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転猫  作者: 相川秋実
第一章
46/137

46. 勇者を討つモノ


 赤い布の向こうに現れたのは大剣だった。


 俺の背丈と同じくらいの両刃のバスタードソードで、漆黒の刀身の所々に煌びやかな宝石が嵌め込まれている。

「かつてこの地を納めていた偉大なる大魔王様。その配下にして魔王軍最強の剣士が手にしていた由緒正しき魔剣です。名をブレイブスレイヤー。刀身は最強の硬度を持つと言われるオリハルコンと対を成す鉱物デモンファングで作られており、魔石を高度な技術で加工しありとあらゆる効果を持たせた魔道石がふんだんにあしらわれていて・・・」

 やや熱を帯びた顔で朗々と説明するレス。

 一方俺は、困惑顔でそれを見ている。

「あ、いや。えーと・・・」

 俺の戸惑いに気付いたのか、レスの講釈がぴたりと止まる。

「おや、これは失礼。私としたことが、ついつい熱が入りすぎました。どうでしょう?リョウ様にふさわしい剣は、この世にこれ以外に存在しないと思うのですが?」

「いや、どうもこうも無いが。持てないんだけどこれ」

「ん?持てないといいますと、やはり剣聖の名にはふさわしくないということでしょうか・・・?」

 やや戸惑ったようにレスが言う。

「いや、そうじゃなくて、単純に大き過ぎだってば。これ重量もかなりあるだろう?この体ではその剣を振るどころか、持つことすらできないのだが」

 それ以前に俺の要望が一つも通ってない気がするのだが。

「Oh・・・」

 呆けたような顔をするレス。

 タロジロが何かやらかした時の顔に似ている。トカゲ系はみんなこんな感じなのだろうか?

 しかし、こんなことすぐに思いつきそうなものだけど、気付かなかったのだろうか?

 意外と抜けているのかもしれない。

 それでも取りあえず持ってみてくださいと強く勧めてくるので、俺は仕方なく大剣を手に取ってみた。

 やはり俺の細腕では、地面に置かれた大剣は持ち上げることすらできなかった。

 そしてちょうどその時、人化の術のリミットがきて猫の姿に戻ってしまった。

「・・・ふむ。残念ですな。これほどリョウ様にふさわしい剣は無いと思ったのですが」

「まあ、そんな落胆するなよ。とりあえずこいつは鋳潰(いつぶ)して爪切りにでもするしさ」

 ちょうど爪切りが欲しかったのだ。

「そうですね、鋳潰す・・・って、鋳潰すっ!?鋳潰すなんてとんでもないっ!何をおっしゃっているのですか!」

 レスが信じられないと言ったような表情で、俺から大剣をひったくった。

 大剣の上に乗っていた俺は、その勢いで地面に転げ落ちる。


 痛いじゃないか。


 その後はレスとしばらく雑談した後、黒服に案内された部屋で食事をとった。

 そしてその日の最後は、黒服に案内された部屋で寝ることになった。


 豪華な夕食に、大理石で作られた風呂。天蓋のついたベッドと、おおよそ洞窟内とは思えない待遇だった。

 全部レスとその配下が作ったものだそうだから、なかなか大したものである。

 全部作るのに千年近くかかったそうだが、つまり千年近く他にやることが無かったという事だろうか?

 暇なのだろうか。


 翌日。

 レスが色々な剣を持ってきたので、人化をして全て試してみた。

 そして最終的には小太刀程度の大きさの片刃の剣を使うことにした。

 レス曰く特殊な能力は無く素材も普通の鋼だそうだが、俺にとってはそれで十分だ。


 さて、とりあえず準備はできた。

 あとは地上に出て人里に下りるだけである。


 さっそく俺達は、レスの案内のもと地上に出ることにした。


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