1. 波風が立つ
最初は勢いが大事だと思って、2話目を書きました。
春休みが明けて午前8時20分、私は新しく指定された教室に着いた。教室内には顔見知りしかいなく、新風を吹き込む気配は感じられない。
私からしたら今のクラスのままで結構である。こんなに統率が取れて仲の良い平穏なクラスは変わってほしくない。
室内にあるクラスメイトたちが私を見つめて話し合っていると、1人の女生徒が近くに来た。
栭原美灯さんだ。言葉にトゲがあることが多いが、基本的に自分から話すことはない。喧嘩は売られた時にしかしなさそうな漢気タイプだと私は思っている。
「例の件知ってるか?」
「件?」
何のことか疑問に思っていると、途端に扉が開き担任らしき先生が入ってきた。
「まだ来てない人がいるか?HR前に伝えたいことがあるんだが」
事情は分からないが、私は周りを見渡していない生徒を挙げる。
「猨島くんがまだ来てません」
それを聞き、先生は開き直った顔になった。
「まぁまだ時間帯的に遅刻してるわけじゃないしな、後でいっか」
この人たぶん後から問題が起きてもテヘペロって感じで済ますタイプだ...
3分後、猨島くんが教室に着き、皆が席に着いたのを確認して先生の自己紹介が入る。
「今年このクラスを持つことになりました芥圭子です、ルールを決めたら基本放任主義なんでそこのところ理解してくれると助かります」
呑気な顔でそんなこと言う先生の顔からは、厄介ごとが起きたら生徒の自己責任で頼むという意思が汲み取られるような…いや、何も考えてないな。
「それじゃあ、君たちは見知った仲だと思うから自己紹介はいらないね、入ってきていいよー」
スー。すると芥先生の視線の先にある扉が開く。
そこから入ってきたのは端正かつ、丸みを帯びたような二重がくっきりとした顔であり、私より一回り小さい女生徒だ。
「それじゃあ自己紹介よろしく」
先生からの指示を受け、彼女は一呼吸間を置いてから話し始めた。
「二色高校から転校してきました大柿千種です、よろしくお願いします。」
純粋そう…守ってあげなくちゃと女子の私ですら思ってしまう彼女は、ある男子生徒を見るなり悲鳴にも似た声をあげる。
「あ、さっきのストーカー!」
目線の先にいたのは、猨島純信だった。
猨島はすぐに反論した。
「してないって、俺は犯罪に手を染めるような趣味は持ち合わせていない!」
「だってさっき、あの人のこと君が悪いくらいずっと見て追ってましたよね」
大柿さんの指した先にいたのは私だった。は?
すると席の周りにいた女生徒たちと一部の男子の視線を集める。さすがに視線が集中してイタかったので、一言声をあげた。
「それがホントだとしたらさ、分かってるよね?猨島くん」
猨島は「違う」と言い、首を横に振る。正直、猨島は他の特進クラスの生徒と違って素行が良いとは言えないが、特段悪いこともしてないから強く出れない。
「んー?」
怪訝そうな顔で猨島を見つめる大柿さん…かわいい。
クラスの平和を脅かす奴は許せない、その矛先が私なら尚更である。そして、転校初日にも関わらず危険を伝えてくれて大変良い子である大柿さんは後でおだてておこう。
そんな状況を見てなかったのか、出席簿を睨みつつ先生が言う。
「まぁひと段落着いたことだし、一旦…蟹江さんの隣が空いてるからその席に座りましょうか」
どこがひと段落着いてたのかサッパリだが、大柿さんが私の隣なら文句は押さえておこう。
胸につっかえるような謎を感じながら、私は思う。平穏な、平和な学生生活を早く返してくれと...。
次回の投稿は2026年11月3日に投稿予定です。




