64. いざシスイへ
前略。クラウス達にシスイ国へ案内してもらう事になりました。
まぁシスイの位置は大まかに分かっているので、どちらかというとシスイに着いてからの案内が主となる予定なんだけどね。
とりあえず南の大河を目指して歩いているが、しかし道中暇である。
夕方になって冒険者達やレスと黒リザがテントを張ったり夕食を作ったりするのを眺める傍ら、俺はせっかくなのでクラウスに剣技を教えてもらうことにした。
クラウスはカウンターと手数を主体としたサミダレ流の流れを汲む、サミダレハバキ流という剣術を修めているらしい。
「剣術を教えろと言われてもな。俺は剣豪といっても、奥義は一つしか修めてねぇんだが・・・」
クラウス曰く、奥義を一つ以上修めていれば剣豪を名乗れるそうで、剣豪にもピンキリがあるらしい。
「ふーん・・・。ちなみに、サミダレハバキ流の奥義の中で一番強いのはどんなモノなんだ?」
「奥義は基本的には全て同じ位として扱われるから、そこに上下はねぇ。強いて言うなら、どの流派でも最後に教える奥義はだいたい闘気系のものだ」
「闘気系?闘気ってこれのことか?」
俺は闘気を発動して見せた。
俺の体が黄色く力強い光に包まれる。
俺の闘気を見たクラウスが目を細め、やはりか、と呟いた。
ガイアはこれでもかとばかりに驚いて、顎が外れるんじゃないかってくらい口をあんぐりと開いた。
・・・驚きすぎでしょ。
闘気というのは割と特別なスキルのようだ。
「・・・それが闘気だ。流派によって名前こそ多少異なるが、奥義中の奥義として伝えられている。うちの流派では剣闘気と呼んでいたがな」
体全体を闘気で覆うのは誰でもできるものではないらしい。
故に、発動した一瞬だけ体の各要所や刀身にのみ魔力を纏わせるのが剣技系スキルなのだそうな。
さて、せっかく剣術を教えてもらうことになったので、まずは奥義・洞竜から教えてもらうことにした。
「・・・教えない、といったら?」
渋るクラウス。
まぁ、いきなり奥義を教えろなんて言ったら当然の反応か。
しかし俺はクラウスに対して不敵な笑みで答えた。
「たしか、君には娘がいたね・・・?」
俺はちらりとクラウスの娘、ミシルの方をみた。
夕食の用意をしていたミシルがびくりと身を震わせる。
「・・・ミシルには手を出すな」
クラウスが深く静かに怒っているのが分かった。
俺はクラウスを、まぁまぁとばかりに両前足で諫める。
「おいおい、勘違いをするなよ。君の娘をどうこうするつもりはないさ。ただ単に俺は、半人化した年端もいかないケモ耳美少女の状態で半泣きになりながら奥義を教えてとひたすら延々と君におねだりをするだけさ。君の最愛の娘の目の前で、ね」
「・・・・・・・・・。」
クラウスが心底嫌そうに顔をゆがめた。
ミシルは若干軽蔑の眼差しでクラウスを見ている。
対してガイアはちょっとだけ羨ましそうだ。
レスは歯を食いしばりながら視線だけで人を殺してみせるとばかりにクラウスを凝視している。
・・・一発殴っといた方がいいだろうか。




