80. 再会
「にゃ?(レスか?)」
「ふふ。さすがですねリョウ様。気配は完全に断っていたつもりだったのですが」
レスは断っていた気配を戻したようで、俺の背後にはっきりとした気配が生じた。
どうでもいいが、なんで気配を消していたのだろうか?
そしてばれなかったら、俺に何をするつもりだったのだろうか?
・・・いちおう驀矢崩拳を撃っといた方がよいだろうか?
俺が思案にくれていると、レスの方から話しかけてきた。
「ここで何をしているのですか?何か問題でも?」
「にゃ?(ん?ああ、実は・・・)」
俺はカクカクシカジカと今までの経緯を説明した。
「なるほど、そうでしたか。確かにおかしな話ですね。祭りとはいえ公衆の面前で魔物に子供を襲わせるとは。いくら奴隷の存在が許されている国とはいえ考えづらいですが・・・」
「にゃ?(だよな。・・・てか、ちなみにそっちの準備は終わったのか?)」
「ええ、万事滞りなく。他のメンバーは既に宿で休ませています」
なるほど。すでにやるべきことを終えて夜に備えているわけか。
あとの懸念はリサを見つけて助け出すだけだが・・・これは困ったな。
俺はレスの肩に乗っかると、とりあえず闘技大会の会場に行くことにした。
闘技大会の会場はまだ敷設中だった。
大きな広場に巨大な魔法陣が描かれており、さらにその中央には石製のリングが3つ置かれている。
リングの周りには雛壇のようなものが円状に配置されていて、スタッフらしき人達がその上に椅子を配置しているところだった。
観客席ってところだろうか。
広場の入り口には簡易な屋根が張られた受付が置かれている。
受付の前に来たところで、ふいに呼び止められた。
「あ、猫ちゃんっ!」
声の方を振り向くと、前にルクスマダで会った女剣士がこちらに駆け寄ってきていた。
「やっぱりあの時の猫ちゃんか。また会えたね」
女剣士はレスの肩から俺をひったくるとその胸に抱きしめた。
・・・苦しい。相変わらず力加減がおかしいな。
「おや、これはこれは。以前は連れがお世話になりました」
レスがにっこりと笑って女剣士に会釈をした。
「いや、礼を言われるほどの事はしていないさ。まさか貴殿達もシスイに来ていたとはな。お互い建国祭に間に合って何よりだ」
「なんやお嬢。知り合いかいな?」
ちょっと離れたところから、女剣士に声をかけながらガラの悪い兄ちゃんが近づいてきた。
赤や黄色の原色で彩られた派手な色使いの半そでシャツと、茶色の短パンにサンダルといういで立ちである。
いかにも軽薄な遊び人といった風な雰囲気だ。
「ええ、ルクスマダで会ったのですが、とてもかわいい猫ちゃんと飼い主の方です」
女剣士はガラの悪いあんちゃんに敬語で返した。
雰囲気的に二人は相いれない様に見えたが、どうやら知り合いだったらしい。
女剣士は、ほら、とばかりに両手で抱えた俺をガラの悪いあんちゃんに突き出した。
「にゃ~・・・」
もうどうにでもしてくれ。
俺は半ば投げやり気味に鳴いて見せた。
「ほー、確かにかわええ黒猫やね。なんか心なしか投げやりな感じやけれども・・・」
「そこがまたかわいいのですよっ!」
「ぎにゃっ!」
再びぎゅっと抱きしめられる俺。
背骨が軋む音が聞こえる。そろそろ骨とか心とかが折れそうなんですが。
「それで、お二方は闘技大会に参加されるのですか?」
「ん?ああ。出るのは私だけだがな」
女剣士は修行の一環として闘技大会に参加するそうだ。
闘技大会には様々な流派の戦士が参加するので、腕を磨くには持って来いの場なそうだ。
俺も出たかったなー・・・。
かなり、相当、めっちゃ残念だ。




