78. ドナドナ③
しばらく歩いて辿り着いたのは、レンガ造りの大きな建物だった。
大きな造りに似合わないこじんまりとした入り口から入り、地下へと続く階段を下っていく。
地下には複数の牢屋があった。
それぞれに奴隷らしき人達が数人ずつ入れられている。
皆が一様に粗末な服を着せられ、手と足には枷がはめられていた。
なんとも痛々しい姿である。
俺達は廊下を進んで一番奥の牢獄に入れられた。
「リサがいない・・・」
廊下を歩む最中に左右の牢獄をキョロキョロと見ていたヘテロが、血の気の引いた顔で呟いた。
「にゃ?(リサとは誰だ?)」
「アンナの妹だ。俺達と一緒に売られたはずなんだが・・・」
アンナって誰だっけ?
とは口には出さなかった。
確かヘテロの妹の友達だった・・・と思う。
「お前、ヘテロか?」
俺達のいる牢屋の正面の牢屋から、やおらヘテロに声をかける者があった。
声をかけてきたのは、ヘテロより2・3歳ほど年上くらいの若い男だった。
「アリのあんちゃんか。無事だったのか。なあ、リサを知らないか?」
ヘテロの問いかけに、アリとやらは辛そうに歯を食いしばっていた。
「・・・リサは、リセンとかいう奴隷商人の部下に連れてい行かれちまった」
「なんだって!もう売られちまったのか!?」
「いや、そうじゃなさそうだ。俺達がこの町に連れてこられてすぐのことだったんだが・・・」
アリが語り出したところによると、どうやらリサという子は闘技大会の余興で魔物と戦わされる事になったらしい。
ゲオルグのクズ野郎が「美しい女子が無残に切り裂かれれば、さぞかし余興は盛り上がるでしょうねぇ」とかほざいていたそうだ。
「ふざけんじゃねぇ!」
ヘテロが悔しそうに叫んだ。
これはまずいな。どうやら皆で脱走する前に、リサとやらの位置を確認しなければならなくなった。
「にゃ(ちょっとリサとやらを探してくるわ。明日の闘技大会までにはリサとやらを助けよう)」
「っ! すまねぇ、よろしく頼むぜ姉御」
「姉御?え?いま猫と喋ったのか?」
戸惑うアリをよそに、俺はヘテロの頭を踏み台に壁に向かって飛んだ。
そして壁の煉瓦に爪を引っ掻け一気に駆け上がると、天井付近の格子のはまった窓から外へと抜け出した。




