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転猫  作者: 相川秋実
第一章
95/137

95. 幻流の剣士①

「・・・囲まれてんな」

「ああ。背後と左右。だいぶ距離を取っているが、狙いは俺達と見て間違いねえだろうな」


 ガイアの言葉にクラウスが頷いた。

 二人は並走する馬車の御者をしているが、少し前から彼らが操る馬以外の蹄の音が微かに聞こえてきていた。

 町の東は元々道らしき道のない、昼間でも人通りがほとんど無い場所だ。

 しかも今は草木も眠る真夜中である。

 偶然クラウス達を見つけて襲おうとしているとは考えにくかった。


「速度を上げて突破するか?」

「いや、おそらく待ち伏せされているだろう。俺らの作戦は全てばれたと見た方がいい。完全包囲される前にこっちから打って出るべきだろうが・・・」


 薄暗い闇の中にあって、蹄の音は乱れることなくピタリと着いてくる。

 敵はある程度統率の取れた手練なのだろう。


 ・・・チンピラの寄せ集めでは無いな。ゲオルグ子飼いの私兵といったところか。


 クラウスは内心で舌打ちを打った。

 金に飽かせて集めたというゲオルグの私兵は、本当かどうかは定かではないが小国の軍隊にも引けを取らない質の高さという事で有名だった。

 なかでも隊長は、()の四大流派の一つツヴァイフボーデン流を修めた剣士らしい。

 戦うには厄介な相手だった。


「俺が右、お前が左で。終わったら背後を叩くぞ」

「分かった。ミシル達は?」

「呼んでる暇はない。騒ぎの音で起きるだろうさ。行くぞっ」

「おうよっ!」


 2人は馬車を急停車して馬から飛び降りると、それぞれの獲物に向かって暗闇の中を駆けて行った。



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