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魔女の心根 前編。

『――ここは魔法によって発展した世界。そこに魔法という文化を浸透させた存在。“魔女”。人間の時間で換算して千年程前、人々に魔法を授け世界を大きく発展させた始祖。この世界の人間にも私達と同じだけの寿命があり、なのに何故千年も生きているのか。目撃した人間によると、若い美女、老婆だったり、はたまた成人男性など。巷では人の身体を乗っ取っている、という噂が一番有力とされていて、誰もがそれが有力だと疑いません。それもそのはず。魔女は千年前から今の今まで、ありとあらゆる暴虐の限りを尽くしているからです。千年間、誰一人として逆わず従い続けてきました。いえ、逆らった人間もいたのでしょう。でも、誰も知りません。なんせ魔法の始祖。圧倒的な力を有しているのだから。いたとて、語り継いではならない。

 しかし、ここに来て状況は一変します。魔女に抗う勢力が誕生したのです。レオパード王国とセルコレス王国。2つの国が手を組み、魔女の討伐を掲げました。きっかけは、2人の魔法の逸材が生まれたから。その才を育て上げ、いよいよ決戦の時。2人の逸材を軸に、大国の有する幾数もの兵力、至る所から集った選りすぐりの魔法つかい達。繰り出される練るに練られた策略。――結果。無事に魔女の討伐を成し遂げました。その勝利を祝う宴の場から、もう一つの物語が始まります』


 ナレーションを終え、物語は始まる。説明の最中も背景に絵が流れ、客に分かり易く伝わるよう配慮されていた。思ってた以上に本格的な演出で感動している。

 気合の入り様が伝わってきてこちらまで身が入ってしまう。



 ――宴の会場。人々の賑やかな声が響く。



「……キターニア姫。ここにいたのね」


「あっ、シバ―ミア姫……。丁度私も会いに行こうと思ってたの」


 黄谷と柴崎、役は共に王国の姫。この二人を見て俺が真っ先に抱いたのは、あのドレス代めっちゃ高かったなぁ……という、開幕から現実に引き戻されるものだった。

 二着で約250万円。オーダーメイドで様々な機能が付いているからととんでもない金額になっていた。学園負担とはいえ、領収書を差し出す時は流石に気が引けた。それを何食わぬ顔で受け取るこの学園にも引いたが。



「そうだったの。じゃあ丁度良かったわね」


「ねぇ、ここだとちょっと騒がしいから、人気のない向こうで話さない?」


「ええ、いいわよ」


 二人は城のバルコニーへと移動する。


「うわぁ……綺麗な星だね」


「そうね。……まったく、ここまで来ても騒がしいわね。こんな城で、国民まで集めて宴だなんて、大袈裟じゃない?」


「みんな魔女に苦しめられてきたからね……。やっと平和な生活を送れるのが嬉しいんだよ」


「そっか。みんな必死だったものね。特にキターニア姫。その磨き上げられた魔術、素晴らしかったわ……だからソレ、ちょう――」


「ありがとう。でも、私はシバ―ミアちゃんに褒められたい。――だから、返してその身体」


「ッ――拘束魔法!? 何をするの」


「シバ―ミアちゃんは私のことを呼び捨てにしてくれるし、負けず嫌いだからそう簡単に褒めてもくれないよ。それに、星が大好き。勉強が足りてないんじゃない?」


「…………。フッ、そもそも騙す気がないのよ。なんでワタシが人間なんかに合わせなきゃいけないの。バカバカしい」


「やっぱり、やられたふりしてたんだね」


「アンタらなんか、いくら束になろうと、策を振り絞ろうが、ワタシに敵う訳ないでしょ。……でも、やっぱり……か。いい性格してるわねぇアンタ。前のは茶番だった。それ言ってないでしょ? 何人騙したの?」


「ねぇ、いいから早く返してよ。さもないと……」


「できるの……アンタに? 大切な親友なんでしょ」


「ちゃんと考えはあるから気にしないでいいよ」


「そう……。でも、それ上手くいかないわよ。こんなモノでワタシを捉えられると思った? 知ってるでしょ。ワタシのチカラ――厄剥がし(ファナデコレ)


「……拘束魔法が」


「ワタシはどんな魔法をも打ち消す。解析して。分解して、ね。……だって、この世界の知は、全て私の中にあるんだから」


厄剥がし(ファナデコレ)。――だったら、コレも打ち消してみてよ」


「だから言ってるでしょ、全ての……ッ!? これはっ」


「あれれー、どうして避けちゃうの? 全部打ち消せるんだよね? まさか、できないのー? もう一回打とうか」


「……精霊術。まだそんな力を隠し持ってたのね」


 キターニア姫の周りに無数の白い光の球体が出現する。


「流石だね。バレちゃうか。そう、精霊は清き心を持った者しか認識できない。醜い心を持ったアナタとは無縁の存在。精霊術の解析はできていないから、分解もできない」


「ちょっと違うけど、まぁそうね。……でも、別に精霊ならチカラを使えば認識はできる。――だから滅ぼした。術師含め一つ残らずね。……なのに、どこからそれだけの数を……たまに自然発生はするけど、抜かりなく塗り潰してるし。見落としていたとしても、これだけの数をどこで……それに形も……」


「別にどうでもいいでしょそんなこと――」


「フッ! ……あぁ、そういう……アハッ!! アハハァッ!! ……別世界の奴から魂だけを抜き出して、精霊として従えてるのね」


「っ!?」


「図星みたいね。そっか~、そのチカラならできるのね。もう、そんなの最高じゃナイ! ワタシが千年成し得なかった別世界への干渉。それが今、目の前にある。タノシクなってきたわ! 早く頂戴よ」


「あげないし、手に入らないよ。今からこの力でアナタを滅ぼすんだから」


「そうよねぇ。最高なチカラ。あげたくないわよねぇ。…………今すぐに欲しいケド。未知の能力。このまだ馴染みきってない身体じゃちょっとアブないかも。面倒だけど、日を改めようかしら」


「逃がすと思うの?」


「ええ。撤退させてもらうわ」


「無理だよ。この城の周りには何重もの結界が張り巡らせてあるから。アナタでも一気に分解なんてできないでしょ?」


「……そうかもネ。でもその心配はいらないの。――だって、勝手に解いてくれるんだもの」


「なにをいって――ッ!? なんで結界が解けて……」


「ほらね」


「キターニア姫。申し上げます。只今、城内で数名の人間が魔獣となり暴れ出したので、結界を解いて国民を避難させざるを得ませんでした。申し訳ありません」


「魔獣!? そんな……」


「こんなこともあろうかと、ってやつネ。ワタシを欺く為に国民まで呼んだんだろうけど、仇になったわね。さて、見晴らしも良くなったし、帰るとしましょうか。……じゃあね、キターニア姫」


「それでも逃がさない。今ここで――」


「いいのかしら? 結構強力な魔獣なハズだけど。今の疲弊した戦力で、アナタなしで対処できるのかしら?」


「魔女ッ……!!」


「そんな顔にシワ作らないで。ワタシが使うんだから。大丈夫。焦らないでも待っててあげるから。セルコレス王国でまた会いましょ。じゃ、またネ。……ちなみに、逃げたらこの身体は、こう。だから。フフッ」


「絶対に行く。覚悟しておけ……」



 キターニア姫が城内へ戻り、序章が終わる。

 ……いやぁ、すげぇな柴崎の演技。完全に狂ってやがった。台本にあんな笑い声なんて書いていなかったからビックリしたよ。確かに嬉しいもんな。

 大舞台でやる以上、俺が書いたものをそのまま出す訳にもいかないので、プロの脚本家の人の手が加えられている。軽い相談こそはしたが、ほぼお任せ状態。

 なので、変更部分を見つけるのが面白いし、他にも背面スクリーンを活かした魔法演出も本格的で、こういった部分に関しても俺は初見なので、内容を知っていても一人の客として楽しめそうだ。――いやまぁ、この舞台には元より未知の要素が大多数ではあるが。




          ☆




 舞台は切り替わり、翌日の早朝。眩しい日差しが差し込み、鳥のさえずりが響く。



「……キターニア姫。本当にお一人で大丈夫でしょうか?」


「はい。魔女への有効打を持っているのは現状、私だけですし、人質にでも取られたりしたらその手段さえ失ってしまいます」


「そうですよね。それでは、どうかご武運を」


「はい、それでは行ってきます」


 城から出て、歩を進めるかと思いきや、急に立ち止まり。


「――さてと、本当は馬車で向かいたかったけど、魔女が全部壊していっちゃったし、かといって移動の魔法とかも使えないし……あっ、そうだ! 精霊さん達の世界の移動手段を教えてよ。なるべく早いやつでお願い! ……えーと、なになに……くるま? へぇ~そんなのあるんだ。とりあえず出してみよ。――えいっ!」


 背面モニターに映し出される車。


「うわ~なにこの大きい箱、すごいっ! お馬さんがいないのにどうやって動くの? ……えっ、めんきょ? なにそれ。それがあれば動くの? お~い誰かそのめんきょってやつ持ってる人~? ……あれっ、いないの? じゃあ駄目じゃん。そんな乗るのが大変なもの出させないでよ~もう。他にはなんか、私でも乗れそうなのないの? ん、じてんしゃ? 分かった。じゃあそれにする。――えいっ!」


 今度はモニターではなく現実の自転車が現れる。


「おお~これなら私でも乗れそう! で、どうやって乗るの? ……ふむふむ、ここに座って……うーん、ドレスだと跨りにくいな~。いやさ、着替えられないんだよ~、このドレスは対魔女用に作られた特殊なやつだから。でも、動きやすくも作られてるから、なんとか乗れそう。……それで、後はここを踏んで……おお、凄い! 進んだー! どうなってんのこれ? バランス取るの難しいけど、たのしー!」


 ステージ上でドレスを着て自転車に乗る姿はやはりシュールでしかないな。


「よーし、それじゃあ出発進行だー!!」




          ☆




「はぁ……はぁ……自転車って便利だけど、疲れるね。ちょうど村が見えてきたし、ちょっと休憩してこっか。ほら、村の人が手を振ってくれてるし……おーい、ちょっと休ませてくださ~い」


「お待ちしておりました。キターニア姫」


「えっ、お待ちしてた……? 王国の人が伝え……いや、そもそも私はここに行くなんて……それになんかこの人の気配……」


「ええ。――魔女様からの命により、アナタを始末しろと承っているので」


「そんなっ!? 村の人が魔獣に。油断してたな……。こんなとこにも手を回しているなんて」


 背面モニターに現れる魔獣。この為だけにわざわざ作ってくれたそうで、普通にかっこいいし、何よりデカいから臨場感がある。


「戦うしかないね。いくよ精霊さん!」


 ステージは暗くなり、キターニア姫にスポットライトが当たる。通称周りの時が止まってる状態。


「――この世界にはね、魔法と別に魔術があって、簡単に言うと、魔法は学んで習得するもの。魔術は人が生まれ持つ固有のものなの。魔法は勉強して習得できるけど、魔術は個性豊かで複雑だから基本真似はできないの。ちなみに私は魔法が使えないの……。その代わり、とても強力な魔術は使えるんだけどね~」


 俺、男子だからこういう設定考えるの大好き。暇人故、バトルものの漫画アニメを見てきたノウハウが早くも活かせるなんて思いもしなかった。

 ちなみに能力の説明はナレーションで行う予定だったが、改変されている。確かにこちらの方が分かり易く頭に入ってくるな。


「そんな逸材と言われるこの私が扱う能力は……なんと、『思い描いた物を現実に出現させる力』。なのー! すごいでしょー! 名は青空の画角(ブランリベレ)。もう最強無敵の力! ……な~んて思うでしょ~。でも、現実はそんな甘くないの。……私は想像力が乏しくて、大した物も出せないし、人を攻撃だなんて怖くて考えたくもない。だから宝の持ち腐れ……。そこに訪れた妙案! ここでアナタ達、精霊さん達の出番ってワケ。精霊術は精霊さんと心を通わせて、術師の魔力を使って精霊さんの力を引き出すものなの。その手法をちょっと変えて、精霊さんの想像力を借りて具現化する。これなら私でも強い攻撃ができちゃう! どう、頭いいでしょ~? 褒めてくれていいよ。私が考えたんじゃないけど。――という訳でみんな、私と一緒に戦ってくださ~い!」


 会場は明るくなり、魔獣との戦闘が始まる。


「さっそくみんなの想像力を貸して! アナタ達の世界の知識がほしいの。一番強そうなやつ考えた人のを借りようかな。ファナリーエを使うと、私にイメージが伝わるからそれで教えてね!」



 特殊な形式の全貌が明らかになる。そう、この舞台は客が演者と共に話を進めていく形式となっている。お題が出る度に、生徒がそのテーマに沿ったものを打ち込み、抽選で選ばれたものが反映され、演者がそれに応じ演じる、という流れだ。

 その為、台本を書いた奴は空白で提出できていいが、演者や裏方の人達からすれば、高い適応力を求められる上、舞台の面白さがその手腕によって決まるといっても過言ではなく、背負うプレッシャーも大きいに違いない。……本当に申し訳ない。

 黄谷達とは何回か様々なパターンでシミュレーションをしているが、それでも上手くやれるかどうかはその場の流れ、思い付き次第。

 だが、抽選とは言っても、まず三分の一程ランダムに選出され、その中から裏方の人が目を通し、演じ易そうなものを選出する流れになっている。予め、この場面ではこういった系統のものを選ぶ、という取り決めもあるから、大きく想定を越えたものが選出されないようにはなっている。

 裏方の人達の役割はこれだけに終わらず、選ばれた内容に合わせ、予め用意されたBGMや映像を流す。と結構な負担を背負っている。初めてのことだからと意気込んでいたが、丸投げみたいな形となってしまい、改めて……本当に申し訳ない。


「……えーと、ど・れ・に・し――って、今選んでるんでるんだから攻撃しないでよ!」


 抽選にはラグがある為、こういった繋ぎを挟む必要がある。チョイスが完了すると、演者にはイヤホンから合図が送られる。

 さて、記念すべき一発目は何が来るか。


「よーし、じゃあこれにしよー!」



 No.88 ブラックホール。


 世界滅びた。



「……ブラックホール。現れよ!」


 なんで映像があるんだよ。なんか炎みたいでカッコいいな。でも、こんなん呼び寄せたらこの世界の原型が残らないと思うんだが。

 ちなみに、横のナンバーは生徒のアプリに割り振られたものだ。誰のものかが分かるようになっている。

 映像が終わり画面が戻ると、魔獣は悲鳴を上げ倒れる。……よく原型留めてんな。 


「ふぅ……無事倒せたね。それじゃあ、魔獣にされた人は体内の穢れを清める必要があるから、浄化してあげないとね……えいっ――」


「――ッ!? わ、私は何を?」


「こんなとこでお昼寝しちゃだめだよ。おじいさん」


「あ、アナタはキターニア姫。どうしてこんなところに?」


「ちょっとお散歩に来たの。それじゃあ私は行かないとだから、お元気で~。チリンチリン~♪」


「え、あ、はい。行ってらっしゃいませ…………なんだあの乗り物?!」


 エキストラの人もノリがいいな。



「ふぅ……休憩したかったけど、村の人に危害が加わるかもしれないし、仕方ないね。……えっ、電動アシスト? へー、楽になるんだー。すごい! じゃあ、付けてみよ……わっ、ちょっと漕ぐの楽になったよ。よーし、これでセルコレス王国まで一直線だー! 待っててね、シバ―ミアちゃん!」



 ――視点は替わり、魔女サイド。


「……ふーん、ブラックホールを出現させるだなんて。やりたい放題ねぇ。……それよりあの村人、ブラックホールに飲まれてどうして無事だったのかしら。実は優秀な奴だったりするの? 後で配下にでもしてやろうかしら。――でもって、やっぱり出来るのね。浄化。それも複雑な魂の魔獣を。まだ馴染んでない身体。アレをくらったら流石のワタシでもタダじゃ済まないわね。まっ、くらわないんだけど。――まだまだ未知数。もっと見ておきたいわね。ワタシの送り込んだコたち、役に立ってネ……」




           ☆




「……ふぅ、結構なとこまで来たね。巻き込む訳にもいかないから村は避けていかないとね。……って、ここは牧場? 友達のアーマツちゃんがいるとこだ! 久々に会いたいな……。まさか、こんなとこにまで手出してないよね? ……うん、妙な気配はない。よしっ、行こう! 休憩ついでに牛乳飲ませてもらおー!」


「おーい、マーちゃーん!」


「おう、キターニアじゃねぇか。久しぶりだな!」


「よかったー。マーちゃんは大丈夫そうで」


「大丈夫ってなんだよ? ほら、こっちこいよ」


「うん、牛乳ちょうだ~い。ひえひえやつ! 喉カラカラだよ~」


「おう、いいぜ。でも、その前にお前を始末してからな!」


「ちょっ!? なにするの? まさか、マーちゃんまで魔女の手に? ……変な違和感もないし、洗脳魔法にも掛かってない。いつものマーちゃんなのに」



 ――魔女サイド。


「村を避けてくことなんてお見通し。その道中オトモダチのとこに行くコトもね……。ワタシは身体を乗っ取った人間の記憶の書き変えができるの。例えば、日課の一つにキターニアの始末、とかね。あと、別にソレを選んだのはトモダチだからとかじゃなくて、いいモノを持っていたからなの。……しっかりと引き出しておいてあげたから。楽しんでネ♪」


 魔女の不敵な笑い声と共に視点は戻る。



「仕方ない、戦うしかなさそうだね。精霊さん、いくよ!」


「来てくれ、俺の友達!」


「えっ、私の国の兵士さん達が!? 魔女に洗脳されてる訳でもないのに、どうして?」


「忘れたのかよ、オレの魔術――万象友愛(アミアフェール)だよ」


「えっ、それは動物さん達にしか効かないんじゃ?」


「知らねーよ。起きたら出来るようになってたんだよ」


「……多分、記憶を書き換えたんだ。それと同時に能力を強化した。……許せない。マーちゃんは人から自由を奪うなんて絶対しないのに……。精霊さん達、あの騎士さん達を傷付けずに意識を奪う攻撃手段をお願い」


「よし、お前らやっちまえ!」


「防御魔法展開!」


「へぇ~、やるな。流石は姫になっただけあるな」


「私の国では最も優秀な魔法つかいが姫になるからね。――あっ、これなら丁度良さそう!」



 No.25 10万ボルト


 ※人が絶えられるのはせいぜい40ボルト程度。



「くらえ~ビリビリビリ~」


「なっ!? お、おい、大丈夫かお前ら」


 多分もう星になってるよ。


「へっへーん、どうだ!」


「クソッ。そんなことまで出来んのかよ……。どうして、お前ばっかり……」


「マーちゃん……?」


「はっ、まぁいい。本命はこっちだからな。空を見てみな」


「っ!? 大量の魔獣」


「遠くに待機させてたんだよ。これだけの数をどうにかできるか?」


「魔獣まで操るなんて……。精霊さん、あれを迎撃する攻撃をお願い!」


「へっ、逃がさねーぜ」


「逃げないよ。マーちゃんは人を攻撃するような人じゃなかった。本当のマーちゃんを取り返す……よし、これなら」



 No.167 巨大隕石。


 だから世界滅ぶって。



「いけー巨大隕石ー!!」


「なにぃ!? 空の魔獣達が……隕石で全滅しただと!?」


「流石精霊さん達! すごーい!」


「どうなってんだよ……お前の力」


「私じゃなくて、精霊さんが凄いんだよ」


「チッ、お前はいつもそうやって……才能に満ち溢れてるのに、自分を認めねぇ。ムカつくんだよッ! 素直に認めろよ……だったらオレはどうなるんだよ……」


「マーちゃん、さっきからどうしたの……? 記憶を書き換えられてるんだよね?」



 ――魔女サイド。


「いいわねぇ……。ワタシ好きよ。そういう醜さ。好物♪ ワタシが仕込んだのはただキターニアを仕留める。という使命だけ。それで蓋が外れてしまったのね。本当は牧師なんてしたくなかった。身近だった人間が遥か先を行き、劣等感に駆られる日々。積りに積もってたみたいネ。でも、素質あるわよ。そうやって、もっと野蛮になりなさい。何が友達? ただの支配でしょ。表面だけの慈しみなんて捨てて、もっと飢えなさい。そうすればアナタの夢、叶うわよ。――さぁ、もっとミ・セ・テ」


 視点は戻る。


「もういいオレが戦う。いくぞ――魔装・滅龍の破爪(ディコヴェルトラマン)。魔具起動(デマレ)魂をも裂く風(ルフロワディール)


 なにあの大剣、めちゃくちゃカッコよ!


「魔装に魔具……。マーちゃんの戦闘スタイル。……あぁ、精霊さん達は知らないよね。魔装は魔力を流して扱う武器。魔具は魔法を閉じめて、どこでも扱えるようにしたアイテム。あれは魔装に魔具で風の力を付与したの」


「誰とお喋りしてんだよ。オレ相手だからって余裕ぶっこいてんのか!」


「そんなことないよ。マーちゃんが強いのは知ってるよ」


「同情か? 今のオレを見てよくそんなこと言えるな……。お前はいつもそうだったよな。笑いながら人の心を無神経に踏みにじりやがる。オレはそれが……お前が嫌で王国を出たんだよ!!」


「マーちゃん……? まさか、本音なの……」


「これが嘘に聞こえるのかよ……。あぁ、そうだよなぁ。分かる訳ねぇか。叶わなかった者の歪みはな。オレだって……。オレだって……!」


「違う。私はそんなつもりで――」


「黙れッ。お前はオレが直接倒す! そうすれば、認められる。見返してやれるんだ……」


「っ…………。分かった。戦おうか。精霊さんは手を出さないで。私の力だけで戦いたいの。うん、大丈夫だから」


「手加減なんていらねぇ! 全力で来いよ!」


「じゃあ、追い詰めてみなよ」


「ッ! ――上等だ! いくぞ、オラァ!」


「風の衝撃波。これなら防御魔法で――っ! くっ、凄い威力。でもこんな大技、魔具の魔力量じゃあと1、2発が限界。だったら再び付与し直す時に――」


「オラッ、もう一発!!」 


「っ!? 剣に纏った風で自分を飛ばして急接近。最初の衝撃波はこれを読ませない為の刷り込み。でも、防御魔法があるから――」


「狙い通り! これで終わりだ!」


「新しい魔具。一体何を――ッ、防御魔法が壊れた!? この感覚、まさか――」


厄剥がし(ファナデコレ)だったか? いいもん貰ったぜ。再展開の隙は与えねぇ! 終わりだァ!」


「――やっぱり、マーちゃんだね」


「ッ!? 拘束魔法。詠唱はなかった。魔具か? ……そうか、防御魔法で隠して予め展開してたのか。……まさか、この手を読んでたっつうのかよ?」


「流石に魔女の魔具なんて読めないよ。でも、マーちゃんって昔から何か企んでる時は口元がにやけるから、すぐ分かるんだよ。だから防御魔法を破ってくるって分かってた」


「……なんだよ、それ」


「ばーん、どーん。はい。マーちゃんのまけー」


「ふざけんなッ!! こっちは殺す気で戦ったんだ。とどめを刺せよ! おいっ…………なんだよその目。お前はどこまでオレのことを……」


「ねぇ、その魔装貸して。……これ凄く高いやつだよね。頑張ってお金稼いで買ったんだよね。でも、違うんだよ。マーちゃんは。――魔装はね。こう使う物なの」


「な!? なんだよ、その形……」


「本来、魔装はね。高い魔力を流すことで本来の力を発揮するものなの。でも、魔力消費が大きくて使いにくいし、高い魔力を持った人はそもそも強力な魔法を使えるしで、魔法が発展してく中で廃れていった物なの。だから、そのことを隠して、不要となった物が売りに出されるようになったの……」


「そんな……。チキショウ! どいつもこいつも…………ははっ、お前は前からずっとオレに同情してたんだな。よく分かったよ。……クソッ、クソがッ!」


「――それが優しさだと思ってた」


「優しさ? ふざけんな! お前は、悪魔だろ……」


「私のことはいくらでも嫌いになってくれていい。でも、自分のことは嫌いにならないで」


「できるかよ……オレは、こんな惨めな自分が大っ嫌いだよ!」


「やり方が間違ってたんだよ。大丈夫。マーちゃんは強いよ! なんせ、魔女が認めたんだからね! だから、まずは自分と向き合ってみて」


「やめろよ……。そんな顔すんじゃねーよ……」


「じゃあ、記憶を元に戻してあげるから…………よし、できた。それじゃあね。――さよなら……マーちゃん」



「っ…………待っ……違うんだ。オレは……オレはただ…………お前と……」



 ――魔女サイド。


「は~~~くっっっだらな。バカじゃないの。なんでその魔術を持っておきながら自分で戦ってるワケ? あっっったまワル~。もっと別人格埋め込むくらいしとくべきだったかしら。好奇心に走り過ぎたわね~。まぁ、どうでもいいケド。アイツの力を見たかっただけだしね。それより、ワタシの記憶改変をも解くなんて……。あの力、本当になんでもできるのね。……あー、ワタシだったらもっと面白くできるのに。早くほしいなァ……」




 ……いやぁ、凄かった。何が凄かったかって、中盤辺りから怒涛の知らん展開だったことだ。俺が書いた時はただ淡々と戦って終わるところを、なんか凄い人間ドラマが始まって驚いた。


「……お前。あの女を俺に見せなかったのは、差を際立たせる為だろ?」


「人聞きの悪いことを言わないでください。監督の手を煩わせては悪いと思っただけですよ」


「ハッ、言っときやがれ……。まっ、でもアレは仕込まれてんな。残念だったな」


「だからそんなんじゃないですって」


 元より流創アイドルは1年の時から演技を仕込まれているから、そう差が出るものでもない。ただ、他所のアイドルにそう気を掛けてやる必要もないから、勝手にさせてたってだけだ。

 それに、柴崎と並ぶ以上、どうやっても他者の演技はかすむ。元より今回の黄谷のアドバンテージは主役である故の目立ち、出番の多さ。そして――。

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