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転猫  作者: 相川秋実
第一章
40/137

40. 魔竜王が現れた


 黒リザについて行き、歩くこと半日ほど。

 俺達は巨大な扉の前にたどり着いた。


・・・でかいな。


 大扉は2階建ての一軒家くらいの高さはありそうだった。

「にゃ?(これを開けて進めと?)」

「馬鹿なことを。あちらの扉から入るのだ」

 黒リザがあきれたように指をさした。

その先には勝手口のような小さな扉があった。

「にゃるほど・・・」

 門番らしきリザードマン達が勝手口を開けると、俺達は勝手口を通り中へと入って行った。


 中はかなりの大きさの部屋だった。

先日行った巨大竜の空間ほどではないが、それでもかなり大きい。

東京ドーム一個分はありそうだ。

しかし東京ドーム一個分って単位は、いまいちピンとこないな。


 部屋はきれいに四角く整形されており、中央に巨大な扉から続く赤い絨毯が延々と続いていた。

そしてその先の巨大な玉座の上に、漆黒の竜がうずくまる様にして座っている。


あれが魔竜王なのだろう。


 視界に入った時にアナライズを発動させたが、例のごとく何も情報は得られなった。

前に島で出会った猫少女や地龍神とやらと同じ結果である。

やり辛いな。


 黒リザに付き従い玉座の前まで進む。

 近くで改めて見ると魔竜王は見上げるほどでかかった。部屋の入り口にあった巨大な扉はこいつが通るためにあったのか。

 猫の体からしたら、この大きさだけでも相当なプレッシャーを感じる。

 俺より小さいタロジロは、さらにプレッシャーを感じているようだ。

 タローは俺の後ろに隠れながら威嚇をしているし、ジローに至っては今にも飛び掛かりそうである。

・・・お前ら落ち着け。


「魔竜王さま。例の輩を連れてまいりました」

 黒リザが(かしず)き首を垂れた。

 魔竜王とやらの目が、興味深げに俺たちを見ている。

「ふむ。言葉は通じましたか。思った通り理性はあるようですね」

「にゃ?(それはこちらのセリフだ。あんたが魔竜王か?俺に何の用だ?)」

「ふふ、ずいぶん強気な猫さんですね。いかにも私は四天魔王が魔竜王を継ぐ者。名をレスリー・ケイヴァーと申します。以後お見知りおきを」

魔竜王は玉座の上で身を起こすと、どことなく優雅な所作で自己紹介をしてきた。


 ごつい見た目や魔竜王という名に反して、ずいぶんと紳士的な、というかむしろ優男っぽい口調だ。

ここは俺も自己紹介をすべきか山田「自ら四天王とか名乗るやつが出てきたら大体厨二だから気を付けろ」いや、何をどう気をつけろと言うんだよ?

てか久々に出てきてその助言はどうなんだ・・・。


「にゃ~~~(俺はリョウ。見ての通りただの猫だ。生まれはこの洞窟だが、地上に出るべく旅をしている)」

「ほう、そうでしたか。それで、私の部下達を倒して回っていたのは何故ですか?」

 魔竜王はゆっくりと目を細めた。俺がどう反応するか注視しているようだ。

「にゃん!(先に攻撃してきたから受けて立ったまでだ。こちらとしては戦闘するつもりはなかった)」

 魔竜王が納得するとは思えないが、とりあえず事実をありのまま伝えてみる。

「ふふ。ずいぶんと苦しい言い分ですね。それで私が、それなら仕方がない、と言うとでも?」

 魔竜王は微笑をたたえている。しかしその目は笑っていなかった。


「にゃ~?(ではどうしろと?)」

「そうですね。それではどうでしょう?ここは魔物らしく、強いほうに従うというのは?」

「にゃ?(つまり戦って勝てと?)」

「そういう事です。理解が早くて結構ですね」

 魔竜王は俺の反応を静かに伺っている。

その眼差しは、まるで俺を値踏みするかのようだ。あるいは俺の反応を楽しんでいるのかもしれない。


・・・仕方ないか。


「にゃ!(タロジロ。お前達は離れていろ。巻き添えを喰らうと死ぬぞ)」

「へにゃ~(了解です、兄上。どうか気を付けて)」

「くにゃ~(え~・・・僕も戦いたい~・・・)」

 タローは不満そうなジローの首をくわえると、そのまま持ち上げ素早く壁際まで走って行った。

「さて、貴方が私の見立て通りの者なのか、じっくり堪能させてもらいますよ。どうか私をがっかりさせないでくださいね? "剣聖" 殿」

「・・・」


・・・こいつ、やはりアナライズは持っていたか。


 このレベルになるとアナライズは大体持っているんじゃないかとは思ったが、しかし困ったことになったな。

 つまりこいつは、俺の"大魔王の末裔"という称号を見て、それでもなお戦いを挑んできたことになる。


 どうやら会話で何とかしようという俺の目論見は、相当甘いものだったようだ。



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