン。相手の部隊を相手にするなら準備がいる。手伝ってくれ」


「何をするの?」


「まずは塹壕を掘ろう。俺とピンクのMEBで大雑把に掘って、ソロンが土属性で補強をしてくれ」


「うん!」



俺達は、遺跡を守りナイツオブラウンドの部隊を撃退するため、拠点防衛の準備を始める


「スサノヲも、少し休んでいてくれ。すまなかった」


「ラーズ、大丈夫なのかよ」

スサノヲが言ってくる


「もう大丈夫だ。それと、ブルミナスの調子はすごくいい」


「当たり前だろ。しっかり使いこなせ。それと略すな!」



俺とピンクはMEBを呼び出す


「ここでいい?」


「そうだ。時間が無いから、扇状に一本溝を掘って、土を盛り上げよう」


「はーい!」



あっという間に、遺跡の入口の前に溝が掘られていく

装甲車や一般兵の歩兵には、渡るのに労力がいる


こういう作業を行え、戦うこともできる兵器がMEBなのだ




「ミィ姉、バビロンさんは?」


フィーナがミィの横に座る


「遺跡の調査よ」


「一人で大丈夫なの?」


「奥に小さい部屋があるだけ。ハヌマーンも逃げたし、崩落の危険もなさそうだから。それに、言っても聞かないし」

ミィがため息をつく


考古学者に、未発見の遺跡の目の前で我慢させるというのも酷な話だ


「それより、ラーズよ。本当に何ともないの?」


「大暴れしてびっくりした。ピンクとソロンがいてよかったよ」

フィーナが頷く


ラーズの竜熱症状を押さえられる、ドラゴンの力を持つ二人

竜闘士であり、戦闘面でもラーズのケアという点でもありがたい存在だ


トランスと呪印を併用し、暴走したラーズを抑えつける


ピンクとソロンは、伊達にセフィ姉クラスの才能と言われていない

並の騎士を凌駕する実力を持っている



「…何か不満そうだね」

ミィがフィーナの顔を見る


「竜熱症状は…、私じゃ何もできないから。竜化に効く回復魔法なんてないし…。私も、ドラゴンの力について勉強しようかな」


「もう奥さんなんだから、ピンクやソロンに嫉妬しないでよ…」


「そんなんじゃないよ!」


二人は、周囲の警戒をしながらセフィ姉に状況を報告した




・・・・・・




作業は小一時間ほどで終わった

木々の中に塹壕が出来上がっている


後は、迎え撃つだけだ


「ラーズ、確認だけど行けるの?」


「大丈夫だ、身体に違和感はない」


俺は答えながら、異世界イグドラシルの神竜、竜母デナガリエンヌの言葉を思い出す



『そなたに宿った竜の力は、今後、大きく成長していくことでしょう。ゆめゆめ、喰われることのないように』



ナバテア密林で、ダナンジャが外した神鉄の輪

ドラゴンキラー物質の枷を失った


更に、竜母デナガリエンヌは俺の中にある竜の力を解放したと言っていた


これが、その結果なのだろうか


俺の意識を侵食した

ようやく抑えられるようになっていた暴走が、また再発したのだ



「でも、また暴走したらどうすんのよ」

ミィが言う


暴走は危険だ

同士討ちの可能性だってある


「おそらく、トランス3を使ったからだ。呪印の力に引っ張られた」


「呪印?」


「おれの呪印は、元々、俺の意思を闘争心で染め上げて吹き飛ばすものだ。だから、いつもは数秒単位の発動に抑えていたんだ」


クレハナ内戦時にたどり着いた、呪印の有効活用方法

破壊目標を定めて、そこに殺意を集中させての短時間発動


だが、魔竜化したペリノアは別格

今回はトランスと併用しながら発動を維持せざるを得なかった


使用時間が伸びてしまったことが原因だ


そこまでやって五分

ピンクやソロンとは一味違う、成熟した竜闘士の力は想像以上だった



「そんな危険な呪印、簡単に使うんじゃないわよ」


「でも、性能面は破格だ。一般兵が騎士を倒せる強化値を得られるんだ。今までは、絆の腕輪を使って、フォウル、リィ、竜牙兵に暴走のストッパーをやってもらっていた。呪印を切れって思念で叫んでもらってさ」


「…そうだったんだ」


だが、リィと竜牙兵を失った


フォウルの警告の思念や、データのバイタルの変化による警報だけでは、暴走から意識を引き戻せなかった

今までのようにギリギリで呪印を切ることができなかったんだ


俺にとって、使役対象達の力は本当に大きかったってことだ


「それじゃあ、危なくって、もう呪印の力は使えないじゃない」


「そうだな。他の方法でやるしかない」


「あ、それならさ」

フィーナが俺に近づく


「何だよ?」


「私も、フォウルと一緒に警告してあげるよ」


そう言うと、フィーナが雲遁の雲を生成し、俺の絆の腕輪に注ぎ込む


絆の腕輪は、思念を送受信するために、魔力や霊力、霊体の一部などを封印する

フィーナの一部である雲を封印すれば、フィーナと思念でのやり取りができる


クレハナの内戦でも、フィーナはこの雲を封印して俺とやり取りしていた



「…なるほどな。頼む」


「でも、できるだけ使わないでよ」

ミィが釘刺し


「ソロン、ラー兄が暴走したら頑張って止めようね」

「ピンク姉の力が強すぎて、ラー兄がケガしちゃいそうだったよ…」



ガラガラガラッ!


空き缶がぶつかって金属音が響いた

紐の結んだ空き缶の簡易アラームだ



「お、来たな」

スサノヲが双眼鏡を覗く


「うし、やるか。ピンクとソロンは待機で。ミィ、指示しろ」


「偉そうに言わないでよ」



筒を立てて砲弾を入れて打ち出す迫撃砲を用意しておいた

そこに、どんどん砲弾を放り込む



ボシュッ!


ボヒュッ!


バヒュッ!



ドッガァァァァン!



森の中で爆発音


「距離ばっちりだぜ」

スサノヲが言う



空き缶を吊り下げた簡易アラームが鳴った位置は分かっている


奴らの目的地はこの遺跡以外にない

侵攻方向が分かっているため、そこに爆弾を撃ち込む簡単なお仕事だ



「おい、弾幕足りねーぞ。包囲されそうだ」


「スサノヲ、砲弾持ってい来い!」


「ほれ」


「砲弾を投げ落とすな!」


敵の規模は一小隊規模

三十人から、多くて五十人ってところだ


迫撃砲の弾幕

データが爆弾を持たせたドローンを操作してアタック



「ダメね、第二陣に移行」


「ピンク!」

「はーい!」


俺とピンクが、MEBを呼び出す

そして、機関銃の掃射



「フィーナやりましょ」


「うん」


ミィが、フィーナの範囲魔法を付加してボウガンの矢を発射

着弾点に範囲魔法が発動する


ミィのボウガンの腕は、距離バッチリだ


「ねぇ、ラーズってさ」

ミィがフィーナに耳打ち


「え?」


「この戦場で、よく笑う余裕があるよね。敵が迫ってるのに」


「…そうだね」


ピンクとソロンに笑いながら指示しているラーズ



「撃て! 撃て! 手が足りねーっての!」


ラーズがMEBで機関銃を掃射しながら、自分自身でロケットランチャーをぶっ放す



包囲されかけている、この状況

死がすぐそこにある


こんな場所で、時折笑顔を見せる


…いったい、どれだけの戦場を歩いてきたら、こうなるのだろうか


竜母デナガリエンヌ 七章三十五話 竜の力2

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