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転猫  作者: 相川秋実
第一章
43/137

43. 変態が仲間になりたそうにこちらを見ている


「な、なにをするのです・・・?」

「いや、なにをと言われても。今のは正当防衛だろ・・・?」

 魔竜王は、なぜ自分が殴られたのか分からないという表情でこちらを見ている。


・・・もう一発くらい殴っといた方がいいだろうか?


・・・


 今着ている服がアミからもらった着物にフンドシという状態だったので、俺はとりあえず魔竜王から手渡された下着と服を着ることにした。

 服は黒地に金や銀で刺繡がされている上、至る所にフリフリのフリルがついている。

なんとも豪華なことだ。

 ちなみに下はスカートである。


・・・どうしてこうなった?


「せめてズボンにしてくれないだろうか?スカートでは動きにくいのだけど」

「大丈夫ですよ。似合ってます」

「いや、そういうことを言っているんじゃなくて」

「大丈夫ですよ。似合ってます」

「くにゃ~(リョウ兄似合ってる)」

「へにゃ~(兄上、似合ってます)」

「・・・。」

 なんかいつの間にか近くに来ていたタロジロも、この変態に賛同しているし。

「それに、ズボンなど用意しておりません。お諦めください」

「・・・ああそう」

 なんかこれ以上この話をしても無駄そうだ。俺は深い溜め息をついた。


「さて、それでは」

 魔竜王はやおら真面目な感じで咳払いをすると俺の前に傅いた。

「わが主よ。どうか我々を貴女様の配下に加えてください」

「は?いきなり何言ってんの?馬鹿なの?死ぬの?」

 魔竜王の予想だにしない行動に俺は動揺した。

 しかし先ほどのの戦闘時とは異なり、今度はまわりの魔竜王の配下は動揺していなかった。

 彼らは魔竜王に(なら)い、俺の方に向かって傅いている。

「大魔王様の末裔。そして剣聖の称号にふさわしい実力を持ち、それでいて生まれて十年程度しか経っていないという類い稀なるその才能。そして何より愛くるしくも美しいその美貌。そして猫!!!!! 貴女様こそ、私が千年に渡り待ち焦がれていた主様に違いありません」

 言ってることは何となく分かったが、魔竜王は俺の先ほどの罵りに対して怒るでもなくむしろ恍惚の表情を浮かべながら熱く語っている。


・・・こいつ、変な趣味持って無いよね?


「いや、大魔王の末裔って言っても称号を持ってるだけだし。実際本当に末裔なのかなんて怪しいし」

「いえいえ。そこは間違いありません。人化したリョウ様のお姿には、かつての大魔王様の面影が強く残っております」

 魔竜王の話を聞くに、どうやらかつての大魔王は女だったらしい。

「いやいや、急に主とか言われても困るし。それに俺に一体何をしろと?」

「特に何もする必要はありませんよ。リョウ様は我らを従えてくださるだけでよいのです。リョウ様は好きなように、大魔王として覇道を突き進むもよし、何もせず食客として生きるもよし。自由気ままに振舞っていただいて構いません」


・・・なんだこれ。なんか、話が出来すぎていて気持ち悪いな。


 しかし断っても無駄そうだ。というか断ると後が怖そうだ。

 とりあえず何もしなくてよいという事だし、一旦表面上だけでも引き受けとくか。

 あとで嫌になったら逃げよう。

「引き受けてもいいけど、1つ条件がある」

「なんなりと仰ってください」

「監獄島の妖孤とコボルト。今後あいつらに一切手を出すな。千年の期限とやらも取り消せ」

「・・・ふむ。仰っていることが分かりませんね」


・・・よくもまあ抜け抜けと。


「どうせ最後の1種族になっても、見逃すつもりなんて無かったのだろう?」

 これはフォルテ戦が終わった後からずっと考えていたことだった。

 それであればアンジュが幼少の頃のフォルテを殺さなかった事にも説明が付く。

 もっとも単に子供を殺すのが忍びなかっただけだったのかもしれないが、今となっては確かめようがない。

「・・・なるほど、さすがは我が主。ご慧眼恐れ入ります。これはどうやら私の負けですね。奴等には今後一切手を出さないことを誓いましょう」

 魔竜王は芝居ががったような動作で俺に向かって優雅に一礼して見せた。


 なんか、ところどころ胡散臭いんだよなー、こいつ。

 額面通りに受け取って大丈夫だろうか・・・?


「そうか。それならば、その話引き受けるよ。だからとりあえず一旦、傅くのをやめてくれ」

「おお、引き受けてくださるのですね。今日は良き日だ、実に素晴らしい」

 感極まったのか、魔竜王が立ち上がり大声ををあげた。

 それに続いて部屋中から大歓声が沸き上がった。


・・・なんだこれ。


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