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魔術師、異世界をソロで往く 帝国編  作者: 迷子のハッチ
第6章 神聖ロマナム帝国帝都ミンスター
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第53話・1 (閑話)闇の中の会話

章の終わりの閑話です。

 ここは、皇帝宮奥の一角にある、魔術の付加で厳重に防御された部屋。

 ここには椅子に座る男とその前に跪く男の2人しか居ない。

 「ボネからカスミ姫の居場所が分かったと連絡があったそうだな。」と椅子に座った50代の男が前に跪く男に聞く。


 「はい、公爵から知らせてきた内容は、ヴァン国大使館を監視していた手の者がカスミ姫の従者を見つけたとの事です。」

 「カスミ姫の居場所が分かるのも時間の問題だと言ってきております。」

 跪く男は正確に伝え様とゆっくりと言う。


 「ふん、また勝手な憶測で物を言いよる。」

 「手練れの闇を張り付けて、確実にカスミ姫を見つけろ!」

 座っている椅子を叩くと、前に跪く男に命令する。


 「ハッ、直ちに。」跪く男は、座る男に軽く頭を下げて礼をすると部屋から出て行った。


 「今度こそわれらに神の血筋を入れる!」

 「ネの尊族から失われた神の子、我がご先祖様が血涙を流し誓った千年の悲願を叶える絶好の機会、逃さぬぞ!」

 「ふん、それにしても37歳と聞くが体はまだ11か2に見えると言う、妖精族とは成長が遅いのう。」

 「息子の中で子供の体でも良いと言う奴はおったかの?」

 「おらねば儂が受け入れるしか無いのか、成長を待ってもこちらが先にくたばるじゃろうな。」


 色々思案しているとドアの前で立つ近衛兵が、ドアのノッカーを叩いて知らせてくる。


 手元の、椅子の側にある机の上に置かれた魔道具を操作する。

 するとドアの前の声が聞こえる様になって、先ほど出て行った男の声がする。

 「只今戻りましてございます。」


 椅子に座った男は思案を止め、「入れッ」と声を掛ける。

 「ガチャ」

 その声に反応してドアの鍵が開く音がした。


 ドアを開け先ほどの男が入って来る。

 椅子に座った男の前で軽く頭を下げて礼をし、跪く。

 「闇の手配終わりましてございます。」


 「うむ。」軽く頷き分かったと示す。

 「ボネは姫を見つけてどうするか言ってきておるか。」


 「ハッ、姫の居場所が分からぬことには何とも、ただできうる限り早めに、その身を確保するそうです。」跪く男が答える。


 「そうか、あ奴の事じゃ上手くやるだろうが、事が事じゃ念を入れよう。」

 「闇に機会があればカスミ姫の身柄の確保をするように言って置け。」

 「ただし、表ざたにならぬように密かに動け、できるならボネを助けてやるが良い。」


 「ハッ、」

 「それと公爵が、姫に子が生まれた後に、息子の嫁に臣籍降下させてほしいと。」

 跪く男が恐る恐る言う。


 「ふん、気が早い奴じゃな。」

 「しかし、まだ子供の体と言う事じゃが子供を産めるのか?」


 「は、ヴァン国の王族は自分で成人する時を決められると聞いております。」

 「成人すると子を成す事が出来る様に成ると聞いております。」

 と跪く男が言う。


 「そうか、自分でのう、自分から進んで成人すると思うか?」


 「いえ、自ら進んで成人するとは思いませぬので、強力な暗示を掛けれるスキルがございます、これを使用すれば良いかと。」

 跪く男は自信ありげに提案する。


 「神格持ちに掛かるかな?」

 「色々試してみれば何か分かるじゃろうな。」

 「先ずは、手元に置く事じゃな。」

 椅子に座る男は、跪く男を見ながら独り言を言う。


 そして、言った。

 「生まれた後なら下げ渡しても良いだろう、そう伝えておけ。」


 「ハッ、そう伝えます。」

 「次に、ヴァン国の件ですがどういたしましょう。」

 跪く男は、新しい問題を聞いて来る。


 「何とか言ってた魔道具のことじゃな、本当に竜騎士に使えそうか?」


 「試し打ちを見た軍務大臣秘書の話では、300コル(450m)を一瞬で飛び爆発するそうでございます。」

 跪く男が腕を振って、その様を表現しようとする。


 「あの国の魔道具は悔しいが帝国より優れておる、何とかしてヴァン国の技術を手に入れられぬか?」

 「そうじゃ第3皇妃の息子に飛行する魔道具を作った者が居ったはず。」

 「あ奴なら火球砲の秘密、判るかもしれん、さっそく探るよう命じる手筈をせよ。」


 「アルベルト殿下に伝えます。」

 尚書省大臣ウルリッヒ・バイ・アルブレヒトは今日も忙しい。


今回は皇帝城内での秘密の部屋での会話です。

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