68. 葱鮪
「兄も串焼きを食べるといい」
落ち込んでしまったタローを心配してか、ジローがタローに串焼きを何本か手渡した。
おそらく本来は肉と野菜が交互に挟まれていただろうそれらの串は、今では野菜だけが等間隔に突き刺さっている。
・・・肉だけ食ったなジロー。
珍しくタローに食べ物を分けようとしてると思ったら、そういう事か。
野菜もちゃんと食べろと言っているのだが。
ふと目線をタローの後ろに向ける。
視線の先のヘテロは、暗く緊張した表情を浮かべていた。
「にゃ~ん(お前も食っとけ。今日はこの町に泊まるしかないんだから、焦っても仕方ないぜ?)」
「そうですよ。それに明日からは砂漠越えです。体力をつけておかないと、お仲間を助ける前に自分が死にますよ?」
レスが串焼きをヘテロに渡した。
「ああ・・・そうだな」
ヘテロは串焼きを受け取ると、もそもそと咀嚼した。
・・・
レスに子供達にいくらかお金を渡してもらって、子供達にはしばらく広場の屋台を回ってくるように言っておいた。
タローとヘテロの気晴らしのためである。
「にゃ?(シスイへはここから何日くらいで着くんだ?)」
レスの肩の上に乗り移った俺は、横に佇むクラウスに話しかけた。
「ここからは徒歩で3,4日くらいだな。いずれにしろ、道中の食料を運ぶために馬を借りるか、キャラバンに同行する必要がある」
クラウスは憮然とした表情で答えた。
大河を渡る前に馬車(竜が曳いてたけど)は置いてきてある。
さすがに竜が曳いていると目立っちゃうので持ってくるのは断念したのだ。
ちなみにクラウス達6人は全員連れてきた。
下手に分散してアインベルグにおいてきて、逃げられて先にシスイに着かれでもしたらヘテロの仲間がどういう目にあうか分からない。
それなら近くで監視したほうが良いという事で、全員連れてきたのだ。
俺とレスがいれば、こいつらが逃げ出しても対応は可能だろうしね。
数日一緒に過ごして分かったが、クラウスは割と慎重な男のようだ。
それに、パーティーメンバーの一人はクラウスの娘という事が分かっている。娘を危険にさらすような無茶な逃げ方はしないだろう。
「何しやがるっ!」
突如、背後から怒鳴り声が聞こえてきた。
振り返ると、スキンヘッドに筋骨隆々な如何にも粗野な荒くれものという風貌の男が、子供に対してすごんでいた。
相対する子供は見た顔である。
・・・てか、うちの子達じゃん。




