77. ドナドナ②
クラウスが差し出した鱗はその辺にいた魔竜から拝借したものだ。
クラウスの報告に信ぴょう性を持たせる必要があったので、アインベルグの拠点にいた時にレスに竜化をしてもらい鱗を剥がしておいたのだ。
鱗を剥ぐのは爪を剥ぐようなイメージがあったのでさすがに申し訳なく思っていたのだが、俺に傷をつけられたことに恍惚の表情を浮かべながら喜びに打ち震える姿を見て、感謝の気持ちも消え失せた。
どうやらレスの頭は常に状態異常が掛かっているらしい。
「なるほど・・・魔竜の鱗ですか。どうやら貴方達が魔の領域で竜に襲われたというのは間違いないようですねぇ」
鱗を手に取りしげしげと眺めるゲオルグ、その目が細まった。
「ちなみにこの鱗は当然私に頂けるのですよねぇ?」
「・・・本来、クエスト中に手に入れた物は元々の指示が無い限りは俺達の物だが。まぁ今回は奴隷を連れてくるのが遅くなった迷惑料として受け取ってくれて構わねぇ」
クラウスの言葉に、ゲオルグの顔が見て分かるほどの喜色を浮かべた。
「ほっほっほ。それは素晴らしい。では今回の遅れは不問にいたしましょう。それで、奴隷どもですが・・・。ふむ、これはまた上物ですねぇ。高く売れそうだ」
ゲオルグはソファーから立ち上りタロジロの目の前まで歩み寄った。
同時に膝の上にいた大猫も床に降りて、主人について俺達の方までやって来る。
ゲオルグは間近でタロジロ達の全身をじろじろと舐めるように見ていった。
商品価値を評価するのに必死なゲオルグは気付いていない様だが、今にも殴り掛かりそうなジローの腕をタローがそっと抑えている。
ちなみにゲオルグはヘテロには一瞥もくれてない。
うん・・・まぁ、がんばれヘテロ・・・(´・ω・`)
タロジロは素材はいいしなー。将来が楽しみである。
ふと視線に気づいてそちらを見ると、大猫が飼い主同様の下卑た視線で俺を見ていた。
「に”ゃ~~~~~~(これはこれは、美しいお嬢さんですねぇ。実に私好みだ。光栄に思いなさい、私の101番目の妻にしてあげましょう)」
にやりと笑うその口から、生臭い血のような臭いが漂ってきた。
・・・てかこのブサ猫、ハーレムを築いてやがるのか。
俺は心の奥底から淀みのような得体の知れないものが激しく湧き上がってくるのを感じた。
人はこの感情を嫉妬心と呼ぶのだろうか。
俺は大猫をじっと見つめ返すと、にっこりと微笑んで見せた。
そしてだらしなく顔を緩める大猫に対し、可愛らしく鳴いてみせる。
「にゃ~ん♪♪♪(うるせえブサイク♪くっせえ息で俺に話しかけてくるんじゃねぇブサイク♪それ以上口を開いたら去勢するぞブサイク♪)」
そして大猫にだけ届くように軽く殺気を放った。
「に”ゃっ!」
大猫は毛を逆立てて驚くと慌てて飼い主の影へと隠れて行った。そして主人の影で小さくうずくまり、ガタガタと震えだす。
ゲオルグはそんな飼い猫の様子に気付いたようもなく上機嫌なままだ。
そしてゲオルグはタロジロの価値を測り終えたのか、クラウスに向き直った。
「ほっほっほ。すばらしいですねぇ。謝礼は少々色を付けましょうか」
ゲオルグはクラウスにそう告げると、部屋の隅に佇んでいた使用人らしき男に目を向けた。
「この奴隷どもを商品倉庫に連れていきなさい。いいですか?くれぐれも丁重に扱って、傷をつけないようにお願いしいますよ?傷をつけたら、百倍にして貴方の体に刻むことになりますからねぇ」
「はっ!」
指示を受けた男は緊張した面持ちで返事をすると、俺達をゲオルグの屋敷から連れ出していった。




