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転猫  作者: 相川秋実
第一章
81/137

81. 協力者


「なんやあんちゃん。あんたも闘技大会に出場するんかいな?」


 ガラの悪いあんちゃんがレスをあんちゃん呼ばわりした。

 ややこしいな。


「いえ、あいにく闘技大会に出る暇は無いものですから」

「そうか、それは良かった。一応うちのお嬢は優勝目指しとるから、ライバルが減るのはありがたいこっちゃね」

「師匠。確かに私は未熟者ですが、いくら何でも貴族の方に負けるほど弱くはないと自負しておりますが?」

「・・・お嬢はまだまだやなー」


 むっとしている女剣士に対して、ガラの悪いあんちゃんは生暖かい目で女剣士をみている。

 女剣士とのやり取りを見ている限り、ガラの悪いあんちゃんは見た目に反して割といい奴っぽいようだ。


 ・・・これは、ちょうどいいかもしれないな。


 俺は今浮かんだ考えを伝えるべくレスの顔をじっと見た。

 レスは特には反応しなかったが、

「実はこの国には人を探しにきてまして・・・」

 と、俺の意図を汲んだ発言をしてくれた。


 どうやら言いたかったことは伝わったらしい。


 レスは2人に対して、奴隷として捕まったリサという子の行方を探している事を伝えた。

 もっとも、奴隷になった経緯については、知人の子供が奴隷と間違われてこの国に連れていかれてしまった、というようにぼやかしてはいたが。


「なんという事だ。許せんな」


 レスの話を真剣な顔で聞いてくれた女剣士は、開口一番に憤慨した様子でそう言った。


「それが事実やとしたら結構問題やね。この国で奴隷商が容認されているのは、誘拐などの犯罪行為で奴隷を確保してはならない、という法があるからやしね」

「しらみつぶしに奴隷商人どもを締め上げていきましょう。元々やつらは気に喰わなかったのです」

「まぁ落ち着き。それであんさん・・・そういえば自己紹介もまだやったね。ワイはガレオ。剣だけが取り柄のしがないおっさんや。よろしくな」


 ん、剣・・・?

 

 聞き捨てならないセリフに、俺はガレオの姿を上から下まで見直した。

 物腰は確かに隙が無く達人と言えなくもない感じはしたが、剣はおろか武器らしきものを何も持っていない。

 荷物も持っていないので、どう考えても丸腰だ。

 宿にでも置いてきたのだろうか?


「私はレミリア・ドラグ・・・」

「ちょー、お嬢っ!」


 慌てた様子のガレオの声に、女剣士はハッとした顔をした。

 そしてしばらく硬直した後に咳ばらいをすると、再び名乗りなおした。


「私はレミリア。神セン流の剣士の端くれだ。私のことは気軽にレミと呼んでくれ」


 名乗って胸を張るレミ。

 その横ではガレオが額に手を当ててため息をついている。


「私はレスリー。猫と旅を愛するしがない旅人です。どうぞレスとお呼びください」

「しがない旅人、ね。どう見てもどこぞの貴族サマって感じやけど。それでレス殿。その知り合いの子が、どこの誰に捕まったかって情報はつかんどるんかいな?」

「いえ、そこまでは。今掴んでいるのは・・・」


 レスは先ほど俺と会話をした内容、リサなる奴隷の少女が闘技大会の余興に使われるという話と、しかし闘技大会で魔物と戦うのは奴隷の少女ではなく昨年の闘技大会のチャンピンであるという話をした。


「・・・ふむ。確かに妙だな。伝統あるシスイ建国祭の闘技大会でそのような余興をするとは思えないが。その情報は確かなのか?」

「にゃ(ああ。同じ時期に奴隷商人に捕まった奴から聞いた情報だ。たぶん間違いってことはないと思う)」

「ええ。同じ時期に誘拐されて奴隷にされた方から聞いた確かな情報です。その方はたまたま保護できたのですが・・・」

「う~ん。つまり知り合いの子が余興で出させるのは闘技大会ではあるけど、シスイ建国祭の闘技大会ではない、ってことかもしれへんね」

「どういう事です師匠?」


 レミが眉根をひそめた。


「いやね。実は建国祭では2つの闘技大会が開催されるらしいんよ。シスイ国主導の通常の闘技大会の裏で、地元の有力者達が仲間内で開催するものがね」


 ガレオが言うには、金持ちや貴族しか参加できない裏闘技大会とでも呼べるようなものが開催されていて、そこでは表にできないような血なまぐさいルールで試合が行われているそうだ。

 余興で魔物と奴隷を戦わせるとしたら裏の方の闘技大会だろう、とのこと。

 裏闘技大会は闘技大会の夜に開催されるらしいから、明日の夜に開催されるという事になる。


 ちなみに裏闘技大会にはガレオ自身も招待されているらしい。

 どうりで詳しいわけだと思ったが、その論で言うとガレオも何がしかの有力者なのだろうか?


「師匠、我々もレス殿の力になりましょう」

「我々って、ワイも入るんかいな。レス殿なら別にワイらの力を借りんでも、一人で問題ないんちゃうか?なんなら場所だけ教えるが・・・?」

「師匠っ!なんてことを言うのです。それでもあなたは誇り高き侍なのですか!?」

「いや、ワイは別に侍やないんやけど・・・」


 困ったように呟く師匠。


 しばらくガレオとレミの話し合いが続いたが、最終的にはレミの説得にガレオが折れて俺達に協力してくれることになった。


 俺達は明日の闘技大会で合流する約束をすると、その日は解散することにした。


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