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転猫  作者: 相川秋実
第一章
89/137

89. 生贄姫と奴隷騎士④

 はたしてすぐに勝負が着くかと思われた戦いは、しかし思いのほか長引いた。


 男達がチンピラ程度の技量しかなかったというのも一因ではあるが、ひとえにヘテロの奮闘に寄るところが大きいだろう。

 ヘテロは襲い掛かる剣戟全てを避けることまではできないものの、しかし致命傷にならない様に上手い具合に立ち回っている。

 攻撃も思い切りがよく躊躇が無いので、剣で受けた相手の剣ごと押し切って傷を与えていた。


 アインベルグの拠点からシスイまでの間に多少なりとも俺やクラウスの手ほどきを受けていたとはいえ、この短期間でここまで腕を上げるとは・・・。

 どうやらヘテロには剣才があるようだ。

 鍛えてやれば、かなりいいところまで行くかもしれない。

 アインベルグに戻ったら正式に稽古をつけてやるのも面白いかもしれないな。


 剣才があり教える師も良かったとはいえ、しかし所詮は付け焼刃。

 一人でこの数の敵を相手にし続けることはなかなか難しい。

 ヘテロはだんだん息があがり動きも遅くなってきた。

 その身に受けた傷も徐々に増えてきている。


 そしてついにヘテロは男の一人に背後を取られて袈裟に斬りかかられた。


 ・・・ここまでか。


 ザシュシュシュシュッ!


 連続して起きた風切り音とともに、血が舞った。


 音と同時に崩れ落ちる男達。


「姉御かっ?」

「にゃ~ん(おうよ。まだまだ詰めが甘いなヘテロは)」

「助かったぜ。っ!リサは無事かっ!?」


 ヘテロが勢いよくリングに振り返る。

 リング上では、格子を掴み固唾を飲んでヘテロを見ていたリサが、急に振り返ったヘテロと目が合いあたふたしていた。


 そしてその背後にいたはずの亜竜は、リサからだいぶ距離を取り大扉のあたりまで戻っていた。

 俺が殺気を放って睨みを利かせていた効果である。


 俺はリサが出られるように格子を切り裂き、リングに上がると同時にリサの影に隠れて人化した。


 亜竜は距離を取りつつも人化をした俺に向かって低く唸っている。

 俺の殺気を浴びても戦意は失っていないらしい。

 ヘテロとリサを連れて逃げる際に背後から襲われるのも困るし、後で他の人が相手をすることになるのも後味が悪い。


 やはり、こいつはこの場で倒しておくべきか。


「ヘテロ。その子を」

「ああ。任せろ」


 みなまで言わなくても、ヘテロはリングに上がってリサを抱きよせていた。

 守れ、って言おうとしたんだけど、守るだけならリサの近くで警戒してればいいだけなのだけど、何故(なにゆえ)ちゃっかり抱き寄せているのか。

 しかも本人は無自覚なのにリサはなんか頬を染めてるし。


 ・・・まー、いーけどね。


 さて、ちゃっちゃと倒して帰りますかね。


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