48. Guardian of Einberg
はたしてレスの予告通り、翌日の昼にはアインベルグについた。
正確にはアインベルグ跡地だが。
建物の基礎らしき石があちこちに散乱し、その間を石畳が通っている。
今俺達がいる地点である東の入り口からは、町がどこまで広がっているのか分からなかった。
どうやらかなり大きな町だったようだ。
石でできたもの以外はほとんど何もない。風化によって失われたのか、あるいは侵略によって壊されたのか。
見た感じはまさに廃墟のそれだった。
「この町が滅んだのは、もう千年も前のことですからね」
レスがしんみりと呟いた。
彼は若いころ、滅びる前のこの町によく来ていたそうだ。
「リョウ兄。なんか変なのがいる」
ジローが唐突に町の中心部を指さす。
その方向を見てみたが、俺には何も見えなかった。
「ふむ。おそらく知り合いです。この位置から見つけるとはジル殿は目が良いですね」
レスが感心したようにジローを見た。
ちなみにジローの事は、会話する際はとりあえずジルと呼ぶことにした。
「なんだ。人が住んでるのか?」
「まさか。人は住んでおりませんよ」
レスは思わせぶりにそう言うと、それ以上の説明はせずに進んで行った。
百聞は一見に如かずということなのだろう。
まあ、こいつの知り合いなら人間ではないのだろうが。
しかし相手が普通の人間という可能性もあるので、一応とりあえず人化をしてから、レスの後を黙ってついていった。
やがて俺の目にもそいつが見えるようになった。
いや、半分見えたというべきなのだろうか?
そいつは半透明だったのだ。
「ゴースト・・・なのか?」
「そうですね。若干特殊なケースではありますが。今の彼は死霊に属する存在です」
「まぁ、昼から出てれば相当特殊だろうさ」
どんだけ恨めしければ真昼間から化けて出るというのだろうか?
ゴーストは俺たちの姿を認めると、にこやかに挨拶をしてきた。
「レスか、久しいな。壮健にしていたか」
「ええ、おかげ様です。師匠もお変わりないようで。お元気でしたか?」
「死霊に元気も何もないだろう。ん?お連れの方々は・・・ほう、魔猫か。生き残りがいたとは」
俺を見たゴーストは、相当に驚いたようだった。
「魔猫って良く分かったね?」
俺は当然の疑問を口にした。
ゴーストを視界に納めた時から俺は人型を取っている。
ぱっと見は魔猫と分からないはずだ。つまりこれは・・・。
「この方はアナライズを極めていらっしゃいます。ちなみに私の師匠ですよ」
「へー・・・」
白髪交じりの頭髪に中肉中背と、見た感じはどこにでもいそうな50台くらいのおじさんだ。ただ、身に着けているものは灰色のローブと銀の錫杖であり、確かに魔法の師匠っぽい外見だった。
「フレディ・フェラーだ。何もないところだが君達を歓迎する。それで、今日はいったいどういう風の吹き回しだね?」
「ええ、実は・・・」
レスはゴースト師匠に手短に状況を説明した。
「なるほどな。ならば南の方が情報は得やすいかもしれん。最近は西からも南からも行き場のない人間や冒険者らしき者たちが迷い込んでくるが、南からくる頻度の方が高いからな」
ゴースト師匠の提案に、俺達は顔を見合わせた。
「ふむ。迷い人が良く来るという事は、南は治安に問題があるのかもしれませんね。如何いたしましょうか?わが主よ」
「確かに南はヤバそうな気はするね・・・。ところでゴースト師匠。その迷い人?とか冒険者達は、町の治安について何か話してたのか?」
「・・・ゴースト師匠?まあ、良い。私が直接旅人達と会話することはない。大体の場合は私の姿を見るなり逃げ去っていくのでな」
「ああ・・・なるほど」
確かに普通はゴーストに会っても話しかけてみようとか考えないな。
「情報が欲しいのなら、おぬしらが直接対応すれば人間どもも逃げないだろう。次に人間が来くるまで、ここに滞在するとよい。残っているものは好きに使って構わぬ」
ゴースト師匠はそう言うと、ゆっくりと消えていった。
「ずいぶん親切なゴーストだな?」
「同じ猫好き同士、気が合ったのでは?」
レスにこっそりと話しかけると、彼は意味ありげに笑った。
それから俺達は、月一回は来るという南からの旅人を待つため、アインベルグの廃墟に留まることにした。
西の状況も知りたいので西からの旅人も待ちたいところだが、もしかしたら南から来る旅人が西の状況も知っているかもしれない。
出会ったら西側についても聞いてみようかな。




