93. おっと、ここは通さねーぜ。
場内から音が消えた。
完全に想定外となった結果に、観客の誰もが声も出せずただ呆然とリングを眺めている。
ゲオルグも口をあんぐりと開けたまま、真っ二つになった亜竜を凝視していた。
俺はリング端まで戻ってヘテロに声をかける。
「ヘテロ、行くぞ。リサを」
「っ、ああ」
ヘテロはリサの手を取り立ちあがらせる。
そしてリサを引っ張りながら俺に続いて地上への階段を目指して走る。
「あ。お、おいっ!誰かっ!その小娘どもを捕まえろ。殺しても構わん、絶対に逃がすんじゃねえぞっ!私のイベントをぶち壊しにしやがってえっ!」
ゲオルグはあまりに激高しすぎたのか口調が変わっている。
その喚き声を聞いて我に返った部下が俺達を追ってくる。
さらにゲオルグの声に呼応して、虎のような生き物が俺達の行く手を阻んだ。
「に”ゃ~に"ゃっ!(クソどもが調子に乗ってくれましたねぇ。簡単には殺しませんよ。めちゃくちゃ痛ぶってからに"ゃっ!)」
・・・こいつ居たのか。
以前ちょっと殺気を放っただけで飼い主の影に隠れてガタガタ震えてたくせに、俺の前に立ちふさがるとはいい度胸である。
あ、今の俺の姿じゃ分からないのか。動物のくせに鈍いなこいつ。
俺が通り抜けざまにチョップを放つと、まだ何かごにょごにょ言ってたブサデブ猫は床に突っ伏して沈黙した。
・・・何しに来たんだこいつ。




