八章二十六話 大森林探索8
用語説明w
竜闘士
ドラゴンウォーリア、ドラゴンの力を持つ人類の呼称。成長すれば、人体に竜の特徴を顕現させる変身能力、竜化が可能となる。竜の力に耐えるため、人体強化が前提であり、力の覚醒のためには本物のドラゴンの力に接する必要があるなど条件が多い
ブルミナス
正式名称ブルールミナス、折れた青き大剣1991が、アダマンタイト鋼と竜王の爪を使って生まれ変わった。ロケットブースター、パイルバンカー機構、硬化紋章、超振動装着、精神感応金属内蔵は変わらず、強いドラゴンキラー特性を内蔵した霊剣となった
ピンク
竜人女性、燃えるような赤髪が印象的な、カイザードラゴンの血を引く貴族の令嬢。業火竜と呼ばれる期待の新人騎士で、火属性との親和性を持つ。オーバーラップした宇宙拠点産のMEB、レミントン・スマートを使っている
ソロン
龍神皇国の現皇帝の孫で皇太子の一人で龍人男性。セフィリアと同じ龍神王の血を引く、ドラゴンの力を持つ竜闘士。セフィリア、ピンクとは義兄弟の契りを結んでいて仲がいい
ボッガァァァァァァン!!
凍てつく刃が炸裂
冷気と共に、周囲にはじけ飛んだ
ズドドドッッ!!
ボボーーーッ!
ミィが力学属性障壁魔法、フィーナが土属性土壁の魔法を慌てて発動
そして、ピンクが周囲を高熱で包む特技、火の国を発動
爆発的な冷気を相殺する
「あ、ありがとう、ピンク姉…」
最前線にいて、危なく冷気に巻き込まれるところだったソロンが言う
「ソロン、気が付いてる?」
「え? …えっ!?」
ピンクに言われ、ソロンが驚く
グオォォーーーーッ!!
「ぐっ…」
俺の頭の中で響く竜熱の遠吠え
俺の中のドラゴンが反応した
神鉄を外してから、ドラゴンの力を感じるようになった
そして、竜熱が反応するようになりやがった
ペリノアから感じる力
これは、間違いなくドラゴンの力だ
「あいつ、やっぱり竜闘士…」
ピンクがつぶやく
「まさか、竜化能力を…」
ドラゴンの力を持つ希少な人材
俺は、セフィ姉、ピンク、ソロンしか見たことが無かった
いや、ナチが生まれる日だったか
絡んできた野郎も竜闘士だったな
つまり、こいつで五人目だ
「クソ猿が、邪魔だ!」
吹き飛んで、霜まみれの斉天大聖が横たわっている
ペリノアの姿は、人間にドラゴンを混ぜたよう
ピンクと同じ、甲殻で覆った四肢、肥大化した角と尻尾、鱗で弱点を覆いながら動きを阻害しない身体、高密度に凝縮した筋肉と、人とかけ離れた姿
竜化能力
トランス・アドバンスと呼ばれる変身の中でも珍しい、ドラゴンの力との融合
竜闘士と呼ばれる者達の変身能力だ
「魔竜…」
ソロンが呟く
竜化能力は、元のドラゴンの特徴が出る
龍神王の血を持つセフィ姉とソロンは東洋竜、カイザードラゴンの血を持つピンクは西洋竜
それぞれ、龍神化や皇竜化と呼ぶ
そして、こいつの竜化は魔竜化と呼ばれるもの
黒い甲殻が特徴的だ
「俺の爺さんは魔竜族だったらしいからな」
ペリノアがバトルアックスを構える
伝わってくる、闘氣の強靭さ
人類では、あの出力を出せるはずがない
俺が知っている、トランス・アドバンス
セフィ姉、ヤマトに、ピンクとソロン
…共通点は、人類を明らかに超えていることだ
「…ピンク、ソロン。下がってミィとフィーナを守れ」
「ラー兄、私も…!」
「竜闘士じゃないミィや雲遁が使えないフィーナが攻撃を受けたら危ない。…分かるだろ?」
「…!」
俺はブルミナスを肩に担いで、魔竜化したペリノアと相対する
「…お前、騎士百人斬りをやったんだってな。しびれるじゃねーか」
「マーリンにはめられただけだ。さっさと連れて来い」
やる気に満ち溢れたペリノア
こいつはダナンジャやアテナと同じ、戦闘狂だ
目的のために戦うんじゃない
戦うためにいる
戦いが好きな奴ってのは、努力を惜しまない分、強い
「調子に乗るなよ、蒼天竜。お前ごときが、ナイツオブラウンドとやり合えると思ってるのか?」
「言っておくが、その猿は俺達が削りに削っていただけだ」
「戦闘力五のゴミが。俺が本気を出していれば、瞬殺だったんだよ」
「誰が五だ。それなら、テメーがどれくらいか、自己申告してみろ」
「五十三万だ」
「バーカ」
軽口を叩き合いながら、間合いを詰めて行く
スドォッ!
ドシュッ
互いの斬撃
だが、明らかに俺よりもこいつの方が速い
いや、速すぎる
竜化したペリノアの闘氣の質が変わった
圧倒的な身体強化作用
あと少しでも遅ければ、斧が俺の頭にめり込んでいた!
ゴッ…
「…っ!?」
カチ上げられる
身体が浮く
ペリノアの変身
それは、身体を作り変えていることに等しい
人体を強化した変異体である俺の、遥か上を行く肉体
一時的に、戦うことを目的とした生物になっているのだ
「ぐっ…!」
トランスを発動
空中で飛行能力を使って切り返す
とんでもない身体能力
人間のくせに、斉天大聖に迫る腕力だ…!
ズドォッ!!
ペリノアの意表を突いて、全力で吹き飛ばす
「やるじゃねーか、よ!」
「…っ!?」
だが、着地と同時に、地面を蹴るペリノア
効いた様子が皆無だ
弾丸のような突進斬り下ろしが来る
ゴギャッ!
ブルミナスでガードするも、思いっきり吹き飛ばされる
こ、これはまずい…!
こいつ、今までやってきた誰よりも身体能力が頭おかしい
…思い出す
一般兵の時代を
闘氣が無い
選ばれし力が無い
それだけで、どんな技能を持っていても力負けをしてきた
竜化能力…、トランスアドバンスは、騎士の上位互換だ
トランスレベルというものがある
トランスとは、チャクラを開いて霊体に霊力、肉体に氣力を満たす技能
これをトランス1と呼称する
次に、呪印
トランスとは違い、外部からのエネルギーで身体を強化する
これをトランス2と呼ぶ
そして、トランス3
トランスと呪印の同時発動
内からと外から身体を強化する
トランスの理論上の終着点だ
グオォォーーーーーーッ!!
頭の中で響く遠吠え
いつもは厄介な竜熱症状
だが、こいつが呪印に干渉、額に輝き始める
「へぇ…、お前、面白すぎるぜ」
「…」
トランス・アドバンスは、トランスレベルで言えば4
人体を超えるという意味ではトランスと同義だが、メカニズムは全く違う
俺のトランス3
奴のトランス・アドバンス
どっちが上か、やってやるよ…!!
ズガァッ!
「うおぉぉぉっ!」
叩きつける斧を捌きながら同時にブルミナスのジェットで高速回転斬り
ドッガァァッ!
「来いやぁ!」
冷気を纏ったバトルアックスの叩きつけ
ドラゴンエッグで防ぎながら、全ての風の殻を消費して拳に乗せるストレート
カシャシャーーーーーン!
ブオォォォォッ!
次の一撃に、いち早くペリノアが頭突きを選択
反応が早い
ゴッガンッ!
俺は、カウンターで額を叩きつける
お互いの額が弾ける
ビキビキと、ヘルメットが軋む音
俺の闘氣の硬度が圧倒的に負けているってことだ
ゴギャッ!
渾身のハイキックで、ペリノアを押し戻す
引いたら呑まれる
押し戻せ
出し惜しみは出来ねぇ!
トランス3…、トランスと呪印の併用の強化値は高い
しかも、スピリッツ装備となったヴァヴェルに闘氣が通り、身体能力を補強している
「ガウ!」
絆の腕輪を通して、フォウルの声が遠くに聞こえた
呪印の発動時間が長いからか
意識を持っていかれる
だが…
ゴッ!
「ぐはっ…!!」
バトルアックスの突き
そこから、ラリアット気味にぶん殴られて吹き飛ばされる
「なんだぁ…、お前。ドラゴンの気配…」
ペリノアが、動きを止める
ぐ…、これは想定外だ
ペリノアは、表現するなら成竜となった竜闘士
ピンクとソロンの竜闘士形態とは違う
明らかに質…、力の密度が違う
ピンクとソロンは、まだ未熟
あいつらは、あの才能を持ちながら、まだ未成熟なんだ
そして、成熟すると…
ここまで違う
魔竜化した竜闘士相手…
トランス3まで発動して、ギリギリ勝負になるかどうか
無理ゲーすぎんだろ!
…発動を止めれば負ける、押し切れ!
ズドッ!
ゴゥッ… ズッガァァァァァァン!
突きからのフル機構斬り
ペリノアが、攻撃を受けながらも踏みとどまる
タフな野郎だな!
いいだろう
やってやるよ
壊す
引き裂く
破壊する
ガードの上から、ブルミナスを叩きつける
ローを叩きつけて、タックルからの払い腰
ほら、隙ができた
「うおぉぉぉぉっ!」
拳を振り下ろす
蹴り上げる
抵抗させるな
砕け
踏みつけろ
ゴゥッ… ズッガァァァァァァァァァン!!
パッキーーーーーーーーン……!!
ブルミナスがペリノアの闘氣を貫通、フル機構突きが脇腹を抉った
だが、相打ち
奴の冷属性吹雪斬りが俺の左太ももに直撃
冷気で凍てつく感覚に襲われる
「グオォォォーーーーーーーーッ!!」
吠える
こいつを殺す
敵だ
敵だ!
ビキビキと身体から音が聞こえる
同時に、力が満ち溢れてくる
「ラー兄ぃっ!!」
「…っ!!」
新手か
また、ドラゴンの気配
強い
邪魔をするな
邪魔をするな…
邪魔をするなぁぁぁぁぁっ!!
逃げて行くドラゴンの気配
フル機構突きをぶち込んだ野郎
追いかけて、抑えつけて、引き裂かねば
しかし、掴まれている
背中からだ
ドラゴンの気配
「うおぉぉぉっ!!」
放せ!
邪魔をするな!
振り払おうとする
その時に、またドラゴンの気配に捕まれる
二体の気配に羽交い絞めにされる
プツン…
「………!」
な、なんだ…
突然、目の前が真っ暗になっていく
遠のいていく、目の前の風景
何が起こっ…
………
……
…
「はぁ…はぁ…」
「ラー兄…ふぅ…大丈夫……ふぅ…」
ピンクとソロンが肩で息をしている
倒れたラーズを、フィーナとミィが回復措置
だが、ただの疲労やケガではない
ラーズの身体が、異形に変異
まるで、トランス・アドバンス…
変身能力のように
しかし、歪
ピンクやソロンのような竜化でない
人体が歪み、部分的に変身したような…
そんな姿
フィーナは必死に回復魔法を発動
ミィは、回復薬をかけながら、凍傷の治療を続けていた
ナチが生まれた日 七章二十五話 産婦人科




