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転猫  作者: 相川秋実
第一章
65/137

65. 奥義・洞竜

 俺が驀矢崩拳(ばくやほうけん)を使った後で、クラウスによる奥義の講義が始まった。


 あの後、なお渋るクラウスに対して俺が半人化をして一歩前にじりっと迫ったところ、クラウスは分かった分かった分かったから、と奥義を教えることを快諾してくれた。


 分かって頂けて何よりです。


 俺はクラウスの前にちょこんと座り、俺の横にはタローが座り、ジローは俺の頭に登っている。

 そしてその俺達の後ろにはヘテロが胡坐(あぐら)をかいていた。

 どうやらこいつも剣術を習いたいらしい。


「奥義・洞竜は、洞窟にこもった竜の毎く雌伏の時を待ち反撃の機を伺う技だ。相手の攻撃をこの技でもって完全に防ぎ、その後にできた隙を突いて反撃を行う」

 クラウスが憮然とした表情で奥義の説明をする。


 熊じゃあるまいし洞窟に竜がいるのかね、と思ったが、確かに洞窟の中に竜がいたことを思い出した。

 レスと言う名の引きこもりが。

 この世界では、洞窟には熊の替わりに竜がいるのが一般的なイメージなのだろうか?


「専門的に言うと、スキルや魔法に対して魔力で干渉して無効化する、という事らしい。もっとも、師匠の受け売りだから細かいことは分からんがな」

「スキルや魔法をガードするスキルってことか?」

「スキルの能力としてはその通りだ。しかしこの奥義の本質は、本来はガード不能な攻撃をガードして相手の虚をつき反撃するまでの一連の流れである、らしい」


 解説しているクラウスも良く分かってない感があるが、聞いている俺も良く分からん。

 百聞は一見に如かず。とりあえず試しに見せてもらう事にした。


 俺の剣術じゃ速すぎて対応できないとのことなので、魔法を撃って洞竜で防ぐということになった。


「ダークアロー!」


 俺の肉球の先に魔法陣が輝き、黒く鈍く光るガラス状の矢が出現した。

 黒き矢はクラウスに向かって真っすぐに飛んで行く。


 かなり速い速度ではあるが、体感的には高校野球のピッチャーが投げる球ぐらいの速さだ。

 高校球児ですらバットで打ち返すのだから、剣豪のクラウスならカウンター技を放つくらいわけないだろう。


 クラウスは剣を正眼に構えたまま黒矢を迎え撃った。

 剣の切っ先と黒矢が触れた直前、切っ先が光を帯びたように見えた。

 そして黒い矢は空中でピタリと止まり、霧のように消えていった。


「おお・・・」

 本当に無効化した。これは使いこなせたら便利だろうな。

 しかし、なんというか思っていたよりはかなり地味だな。

 奥義っていうから、もっと派手なものだと思っていたのだけれど。

 まぁ、さすがに口には出さないけど。


「くにゃ~(なんか思ってたより地味。奥義なのにかっこわるい。)」

「・・・奥義なんてそんなものだ」

 口に出しちゃったジローに対し、クラウスが若干傷ついたような表情で答えた。

 どんまい!


 奥義・洞竜は、自分の魔力を剣の切っ先から壁状に張り巡らし、魔法が触れた瞬間に壁から魔力を放出して魔法を絡めとる様に干渉する。

 いまクラウスがやったのはそういう事らしい。


 原理は単純なようだけど、どうも言うは易し、という気がするね。

 できればシスイに着くまでに使えるようになっておきたいものだが、使いこなすには割と時間がかかりそうだ。


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