21. 潰走
アンジュから相談を受けた翌日。
人化の術の修行で座禅を組んでいた俺は、気配に気づいて立ち上がった。
「・・・来たか」
アンジュが呟く。アンジュも同じく気配に気付いたようだ。
しばらく待つと、建物の大扉が開かれ十数人の妖孤が入り込んできた。
そのほとんどが体のあちこちに怪我を負っており、まさに満身創痍という感じだった。
彼らはアンジュの前に跪いた。
「アンジュ様。ただいま戻りました」
「うむ。ご苦労じゃったの。して・・・状況は?」
「・・・申し訳ありません。我ら以外は全滅しました」
妖孤の集団の一番前にいた少女は、嗚咽をこらえながら報告した。
アンジュは椅子から立ち上がると、報告してきた少女の前に屈んで微笑んだ。
「そうか・・・。お前たちだけでも生きて帰ってきてくれてよかったわい。お前たちが妖孤族のために戦ってきてくれたことを、妾は誇りに思うぞ」
「・・・っ、アンジュ様っ!」
少女はこらえきれなくなって、ぽろぽろと涙を流す。
彼女には尻尾が2つあった。
アンジュから聞いていた、もう一人の娘のアミという子なのだろう。
生きて帰ってきた妖孤達は、アミを含めて十数人。
村の規模から考えると、恐らくこの村には元々2~300人は村人が住んでいたと思われる。
それが今やこの建物に40弱しかいない。
そしてそのほとんどが重傷を負っているか、あるいは非戦闘員という状況だ。
これは、全滅もあり得るな・・・。
そんなことを思いながらも、俺は警戒を解かずに大扉の先をじっと睨み続けた。
アンジュも恐らくは気づいているだろう。
大扉の先。まだかなり距離はあるが、村の入り口の少し先に多数の気配が感じられた。
気配・・・というよりは殺気。それを抑えようともせず、むしろ誇示するかように放ってきているので、この距離からでも容易に感じることができた。
件のコボルト軍なのだろう。
ここに辿り着くまで、あと数分といったところか。
・・・数分か。全然時間無いな。
「にゃ(アンジュ殿。あまり時間が無いようだ。コボルト軍を迎え撃つ段取りをしたいのだが・・・)」
「ふむ。そうじゃの。何か案があれば賜りたいが・・・」
「にゃ~(そうだな・・・。作戦って程のものではないが、なるべく全員で生き残れる可能性が高い案は考えてみた)」
「おお。それはありがたい。どんな内容じゃ?」
「にゃあ(ああ・・・)」
・・・
「アンジュ殿だな」
数分後。
大扉を乱暴に開けて入ってきた一団。その先頭にいたひときわ体の大きい黒毛のコボルト?が問いかけてきた。
「いかにも。わらわが魔狐の長、三尾の仙孤アンジュである」
アンジュは堂々とした居住いで椅子に座ったまま、静かに相手を睨んだ。




