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転猫  作者: 相川秋実
第一章
80/137

80. 再会


「にゃ?(レスか?)」

「ふふ。さすがですねリョウ様。気配は完全に断っていたつもりだったのですが」


 レスは断っていた気配を戻したようで、俺の背後にはっきりとした気配が生じた。


 どうでもいいが、なんで気配を消していたのだろうか?

 そしてばれなかったら、俺に何をするつもりだったのだろうか?

 ・・・いちおう驀矢崩拳(バクヤホウケン)を撃っといた方がよいだろうか?


 俺が思案にくれていると、レスの方から話しかけてきた。


「ここで何をしているのですか?何か問題でも?」

「にゃ?(ん?ああ、実は・・・)」


 俺はカクカクシカジカと今までの経緯を説明した。


「なるほど、そうでしたか。確かにおかしな話ですね。祭りとはいえ公衆の面前で魔物に子供を襲わせるとは。いくら奴隷の存在が許されている国とはいえ考えづらいですが・・・」

「にゃ?(だよな。・・・てか、ちなみにそっちの準備は終わったのか?)」

「ええ、万事滞りなく。他のメンバーは既に宿で休ませています」


 なるほど。すでにやるべきことを終えて夜に備えているわけか。

 あとの懸念はリサを見つけて助け出すだけだが・・・これは困ったな。


 俺はレスの肩に乗っかると、とりあえず闘技大会の会場に行くことにした。



 闘技大会の会場はまだ敷設中だった。

 大きな広場に巨大な魔法陣が描かれており、さらにその中央には石製のリングが3つ置かれている。

 リングの周りには雛壇のようなものが円状に配置されていて、スタッフらしき人達がその上に椅子を配置しているところだった。

 観客席ってところだろうか。


 広場の入り口には簡易な屋根が張られた受付が置かれている。

 受付の前に来たところで、ふいに呼び止められた。


「あ、猫ちゃんっ!」


 声の方を振り向くと、前にルクスマダで会った女剣士がこちらに駆け寄ってきていた。


「やっぱりあの時の猫ちゃんか。また会えたね」


 女剣士はレスの肩から俺をひったくるとその胸に抱きしめた。


 ・・・苦しい。相変わらず力加減がおかしいな。


「おや、これはこれは。以前は連れがお世話になりました」


 レスがにっこりと笑って女剣士に会釈をした。


「いや、礼を言われるほどの事はしていないさ。まさか貴殿達もシスイに来ていたとはな。お互い建国祭に間に合って何よりだ」

「なんやお嬢。知り合いかいな?」


 ちょっと離れたところから、女剣士に声をかけながらガラの悪い兄ちゃんが近づいてきた。

 赤や黄色の原色で彩られた派手な色使いの半そでシャツと、茶色の短パンにサンダルといういで立ちである。

 いかにも軽薄な遊び人といった風な雰囲気だ。


「ええ、ルクスマダで会ったのですが、とてもかわいい猫ちゃんと飼い主の方です」

 

 女剣士はガラの悪いあんちゃんに敬語で返した。

 雰囲気的に二人は相いれない様に見えたが、どうやら知り合いだったらしい。


 女剣士は、ほら、とばかりに両手で抱えた俺をガラの悪いあんちゃんに突き出した。


「にゃ~・・・」


 もうどうにでもしてくれ。


 俺は半ば投げやり気味に鳴いて見せた。


「ほー、確かにかわええ黒猫やね。なんか心なしか投げやりな感じやけれども・・・」

「そこがまたかわいいのですよっ!」

「ぎにゃっ!」


 再びぎゅっと抱きしめられる俺。

 背骨が軋む音が聞こえる。そろそろ骨とか心とかが折れそうなんですが。


 「それで、お二方は闘技大会に参加されるのですか?」

 「ん?ああ。出るのは私だけだがな」


 女剣士は修行の一環として闘技大会に参加するそうだ。

 闘技大会には様々な流派の戦士が参加するので、腕を磨くには持って来いの場なそうだ。

 

 俺も出たかったなー・・・。

 かなり、相当、めっちゃ残念だ。




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