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転猫  作者: 相川秋実
第一章
41/137

41. 猫 vs 魔竜王


 相手の情報が分からないのに、こちらの情報は丸裸。


 戦う前から相当不利な状況である。

それだけで気分的にもかなり嫌なものがあった。

転生前に山田が長々と語っていた観察能力(アナライズ)の有力さを改めて認識させられる。


 ここは先手必勝で行くしかないだろう。

俺は玉座に座ったままの魔竜王に斬りかかった。

「にゃっ!(扇一閃っ!)」

キンッ---

 硬質な音を残して、俺の爪は魔竜王の鱗に弾かれる。


・・・硬い。


 どうやらこれは、闘気を使わないと傷一つ付けられなさそうだ。


 魔竜王が、攻撃後に目の前に降り立った俺に向かって小さく咆えた。

魔竜王の眼前、その空中に淡く黒く光る魔法陣が現れる。

そして着地と同時に踵を返した俺を追うように、背後で何度か炸裂音がした。

何かの攻撃魔法なんだろうが、後ろを振り返って確認している暇はない。


 再び間合いを取りながら状況を分析する。

今のところ攻撃手段は、爪による剣術と、魔法のダークアローぐらいである。

ダークアローは覚えた時に何度か使ってみたが、扇一閃ほどの威力は出ないし、そもそも魔竜王は如何にも闇属性という感じなのであまり効果がない気がする。

 つまり、剣術で何とかするしかないのだが、素の状態では魔竜王の鱗にかすり傷すらつけられない。

比較的柔らかそうな目などの弱点を狙う手が考えられるが、それは当然魔竜王とて予測しているだろう。

というか最初の一手を打った時に思ったのが、魔竜王はわざと俺に目を狙わせてカウンターを狙おうとしているふしがあった。

初手で誘いに乗らず低めに跳んで攻撃したのは、その意図を外した意味もあった。


 やはりここは魔竜王の誘いには乗らず、硬い鱗を何とかして切り裂くしかないだろう。となると闘気とホフフィズライズを二重掛けして必殺技を放つしかないか。


 俺はある程度距離を取った後、再び魔竜王の方へくるりと方向転換した。

魔竜王は何をするともなく、こちらをただじっと見ている。俺の出方を伺っているのだろう。

あるいは単純に俺をなめているのかもしれない。

「にゃ(ホルフィズライズ)」

 俺は闘気を発動した後でホルフィズライズを使った。

ついでに、ものは試しにある仕掛けもしておく。


 俺が再び魔竜王に迫ろうとしたら、魔竜王が低く唸った。

今度は魔竜王の前の床に魔法陣が描かれ、黒い炎の壁ができる。


・・・初撃のように簡単にはやらせてくれないか。


 俺は黒炎の壁に闘気を込めた一閃を放った。

「にゃ(扇一閃)」

 壁は俺の一撃で木っ端みじんに吹き飛んだ。

俺たちの戦いを囲むようにして見ていた魔竜王の配下から、どよめきの声があがった。

俺はそのまま勢いに乗り魔竜王と間合いを詰める。


魔竜王は動かない。

余裕をこきすぎだろうに。腹立つわー


「にゃっ!(須臾十字斬)」

 闘気を込めて放った剣戟は、魔竜王の鱗を容易く切り裂く。

魔竜王の首から血が噴き出した。


 魔竜王の取り巻き達が、先ほどよりも大きくどよめいた。

しかし当の本人である魔竜王は全く動じる気配を見せていない。


「お見事。」


 魔竜王が一言そう呟いた。

そして魔竜王の全身が淡く光ると、徐々にその体が小さくなっていく。


・・・人化の術か?


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