28. 死闘の果て
いきなり猫に戻ってしまった。
感覚的に魔力はまだ残っていそうなので、人化のコントロールに失敗して猫に戻ってしまったのだろう。
あるいは攻撃に集中し過ぎてしまっていたのかもしれない。
猫に戻ってしまったので、当然短剣は手から離れてしまっている。
俺は仕方なく両手の爪を出して構えた。
そして、転生前に編み出した必殺の技を放つ。
「にゃにゃっ!(須臾十字斬っ!)」
放たれたが最後。鉄すら切り裂く斬撃が、避けること叶わぬ速度で閃いた。
空に舞う血。
しかしそれは猫少女のものではなく、俺の両前足から噴き出したものだった。
「そんな攻撃じゃ、うちにはかすり傷すらつけられないにゃ~、にゃっ!?」
猫娘は俺の攻撃前と変わらぬ場所に立っている。
その頬には赤い線が一筋走っていた。
どうやら俺の必殺技は、そのほとんどを猫少女の前にできた透明な壁に阻まれてしまったようだ。
辛うじてかすり傷はつけられたものの、本来の威力には遠く及んでいない。
そして技の威力のほとんどが俺自身に返ってきたため、両前足の爪は抉れ剥がれて悲惨なことになっている。
俺の技は鉄すら切り裂くので、つまりこの障壁は鉄より硬いという事になる。
俺は猫少女の先の木の枝に降り立った。
遅れて両前足から激痛がやってきた。
俺は両手にヒールをかけながら、猫少女からは目を離さず次の一手を考えた。
「ば、馬鹿にゃ~。物理攻撃がウチに効くわけないのににゃ~。危ないにゃ~。うちを驚かせるとは、なかなかやるにゃお前~。今回は同族のよしみで見逃してあげるにゃ~。せいぜい次にまみえるまで首を洗っているとよいにゃ~」
猫少女はにゃ~にゃ~言いながらくるりと背を向けると、ぴょんぴょんと木の枝を渡りながら離れていった。
ずいぶんあっさりと引いて行ったな。
猫少女という大きな懸念がなくなったので、あとはこの場を治めればこの戦いを終わらせることができる。
俺は猫少女の幽かな気配が確実に遠くに消え去ったことを確認すると、木の下に視線を移した。
バーサクとやらで自己再生のスキルが強化されているのか、既に両腕を回復させたフォルテが辺りのコボルト達を襲っている。
コボルト達はコボルト達で相変わらず同士討ちをしている。
そして、それら混乱するコボルト達をジローが炎のブレスを吐きながら追い回しており、タローがジローを止めるべく必死になってしっぽに掴まっていた。
「くにゃにゃにゃにゃにゃにゃっ!(あははははははっ!)」
「へにゃ~(おちつけ~)」
・・・(´・ω・`)
「にゃん~?(アミ。さっきの魔法は使えるか?)」
俺は眼下のアミに声をかけた。
「すまない。さっきから何度か発動しようとしているのだが、どういうわけか使えない。リョウ殿は使えないか?」
「にゃ・・・(いや、そもそも状態異常を回復するような魔法は使え・・・)」
ない、と答えようとしたところで、ふと思い直し自身をアナライズしてみた。
名前:リョウ
属性:光
種族:魔猫族 魔猫亜種☆
称号:剣聖、拳達、退魔士、死ぬほど猫好き、大魔王の末裔
ノーマルスキル:じゃれる(魅力大)、かみつき(貫通大)、あまえる(魅力小)、こびる(魅力小)、アナライズ(中)、念話、人化の術
カスタムスキル:闘気
スペシャルスキル:百禍両断、しんかのひほう
魔法:ヒール、ホルヒール、キュア、ホルキュア、ホルフィズライズ、ホルマギライズ
見える項目が増えたりと色々変わっている点があるが、確認したかったのはスキルと魔法が増えている事だった。
アナライズの結果を見て、俺は驚くよりも、やはりか、というという感想を得た。
人化が使えた時点で、もしかしたらという思いはあったのだ。
増えたスキルも魔法もアンジュが持っていたものだ。
アンジュが息絶えた時、彼女から力が伝わるような感覚を覚えた。
おそらくあの時に、スキルや魔法を受け継いだのではないだろうか?
俺はアナライズの結果の中から目当ての魔法を見つけると、高らかに唱えた。
「にゃ!(ホルキュア!)」
俺を中心に光が広がっていく。
その光に当たった者達は、次々と正気に返っていった。
「我らは一体・・・?」
フォルテが呆けたように、周りを見渡している。
「にゃ~(とりあえず怪我人を手当しよう。話はそれからだ)」
俺は地面に降り立つと、一息ついてその場に座り込んだ。
魔力を使いすぎてしまったのか力が入らない。
色々起きたが、とりあえず何とかこの場は凌げたようだ。




