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転猫  作者: 相川秋実
第一章
74/137

74. 作戦会議

 キャラバンがシスイ国に到着する前日の夜。


 俺達は一つのテントに集まっていた。

 今後の方針を話し合うためである。


「さて、じゃあ奴隷達を開放する具体的な方法を考えようか」


 この場には俺が魔猫と知っている奴しかいないので、直接口で話すことにした。

 念話は微量ながらも魔力を消費するし、対象を選択しなきゃいけないしと結構めんどくさいのである。


「その前に聞きてえんだが、旦那達は解放した奴隷達をどうするつもりだ?」


 発言したのはガイアである。

 ここ最近ヘテロと意気投合したせいか、ガイアは俺達への態度も軟化させつつあった。

 ちなみに旦那というのは俺の事らしい。

 クラウスがそう呼んでいたからか、他のメンバー達も俺のことをそう呼ぶようになったようだ。


「そうだな、一旦はアインベルグの拠点に連れて行こうと思う。あそこなら安全だし、衣食住ともそれなにりに揃っているからな。その後のことは人によると思う。帰る場所があるなら送ってやるし、無いってんなら他の町に住めるように手助けをしてやってもいい。もっとも、俺らができることなんてたかが知れているかもしれないけどね」

「・・・解放した奴隷達が他の町に住むのは難しいだろう。奴隷に一度落ちると自由市民に戻るのは難しいからな」


 クラウスが渋い顔で意見を述べた。

 クラウスが言うには、ある程度発展した国や町は住民を戸籍で管理しているらしい。

 そういったところに素性の知れない人間が行っても、住民として受け入られる事は難しいそうだ。

 どうやら元奴隷とういう立場でまともな生活を得るのは相当大変なようである。


「まあ、帰る場所も行く場所も無いってんならアインベルグの拠点に住み着くというのもよいかもね。土地は余っているし、農業くらいはできるんじゃないかな?」

「元々あの辺りは農業が盛んでしたからねえ」


 千年も前の話になりますが、と言いながらレスが懐かしげに目を細める。


「・・・そうか」


 クラウスはそう言ったきり何かを考え込むように黙り込んだ。

 ガイアは腕を組んで目をつぶっている。考える脳は筋肉でできているだろうから、考える風を装って立ったまま寝ているのだろうか。

 他の仲間達も互いに顔を見合わせたりクラウスの方を見たりと、なんだか落ち着かない感じだ。

 どうやらそれぞれ色々と思うところがあるようだ。


「まあ、先の事は拠点でゆっくり考えればいいさ。直近の問題はどうやって奴隷達を開放して、拠点まで無事に連れていくか、だ」


 ヘテロの知り合いは、少なくとも10人はいるそうだ。

 同じ場所にいる他の奴隷もついでに開放すること考えると、倍の20人は見ておいた方がいいかもしれない。

 かなりの大所帯である。

 往来を歩くだけでもかなり目立つだろう。どうやって奴隷商人達に察知されず追手から逃げるのびるか、はかなり難易度が高いミッションといえると思う。


「へにゃ~?(僕たちが奴隷のふりをして乗り込んで、集められた場所から他の人達を連れて逃げるというのはどうでしょうか?)」


 俺の頭の上でタローが発言した。

 なかなか賢いなこの子。

 もちろん俺もそのつもりでヘテロ達の人数と男女比を合わせたのだが。

 ちなみにタロジロともに元のトカゲ?の姿に戻って、俺の頭と背の上でくつろいでいる。

 どうでもいいけど、最近タロジロにソファーベッド扱いされている気がしてならない。


「ああ、そうしよう。ヘテロとタローとジローには、一旦他の奴隷達と合流してもらう。ヘテロなら他の奴隷達の顔が分かっているしな。問題は逃げ方だが・・・」

「くにゃ~(敵を皆殺しにすれば逃げなくてもいいんじゃないの?)」

「そうですね。それが一番手っ取り早くはありますが」


 ジローのつぶやきにレスが乗っかった。


「・・・なるべく穏便に行こうぜ。俺が見張りをなるべく死なない様に無力化するから、他の皆はその後で捕まっている人達を助けてくれ。捕まってる人達を解放した後は、誰にも見つからない様に皆で町を出て、町の外に用意した移動手段を使ってアインベルグに連れていく。移動手段は町で馬車でも買えばよいかな?さて、この流れだとやはり一番の課題は町の外にどうやって出ていくか、ってところかな?」

「宵闇に紛れて脱出すればいいんじゃねぇか?」

「そうだな。ただ、夜の闇の中で行動したとしても人数が人数だ。繁華街の店なんかは朝までやっているだろうから起きている人間もいるだろし、ぞろぞろと動いてたらさすがに目立つだろう。夜間に町中を巡回する警備隊なんかもあるかもだしな」


 ガイアの提案はなかなか要領を得ていたが、それでも上手く脱出できる可能性は高くない様に思えた。


「なるべく繁華街から離れた道を通って町外に出る必要がありますね。町外への脱出経路は、事前に入念に調べておく必要があるでしょう。色々やるべきことがあるので、役割を分担したほうが良いかもしれませんね」


 レスの意見に俺は頷いた。

 脱出経路の調査と逃亡のための足の確保。捕まっている人達の場所の調査と解放。いっぺんにやるにはやることが多すぎる。

 俺達はレスの言う通り、チームを分けて役割分担することにした。


 ヘテロ達を奴隷商人に連れて行って場所を特定し、奴隷を開放するチーム。

 これは元々依頼を受けたクラウスとガイア、捕まった奴隷役のヘテロとタローとジローと何か着いてきた俺、というチームにした。


 脱出経路を調査するチーム。

 これにはクラウスのパーティーメンバーの中でシスイ国に土地勘のある奴とレスの2人。


 逃亡のための足を確保するチーム。

 残りのメンバーはこのチームに入ってもらった。


 さて、いつの間にか協力的になっていたクラウス達だが、当然ながら立場的にはいつ裏切ってもおかしくはない。

 しかし俺はそこは信じることにした・・・と言えば聞こえがいいが、単に人手が足りないのである程度は信じて協力してもらうしかないのである。

 まあたとえ裏切られても俺とレスがいればなんとかなるだろう。たぶん。


 方針が決まった後は、クラウス達は自分たちのテントに戻って行った。


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