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転猫  作者: 相川秋実
第一章
61/137

61. 追跡者③

 どういうことだっ!?


 ガイアは自分の身長の半分ほどの子供達と切り結びながら、慌てる気持ちを抑えようと必死になっていた。


 クラウスは強い。


 ガイアも腕っぷしには自信があったが、あくまで一般的な冒険者にしては腕が立つというだけだ。

 身体能力にこそ自信はあるものの、膂力(りょりょく)に任せて暴れるだけという自覚があった。

 それに対してクラウスは、ガイアと同等以上の身体能力を持つだけでなく剣術も修めている。


 クラウスのように、サミダレハバキ流の剣豪の称号を持ちながら冒険者をやっているのは相当珍しい。

 剣豪になれば自分で流派も起こせるし、道場で師範として弟子を取って生きるという道もできる。

 騎士団に入れば最低でも部隊長、上手く立ち回れば将軍を任されても不思議じゃないのだ。


 そして何よりクラウスは賢い。

 荒くれ者が多い冒険者の中にあって、クラウスは常に冷静で的確な判断を下している。

 ガイアが所属するパーティーのリーダーになっているのも、腕っぷしよりもその頭脳を信頼されてのことだった。


 そんなクラウスが、まるで無策としか思えない特攻をした挙句に、一太刀のもとに切り伏せられた。

 それも10かそこらの少女にだ。


 いや、切り伏せられたのだろう、という事しかガイアには分からなかった。

 そもそも一体何が起きたのかすら、さっぱりと分からないのだ。


 ガイアとクラウスがログハウス向かって走り出すと同時に、ログハウスのドアから一人の少女が出てきた。

 ログハウスの前で剣の稽古をしていた少女と似た服を着た少女。

 少女はガイア達の存在を認めても特に驚くでも慌てるようでもなく、ゆっくりとした足取りで階段を下りてきた。


 ただそれだった。


 彼女は目を疑うような美少女ではあったが、腰に剣を下げている以外には特に警戒するようなものはないように見えた。

 少なくともガイアにはそう見えた。しかしクラウスは違ったようだ。


 クラウスは少女の姿を見るなり一瞬硬直した。

 そしてすぐに我に返ると、およそガイアが聞いたことの無い咆哮をあげ、少女に向かって突撃していったのだ。


 そしてクラウスは、少女の近くで倒れた。


 クラウスの脇をすれ違うように抜けたらしい少女の手には、抜身の剣がいつの間にか握られていた。

 それらの事実から、恐らくクラウスは少女に斬られたのだろう、と漠然とそいういう判断をつけるしかなかった。


 ガイアの手首に、ログハウスの前で短剣を振っていた少女の攻撃が当たった。

 ガイアは武器を落としそうになり慌てるが、その隙をついてガイアのわき腹を男の子供の大剣が貫いた。


 くそ・・・なんだってんだいったい・・・


 ガイアは、膝からゆっくりと崩れ落ちていった。


 薄れゆく意識の中、彼は自らの死に対する恐怖を意識するよりも、クラウスが倒れた理由を考え続けていた。


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